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この恋は本物になりますか?
この恋は本物になりますか?
Aica
恋愛オフィスラブ
2024年10月27日
公開日
10.1万字
連載中
【ネオページ契約作品 毎週火・木・土 0時過ぎ更新】

ずっと王子様みたいな人が理想で、恋愛に夢見すぎてるせいで簡単に男性をチョロく好きになってしまう沙羅。
そんな沙羅が新入社員として入社した会社で運命的な出会いをする。
それは、小さい頃から、からかわれていた兄の親友の理玖。
社内一のイケメンでエリートの理玖は女性にモテモテだけど、実はその本性はチャラくて女性に本気にならないクズだった。
そんな理玖は理想の王子様と正反対で沙羅の天敵。
理玖だけは絶対好きにならないと思い込んでいたけれど……

第1話 理想と正反対な王子様との再会①


 小さい頃からずっと王子様みたいな人が理想だった。


 心から好きになる相手は、王子様みたいな人だとずっと決めていた。


 一途で優しくて自分だけを大切にしてくれる人。


 きっといつかそんな人に出会えるって信じて、ずっとそんな人を探してた。



 だけど、あたしが初めて心から好きになった人は。


 理想の王子様でもなんでもない。


 誰のことも好きにならない理想と正反対の意地悪な人でした。



 この恋はあたしにとって本物の運命の恋なのか、それとも……。



◇ ◇ ◇



 この春大学を卒業したあたしくすのき 沙羅さらは、<K dream>という飲食店やカフェなどをプロデュースする会社に入社して、今日はその初出勤日。



 今日から所属する営業部を探してキョロキョロと辺りを見回しながら探し歩く。



 え~何この広さ! ってかここどこよ!


 営業部に直接来いって言われたけど、この会社広すぎてめっちゃ迷うんですけど!


 こんなんずっと迷ったままだったら集合時間に間に合わなくなっちゃうじゃん!



 ギリギリになってしまうかもしれない気持ちと、なかなか営業部が見つからない焦りで、さっき以上にキョロキョロしながら足早に歩いてると。



「うわっ!」



 曲がり角で、誰かと勢いよくぶつかって、思わず声をあげる。



 その瞬間バランスを崩して後ろにそのまま倒れそうになる。



 すると、すかさずスローモーションになったように、目の前のそのぶつかった相手が、手を差し出して、腰から背中を支えてくれた。


 そして、あたしを身体ごと支えてくれてることで、そのまま覆いかぶさって、あたしを見つめる体制になっているその男性。


 あたしは、身体をのけ反りながらも、その男性のあまりのカッコよさに驚いて、思わず至近距離からマジマジとそのイケメンぶりを見つめてしまう。



 やばっ、王子じゃん。



 少し明るめの茶色いふわっとした髪に、見つめられると吸い込まれそうな大きな瞳が、まさにあたしの理想に近い王子様のようで、一瞬でこのシチュエーションにもそのビジュアルにも、チョロく簡単にトキめく。



「セーフ」



 そして、その男性があたしを見つめながら、そう言いながら優しく微笑みかける。



 えっ、やばい。キュンときた。


 これこそあたしが理想としてた出会い! シチュエーション!


 ずっと運命的な恋愛に憧れ続けた22年。


 王子様に抱えられてるみたいな、この少女漫画のような素敵なワンシーンに、あたしはずっと探し続けていた運命的なモノを感じて胸が躍る。



 「大丈夫?」



 するとその男性は、脳内でそんな運命的な展開に一人騒いでるあたしを知るはずもなく、そのまま見つめて固まったままのあたしの顔を更に覗き込んで心配して声をかけてくれる。



「あっ! すいません!」



 そして、あまりの近さに気付いた瞬間、ようやく我に返って、自ら身体を起こして離れる。



 やばいやばい。またいつものチョロい癖が出ちゃった。 


 小さい頃からあまりにも長年理想の王子様を探し続けてるせいで、いつの間にかあたしはすぐ優しくされると、その都度王子様かもしれないとチョロくその人を好きになってしまう癖がついてしまった。


 いや、まぁ新しいこの職場で、素敵な出会いとかあるかもな~って期待はしてたよ? もちろん。


 でも、まさかそんなビジュアルもシチュエーションもこんな理想通りの相手に、入社早々に出会えるとか思わないじゃん!



 と、思いながらも、さっきの胸キュンシーンを思い出しながら、あまりにもトントン拍子で上手く事が運んでいくから、思わずニヤけそうになる。



「えっ、ホント大丈夫?」



 すると、思わずそんなあたしの下心が伝わったのか、一人ニヤニヤしてるあたしを見て、今度は違う表情で心配される。



 やばっ、変なヤツと思われちゃう。



「大丈夫です! ありがとうございます!」



 素のあたしがバレないように、すぐに切り替えて返答する。



「ごめん。オレがいきなりここ曲がったからぶつかっちゃったんだよね」


「いえ、あたしがキョロキョロして、ちゃんと前見てないのがいけなかったので」


「えっと。もしかして新入社員の子?」


「あっ、はい。そうです。今日から営業部でお世話になるんですけどこの会社広すぎて迷っちゃって」


「あっ、営業部なんだ。じゃあこっちと真逆だね」


「えっ、真逆!?」



 そう指摘されて、あたしはまた周りをキョロキョロと確認し直して、ようやくこの状況を把握する。



 それでなかなか見つからなかったんだ~!


 建物の奥に営業部あるって聞いてたから、必死に探してたのに全然見当たらなかったのはそういうことか。


 てか、あたしどこで方向間違ったんだろ。 



「もしかしてこの会社の裏口の方から入ってきたんじゃない?」


「裏口ですか?」


「そう。大通りじゃなくて細い通りの入口からこの建物に入ってきたんじゃないかな」


「あっ、そうですそうです!」


「だよね。それまだこの会社に慣れてない新入社員でよくあるパターンでさ。そっちから入ると、部署がある方と真反対の方になるからよく迷う子多いんだよね」


「そうなんですね! だからかー!」


「ちょうどオレも営業部行く途中だから一緒に行こうか?」



 すると、その男性が優しく微笑みながら、嬉しい提案をしてくれる。



「えっ! ホントですか!? ありがとうございます!」



 一緒に行ってくれるとか優しすぎる。



 思わずあたしも素直に嬉しくて反応してしまう。


 迷ってて不安だったさっきまでの感情が一気に消えて、今度は違う感情が騒ぎ始める。





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