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第28話 ランキング上げいきなりつまづいたんだけど、どうすればいいと思う?

 とまあ、俺たちはランキング上げを目指して頑張り始めた。そこまでは良かったんだ。

 問題は──


「まずは入れ替え戦の対戦相手決めね! 手っ取り早く、ランキング55位の戦隊と戦いましょう!」

「いきなりッスか!?」

「私たちの実力なら贔屓目なしで見ても、問題ないわ!」


 そうして長官経由で対戦依頼を提出し──来た返事が。


『ランキング55位、【エマージェンシー・カー戦隊】は、今回の申し入れを断る』


 だった。


「──まあ、用事があったり、忙しかったんでしょう。うん。次の戦隊に挑みましょう」


 そうして、次はランキング54位、【ハイスクール・ユニフォーム戦隊】に提出すると──


『ごめんなさーい! 私たち忙しくて無理でーす!』


 と、端的な返事が。


「──ま。まだ3つあるし……」


 ブルーが震え声を出しながら、今度は残りの戦隊一気に3つに出した。


『ランキング53位。【PCパーツ戦隊】拒否』


『ランキング52位。【フォーシーズン戦隊】嫌でーす』


『ランキング51位。【オールド・フロント戦隊】。受けるわけないだろう』


 結果は同じだった。


「────順位が離れすぎていて、受けてくれないのかしら」


 そう無表情で言って、ブルーが今度は71位より少し上の、66位、67位、68位、果ては直ぐ上の69位、70位にも同時に送ってみると……


『嫌だ』

『無理』

『断る』

『しない』

『互いに損しかしない』




「なんでよッッッ?!!!」



 ブルーの渾身の叫びだった。


「え? いや、意味分かんないんだけど!? なんでどの戦隊も受けてくれないの? 何、嫌がらせ!?」

「ん。そもそも、“入れ替え戦なんて引き受ける上位陣にメリットほとんどない”」


 グリーンさんが肩をポンと叩きながら、そんな分かりきった慰め方をしていた。

 まあ、薄々俺も思ってた。この制度普通使うやついるの? と……

 いや、戦隊同士の戦いを配信させて、知名度をアップさせるって目的なら、十分効果はある筈なんだけど……


「いや待って!? 基本ルールに、“原則下位からの申請は拒否してはならない”って書いてあるわよ!? 寧ろ断るという明確なルール違反してるのは相手戦隊よ!!」

「あ、ホントッス!?」

「そうなのー?」

「ん。あくまで原則。“特殊な事情があった場合、例外的に拒否する事が可能”」


 ブルーがわざわざルールブックを引っ張って来て、そこのルールの一部を見せて来た。

 それに対して、冷静にグリーンさんがそうとは限らないと否定する。


「特殊な事情って、例えばどんなっスか?」

「例えば、戦隊としての仕事が忙しいは勿論。他にも、順位が離れすぎていて明らかに試合にならないと分かっている時。あるいは……」

「あるいは?」


「──“明らかに問題を起こしそうな戦隊が、挑んできた時”」


「私たちが問題児って事!? ねえ!?」


 グリーンのその言葉に、ブルーが掴みかかってガックンガックン揺らしだす。

 それを受けながらも、グリーンは冷静に言葉を繋いでいく。


「ん。この前の試合が思った以上に不味かった……【クロス戦隊】をボッコボコにしすぎたせいで、【ジャスティス戦隊】は残虐ファイトする戦隊だと思われちゃってる。……ある意味やり過ぎた。入れ替え戦はあくまで模擬戦。それで大怪我したら元も子もないと言う理由で、拒否出来ちゃう」

「ピンクちゃんがいるでしょーが!? 回復役ヒーラーの彼女が!!」

「わたし!?」

「ん。心の傷は癒せない……」


 ブルーがピンクを指差しながら反論するが、グリーンは目を伏せながらそう言った。

 いや、ある程度リラクゼーション効果はあるだろうけど、うつ病なんかを直せと言われたら、流石にピンクには酷だろう……

 おのれ【クロス戦隊】、とブルーが呟いている。


 と言うか……


「その残虐ファイトのイメージって、ほとんど“ブルーのせい”だと思うんだけど、そこんとこどう思う? あの配信された高笑いについて」

「記憶にございませんね」

「どこぞの政治家みたいな言い訳を……」


 明後日の方向を見ながら、そしらぬ顔で抜かしやがったこいつ……


「ん。あの試合の結果、クロス戦隊は83位を大幅に超えて人気が下がってる。俺達も、結局65位まで上がったのに、下がっちゃった。両方順位下がる結果となっちゃったから、どの戦隊も受けたくなくなっちゃってる」

