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第34話 冒険者と戦うの何気に初めて


 さっきまで背を向けていた浦岡は、今俺達の前に立っている。

 いや、この場合は立ち塞がっているという状況に近いのではなかろうか。


 そして「思ったより、気づくのが早かったようだな」という浦岡の吐いたセリフ。

 完全に悪役のそれである。


「浦岡さん、どういうことですか?」


 ヤツの一声にまず反応を示したのはヨウスケだった。

 こんな状況の中、平気な顔で返答するところさすがだと思ったが、よく見ると足が少し震えている。

 そりゃ目の前にB級冒険者、しかも敵意むき出しの。

 さぞ怖いことだろう。



「どうも何も、お前達が思っている通りだ」


「それってさっきのゴーレムもこの通路もあなたの土魔法で創り出したことについてを言ってるの?」


 ヒナが確信をついた。

 彼女も彼女で肝が据わってんな。


「分かっているならこれ以上聞きたいこともないだろう。土上級魔法【ゴーレム生成】」


 浦岡がそう唱えた途端、さっき倒したものと全く同じゴーレムが地面から浮かび上がってきた。

 それも数十体。


 ドスドスッ――


 ゴーレム軍団は足並みを揃えて向かってくる。


「「と、戸波さんっ!」」


 そう叫んで本部の2人は同時に俺を見てきた。


 おぉ……。

 俺頼りなんだな。


 まぁ仕方ない。

 あのゴーレム達は魔力で構成されているし、俺以上に適任はいないだろう。


 そう思い、俺はゴーレムに向かって


「【魔力吸収】」


 力強く唱えた。


 すると瞬く間にゴーレムはただの石の塊となり、崩れ落ちていく。

 どうやらこの【魔力吸収】、ある程度距離があっても意図的に発動することができるみたいだな。

 今までは魔法が自分に直撃する瞬間、自動的に発動していたためあまり仕組みについて細かく分からなかったが、これは大きな収穫だ。


「やはりお前、魔力を吸収できるのだな」


「そうだな。それより浦岡、お前の目的はなんだ?」


 俺は彼の話を軽く流して、質問をぶつけた。


「ただの時間稼ぎ。本命は今、池上さんに任せてある」


「池上……もしかして紗夜さん!?」


「気づいたところでここには低級冒険者が3人。何も出来んだろう」


 初めから目的は紗夜さんだったのか。

 にしてもコイツら、彼女の何を求めているんだ?

 さっぱり分からん。


 あーいや、分からなくてもいいか。

 浦岡と池上を倒せばいい。


 何かが吹っ切れた気がした。


 そしてこの感覚、専用パッシブスキル【不屈の闘志】が発動している。


 B級冒険者の目の前で、全く何も感じない。

 ただ俺の中にあるのは、邪魔者を少し退かせばいいかくらいの気持ちだ。



名前 浦岡 優うらおか まさる⚠︎

階級 B級冒険者

職業 ウォーロック

レベル 62


HP  710/710

MP  180/180


攻撃力 71

防御力 101

速度  71

魔攻  190

魔防  140


マナポイント 0


▼ 通常パッシブスキル

【鑑定Lv5】【隠蔽 Lv6】【自動回復 Lv3】【探索 Lv 3】


 専用パッシブスキル

【魔力感知】【マナチャージ Lv 2】


 専用攻撃スキル

 【土上級魔法】 【風中級魔法】




 改めて浦岡のステータスを見ると、さすがB級冒険者という強力なステータスとスキルを保持してるな。


 しかしこの専用パッシブスキル【不屈の闘志】が働いているということは、スキル自身が浦岡より俺の方が強いと総合的に判断したことになる。


 ってそもそもこれは冒険者に対しても発動するんだな。

 そりゃハローワークで出会ったあのおじさんにも反応したんだし、当然っちゃ当然か。


「土上級魔法【ロックエッジ】」


 そう言って浦岡がクイッと人差し指を上に向けると、俺の直下から岩の刃が飛び出してきた。


「うおっ!」


 意識的に後ろへ飛び退いたが、その岩が俺に到達する前に【魔力吸収】が発動して、またもただの岩となり、動きを止めた。


「なるほど。物理的なものは消せないが、魔力によって操っている動きは止められるのか」


 なにやらアイツは俺のスキルについて分析をしている。


 あの岩魔法はこの洞窟にある本物の岩や地面を魔法でゴーレムなどに変えているようだ。


 どうやら俺の 【魔力吸収】は魔力で操っているものが現実にある物質なのであれば、その操っている動きのみを吸収できるらしい。

 それにもう一つ、俺がその岩に気づいた瞬間に動きが止まった気がする。

 ということはさっきの尖った岩、俺が認識してなかったら直撃してたんじゃないか?

 そうと決まったわけではないが、気をつけないとな。


「戸波海成……お前は一体何者だ? その実力、おそらく【隠蔽】で隠しているな?」


 そりゃ対峙したものには分かるか。

 相手側から見た俺のステータスはレベル20の武闘家で、大したスキルも覚えていないことになっているのだし。


「【隠蔽】では隠してる。でもな、俺はただのE級冒険者だよ。それも始めて2週間のな!」


 こんなダサいことで威張ってしまった、恥ずかしいっ!


「たしかに冒険者の階級までは隠蔽できない。始めて2週間と言うのも本当だろう。つまりお前は何らかのユニーク職業持ちってことか、そうだろ?」


「ユニーク職業持ち?」


 初めて聞いた単語だった。


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