気がつくと、俺たちは異形の
「竜司さん、モンスターの群れが現れました! オークやゴブリンっていう比較的低レベルの種族ですが、油断しないでくださいね!」
車内のカーナビから、
俺の
「グフフフ……」
オークというのは、この
「キヒヒヒヒッ」
そして緑色の悪魔のような、何十体もの小男の群れがゴブリンだろう。耳まで大きく切れ上がった口で、なんとも不気味な笑い声をあげている。こちらもナイフや槍といった得物を手にして、注意深く距離を取り俺たちの様子をうかがっている。
それにしても、見た目も
「あー、私は
そう言い残すと、
「よし、ひとまず俺が相手するから、みんなは一旦下がってく――――」
長ドスをかざして女の子らを制しようとしたとき、彼女たちはすでに
「うおおりゃあーーーーっ!」ザシュザシュザシュ
最初に攻撃に出たのは、やはり小虎だった。両腕をクロスさせて、格闘武器「切り裂きの爪」の
「これでも喰らうっスーー!」バキュバキュバキュ
オガタは腰のホルスターから
「いてまうぞこんボケがぁ!」ボッコボッコボッコ
そして
「お、おい……」
気がつけば
「なに? 竜司、なんか言った?」
「へへっ、ちょろいモンっスね!」
「ホンマ、根性足らんヤツらやで」
「みなさん、ご無事で何よりでした。さすがですね!」
「竜司、気をつけろ! まだ生きてるヤツがいるぞ!」
そのとき、伍道の警告が聞こえた。ふと見ると、オークの死骸の陰から瀕死のゴブリンが頭を出して、手にしたボウガンでこちらに狙いをつけているではないか。
「キシシシシッ!」
気がついたのは俺だけだったが、あの攻撃を防ぐにはあまりにも距離がありすぎる。ゴブリンは薄ら笑いを浮かべながら、まさに引き金を引こうとしていた。
シュッ!
すると、どこからともなく弓矢が飛んできて、ゴブリンの眉間を正確に貫いた。ゴブリンは断末魔の声を上げて、ゆっくりとその場に倒れ込んだのだった。
ギシャアアァァ――――!
「――――みなさん、お怪我はありませんか?」
その声に振り返ると、そこには鋼鉄の鎧に身を包み白馬にまたがった一人の騎士が、大弓を携えて立っていた。
「私は、王都アリアスティーンからこの地に派遣された
その騎士は若々しく、人間の感覚で言えば二十代前半くらいに思われる。スラっとした長身にして、笑顔の爽やかな好青年だ。そして何よりも特徴的なのは、その尖った耳。伍道やエルミヤさんと同じ――まさしく、エルフである。
「シャルクさん、か。危ないところ助かったぜ。俺は、
「グンバリュージ? もしかするとあなたは、伝説の勇者・リュージ様では?」
すでに異世界に来ているとはいえ、さすがに三十路男が「伝説の勇者」を名乗るのは普通に照れる。こんな姿を針棒組の連中が見たらなんと言うだろう。
「ま、まあそんなとこだが――――」
「なんと、お会いできて光栄です!」
そう言うとシャルクは、少々興奮気味に俺の手を握ってきた。
「ねえ、あなたどうして竜司のこと知ってるの?」
「いえ、王国では常識ですから。『竜の大嵐が巻き起こりしとき、伝説の勇者現れ平和に導かん』。やはり、古き言い伝えは
「エラいもんやで、竜ちゃんメッチャ有名人やん」
「さすが、
俺たちの顔を見渡しながら、シャルクはさらにうれしそうに言った。
「するとみなさんは、今回の異変を収めにいらした勇者パーティーなのですね。勇者様のお力添えがあれば、
シャルクが口にした「
「この近くに、私の部隊が逗留している『ホッタンの村』があります。まずはそこでゆっくり体を休めて、来たるべき戦いに備えていただければと」
「ホッタンの村だって?」
「ええ。小さな集落ですが、効能豊かないい温泉があるんですよ」
「お、温泉!」
小虎とオガタとチマキに加えて、再び姿を現したレベリルまでもが、その言葉に目を輝かせた。
続く