「ランキング入れ替え戦って、本来戦隊同士を戦わせる夢の試合の配信映像を流して、互いに人気をアップさせたりするって目的でやるものだからな……勝っても負けても人気に影響でそうだと、そりゃ遠慮したくなるだろうな……」

「じゃあ何!? “私たち入れ替え戦出来ない”って事!?」

「少なくとも、ほとぼり冷めるまでは……」


 俺とグリーンさんは、互いに顔を見合わせてはあ……っとため息を吐く。

 そんな〜! とブルーが叫んでいた。

 まさか、こんな事でつまづくとは……


「うっ、うっ……みんな臆病者すぎよ! 如何なる挑戦者も、全て立ち受けてこそのヒーローじゃないの!?」

「ははっ。悪の女幹部がなんか言ってら」

「コメントで言われてましたもんッスね」


 イエローと顔を見合わせて苦笑いしていた。

 あえて冗談風に言ってみたが、これがまかり通るほど最近のブルーの態度は酷かった。


 と言うわけで、当初の予定が瓦解した訳だが……


「結局どうするッスか? 入れ替え戦は暫く出来そうになさそうっスよね?」

「まあ、普通に敵組織倒しまくって、順当に人気上げていくしか手はないなあ……」

「でも最近、倒し過ぎちゃって私たちの担当分は暫くないよー?」


 ピンクが予定表をぶら下げながら、空白の予定が続いているスケジュールを見せてそう言って来た。

 あちゃー、見事にスッカスカ……ある意味平和の証拠でもあるけど、タイミングが悪くもあり……


「こうなったら、長官! 上位の担当悪の組織を私たちに回しなさい!! そうすれば実力の評価が伸びるわ!!」

「担当もう配分決まってるから無理だね〜。少なくとも、緊急の案件がない限り今月分の調整は出来ないかな〜」

「融通が効かないわねえ!!」


 神矢長官の言葉にくそあっ! と悪態をつくブルー。


「レッド、本当になんでランキング上昇の提案断っちゃったのよ!? それ受けていれば今頃楽だったのに!」

「いや、だってあの時はそもそも全員の意見聞いてなかったし。そもそも俺一人だけ突出しても意味ないってあの時言ったよね?」

「今からでもあの話受けられないかしら!?」

「さすがにもう遅くて手遅れだと思う」


 今更ながらの話題を掘り返されても、ちょっと困る。

 そう思っていると、ブルーが名案を思いついたような表情になって提案してくる。


「レッド!! この際ちょっとその辺の街歩いて、適当に街襲ってるヴィラン片付けて来てくれない!? この間みたいに!! 他の戦隊が戦ってるところでもいいから、乱入して!」

「やだよ。割とヒーロー連合からガチ目に怒られたんだから」

「ええー!? ヒーローを志すものが怒られた程度で躊躇する!?」

「目の前で暴れられたならともかく、自分からわざわざ探しに行くつもりはねえよ。他の担当ヒーローがいるなら特に」


 そう、あの時ヒーローランキング上昇の提案をされると同時に、違反行為として厳重注意もされていたのだ。

 ランキングの評価を気にするようになった以上、勝手な行動は暫くやめたほうがいいだろう。

 どうしてもと言うときは全く同じ行動をするだろうが、自分からわざわざ探して積極的に関わっていくつもりは今のところない。

 本当に必要になったなら、長官経由で指示が来るだろうしな。


 こうなったら……と、ブルーが唐突にスマホを取り出して弄り出し始めた。

 疑問に思ったピンクが質問をすると……


「ねえ、ブルー? 一体何やってるの?」

「ああ、これ? “【カオス・ワールド】に【ジャスティス戦隊】名義で挑発文送ろうとしてる”。拝啓、ティアー様へ……っと」

「止めろやテメエッ?!!」


 最悪のマッチポンプしようとしやがってるコイツ?!! 

