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魔法少女の訳

 私が……そう私が魔法少女に憧れたのは1冊の本だった。

 もちろん自分では読めないのでお母さんに読んでもらった1冊なのだが。

 点字も読めるようにはなっていたけど、いかんせん、そういった娯楽の本にはなかなか展開されておらず、お母さんには迷惑をかけてしまった。


「お母さん、お母さん! 今日も魔法少女の本読んでね!」

「あらあら、杏は本当にこれ魔法少女が好きねぇ?」


 お母さんは毎回嬉しそうに笑い、聞かせてくれていた。

 私の中の魔法少女は強い女の子、それでいて繊細で時に強く、時に挫けそうになり、それでも世界の為に孤独、あるいは仲間と一緒に悪い人たちをやっつける。

 でも、その悪い人たちにもそれぞれ理由があり、お互いに譲れない想いのために戦っていた。

 ある日のことだった、本当になんとなく、深い意味もなくただただぽろっと口に出してしまった。


「あーぁ、私も魔法少女になりたいなぁ」


 その一言がお母さんに聞こえた……雰囲気だけでお母さんは身を固め多分涙も流していることがわかった。


「あ、大丈夫だよお母さん! 私、目が見えない魔法少女になるから! 魔法少女ってとってもとっても強いんだもん、これくらい大丈夫だから、ね!」


 そう明るく振舞ったもののお母さんはごめんね、ごめんね……と繰り返すだけだった。


 あぁ、もう、私のバカ!!お母さんは何もわるくないのに、本当に何気ない一言にはきをつけないと。

 それに私の知っている魔法少女たちの日常ではよく親と喧嘩をし、困らせてはいるけれど、本当に悲しませることだけはしていない、やっぱり余計に気をつけないと。


 そんな日常を送っていた時だった、この"ネームレス・オンライン"に出会った、知ったのは。

 本当はこのゲームじゃなくても良かった、フルダイブ型のVRMMOのゲームなら何でも良かった。

 フルダイブ型ならなりたい私に、世界が見える私に、なれる気がしたからだ。


 それで私は何も調べないうちに"ネームレス・オンライン"をやりたいとわがままを言って、両親を説得し、訪れた世界で最高の友達もできた。

 憧れていた魔法少女(仮)にもなれた。

 あとは私の……お母さんが読んでくれていた世界の魔法少女たちの様に困っている人がいれば手助けし、世界が狙われているのなら救ってみせ、目の前で傷ついている人がいれば助ける。


 そんな私にこれからはなっていきたい。

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