 しかもさらっと自分ティアー宛にしてやがる、自分の欲に油断も隙もねえ?! 

 120%来るだろうが!? わざわざヴィラン呼び出すなー!? 

 俺が羽交い締めにして止めると、離してー!! とブルーは叫んでいた。


 ☆★☆


「……取り乱したわ」

「おう。落ち着いたようで何よりだ……」


 とりあえず、ブルーの錯乱から暫くして、ようやく落ち着いた頃。

 俺たちは、改めて今後どうしていくか考えていた。


「ええっと。状況を整理すると、入れ替え戦は暫く期待出来ない、で合ってるっスよね?」

「そうだね〜。今の所は無理と思った方がいいね〜」

「それじゃあ、となると……」

「ん。ひとまず、今は地道に“人気を上げていく”しかないと思う。この間減ってしまった分も含めて」

「人気。人気ねえ……」


 ブルーがグリーンさんのその言葉に、言いづらそうに……


「……“このダサいスーツの格好で? ”」

「ん。大丈夫。ヒーローは中身」


 ジト目のブルーに対し、グリーンさんはグッと親指を立てて元気付けていた。

 ブルーはええ〜……と疑っていた。

 まあ、でも実際この格好で30位台経験した人の言葉だからなあ……


「とは言っても、人気を出すにしてもどうやってアピールしていくッスか? 結局私たちの担当のヴィランは今はいないッスよね? 戦闘自体ないんじゃアピールも何も無いッスよ?」

「それなんだよなあ……」


 イエローが、最もな事を指摘する。

 活躍する場面が無い以上、人気が出る要素なんてほとんど無い。

 無理やり活躍する機会を作るしか無いが……さっきも言ったように、他の戦隊の活躍を奪うようなことは出来ない。


 さて、どうするか……最悪、今月は様子見かな……。


「……それなら、ちょっといいかい〜? 」


 とか思っていると、長官からそんな声が上がって来た。


「なんですか長官? 何か案あるんですか?」

「一応ね〜。君たちが手が空いてる状態になったからこそ、できる提案だね〜」


 そう言って、長官は改めて俺たちに向き直って……


「君達。“ボランティア”を受けてみる気はないかい〜?」

「ボランティア? 街の掃除とかか?」


 それも含まれてるけどねー。と長官は言って、言葉を続ける。


「実はヒーロー協会に、ヴィランの対処以外にも、“お悩み相談的な依頼”が来る事があるんだ。さっき言ってた、街を綺麗にして欲しいとか。あとは、老人ホームの介護の手伝いとかねー」

「ヒーローを、何でも屋と間違えてらっしゃる?」

「まあね〜。と言うわけで、本来なら君達ヒーローが受け持つ担当じゃないものではあるんだけど……丁度手が空いてる事だし、これらの依頼を片付けて見ないかい?」


 両手に顎を乗せながら、神矢長官はそう提案して来ていた。

 それを聞いて、ピンクがハッと気づく。


「分かった! それで市民の人たちを直接助けて、ヒーローとしての人気を上げてランキング上昇させようって作戦だね!」

「その通り〜。頭いいね、イエロー」

「ピンクだよ!」

「イエローこっちッス。けど、割といいんじゃないッスか? どうせ他に手段ないっスよね?」


 ピンクが頭を長官に撫でられてる中、イエローがそう言い出した。

 ブルーもそれを聞いて、ふむと顎に手を添えている。


「そうね……まあ、割と市民に寄り添うヒーロー、としての人気取りは悪くないんじゃないかしら」

「ん。高笑いのイメージを払拭するチャンス」

「何度も言うけど、記憶にございませんね」

「現実をちゃんと見ろー」


 お前言っておくけど、割と最近演技崩れてるからな? ちゃんと分かってる? それともわざと? 

 ある意味、ちょっと悪の女幹部風を普段から出して、逆に意識をそらしていると言う作戦なら脱帽だけど……普通に素を出してる可能性もあるから困る。


「それはそれとして、長官。具体的にどんな依頼があるっスか?」

「ええっとー。君達に丁度良さそうなものといえば……」


 そう言いながら、端末をスイスイと操作していく長官。

 それで、ある程度候補を見つけて……


「例えば、“発電所の点検があるから、その間一部電力を補充して欲しい”とかー」

「結構とんでもない依頼だな、それ?」

「なんかヴィラン襲撃で一部破損したらしくてー。このままだと計画停電しないといけないらしいよ〜?」

「じゃあ、それは私っスね! 頑張ってくるっス!」


 イエローが元気よく、そう返事をしだした。

 まあ、ピッタリっちゃピッタリだよなあ。

 雷自前で発動出来るから、電気賄うのにちょうど良いし。

 ガジェット持ち帰って蓄電したいんッスけどねー、とは言ってたが、さすがに家庭家電レベルだと電力調整が難しいらしい。


「次は、“老人ホームで、リラックス出来る何かが欲しい”って依頼だねー。なんでも癒しが欲しいとか」

「じゃあ、私が出来そう! 頑張ってくる!」

「ん。念のため付いていく」


 ピンクが今度は決まった。

 ピンク・ヒーリングがあるから、癒しにはぴったりだろう。

 何気に人の体調に直接与える影響が大きいからか、ピンクの能力は引っ張りだこになりやすい。

 さすがにピンク一人は心配なのか、グリーンさんが付いて行くらしい。


「今度は、“川のお掃除”の依頼だねー。ゴミだらけで水質が汚れていて、綺麗にしたいってさ」

「ふうん。じゃあ私ね。まっかせなさい、ピッカピカにしてやるんだから!」


 なるほど、ブルーの“性質変化”、あれ何げに触れた液体に対しても効果あるらしいから、丁度いいだろう。

 ゴミ掃除は大変だろうけど、そのあとの水質改善にはヒーロー能力を活かすのにちょうどいいな。


「最後は、ピンクだねー」

「レッドです。まあ、何? 炎関連の仕事かな? それとも切断関連?」


 俺はなんとなく、自分に振り分けられるであろう仕事を予測する。

 イエローみたいに、火力発電所か? 

 それとも、木材の切断あたりか? 

 はたまた、敢えて本当に普通の公園の掃除あたりか? 

 ひとまず、何が来ても精一杯やるつもりだが……


「残った仕事はねー」

「ああ」




「──“山奥の廃墟に潜んでるとされる、詳細不明の隠れヴィラン組織の調査依頼だねー”」


『それをジャスティス戦隊の仕事にすればいいんじゃないの?!』


 全員からのツッコミに、スニーキングミッションだからあんまり目立たないように少人数がいいとのこと。

 調査だけで戦闘は極力避ける仕事だから、本来まだヒーローに来る案件じゃなかったらしい。

 結局、俺一人で行くことになった。


 それはいいけど、なんだろう……結局ボランティアじゃなく、普通に仕事になっちゃったような気がする……



 ★佐藤聖夜さとうせいや


 23歳

 175cm

 黒髪

 中立・善

 男


 主人公

【ジャスティス戦隊】のレッド。


 結局この後一人で調査に行った。

 ちなみにスニーキングミッション失敗して、そのままヴィラン組織一つ壊滅させて帰ってくる事になる。

 本人は致し方なかったと供述しており……



 ★天野涙あまのるい


 22歳

 168cm

 青髪

 混沌・善

 女


【ジャスティス戦隊】のブルー。

 兼、【カオス・ワールド】の幹部、“コバルト・ティアー”。


 川掃除に向かって行った。

 “何故か”いた一般市民のボランティア希望者達と共に、川のゴミの大掃除をやった。

 おかげで早く終わったらしい。



 ★空雲雷子そらくもらいこ

 21歳

 167cm

 黄髪

 秩序・善


【ジャスティス戦隊】のイエロー。

 レッドの後輩。


 電力発電で大変活躍。

 そのまま転職を強く勧められて、逃げ帰るのに大変だったらしい。



 ★大地鋼だいちはがね


 34歳

 184cm

 緑髪

 秩序・善

 男


【ジャスティス戦隊】のグリーン。


 固有能力使えないため、ピンクの警備。

 任せられる仕事が無かったとも言える。



 ★大地心だいちこころ


 10歳

 130cm

 ピンク髪

 秩序・善

 女


【ジャスティス戦隊】のピンク。


 おじいちゃん、おばあちゃん方に大変好評。

 孫が出来たみたいだと、大変喜ばれた。


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