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お医者さんごっこ(歩目線)

 夕飯を黙々と食べてるちょっと疲れ気味の恋人に、面白いことを提案してみようと口を開いてみる。


「なぁ立場、逆転してみない?」


 俺の言葉を聞き、うげっΣ(・ ̄□ ̄!)なぁんて顔をしたと思ったら、わざわざ傍にやって来て、額に手を当ててくれる始末。


「ちょっ、何のチェックしてんだよ。タケシ先生」

「お前がワケの分からない、日本語を口走ったからだ。心配するに決まってるだろ」


 はーっとため息をつき、胸の前に腕を組んで、呆れた視線で見下ろしてきた。そんな失礼な態度に、唇を尖らせて文句を吐いてやる。


「ワケの分からない日本語なんて、言ってねぇし。ただちょーっとばかし、息抜きしたいんだってば」


 俺の息抜きと一緒にタケシ先生も息抜きさせてやろうと、思いやりをもって提案しているあげてるのに、┐(・ ̄ヘ ̄)┌ フゥゥ~なぁんて顔をするなんて。


 だけど負けないように俺は、右手人差し指を立てて必死に提案!


「あのさタケシ先生が患者になって、俺が医者になるんだ。優しく診てあげるから、やってみようよ」

「(;゜д゜)。oO(ぇ・・・)」

「たまにはさー、患者側の目線から医者を見るっていうのも、大事だと思うんだよね」


 だのに思いっきりケッという表情を浮かべ、何も言わずに席に戻り、夕飯の続きを食べる。


「ねぇ、タケシ先生ってば」


 やっぱ、突飛過ぎる提案だったのかな。スキンシップには、いいネタだと一生懸命に考えてみたのに。


「分ったよ。だったら後片付け頼んだよ。準備してくるから」


 ヤタ───v(-∀-)v───♪


 内心小躍りしながら喜びを噛みしめ、さっさとご飯を食べ終えてから、タケシ先生の食器と一緒に、鼻歌混じりでジャブジャブ洗い物をした。頭の中はもう、めくるめくお医者さんごっごが、勝手に展開されるのである。


『王領寺センセ、ヨロシクお願いします』

『あ、はい。今日はどうされましたか?』

『あの……胸が苦しくて。その……王領寺センセに、恋患いしているのかもしれません……』

『じゃあその恋患いを、愛し合うことで治しましょうか。それでは早速、脱いでください(///ω///)テレテレ♪』


 なーんていうことが、ここで繰り広げられたらどうしよ~!

(/ω\) ハジュカシィー・・・(/ω・\) チロ・・


 キッチンからリビングをチラ見してると、白衣と聴診器を手にしたタケシ先生が下から戻って来て、ソファに座った。ワクワクしながら傍に行くと、押し付けるようにそれらを手渡される。


「ほら、医者だろうが何だろうが、好きにやれば」


 ドキドキしながら白衣をまとい、聴診器をカッコよく首にかけてみた。


「ねっ、どう? 医者っぽい?」

「ま、いいんじゃないの……」


 俺の姿を見て、妙にどきまぎしているように見えるタケシ先生の前に跪き、そっと右手を取ってあげる。


「周防さん、今日はどうされましたか?」

「えっ!? あ、その……」


 長い睫を伏せながら慌てふためくその様子は、普段落ち着き払い、患者を診てる医者とは全然思えない。


 すっげぇ可愛い、イタズラしたいんですけど!


「顔がほんのりと赤いですよ。熱があるかもしれません、胸の音を聞いてみましょう」

「(*・-`ω´-*)ゞやらなくても……」


 何故か胸元を押さえて、イヤイヤを思いっきりアピールしてきた。しかしだね、しっかりと聴診器を渡されてる手前、使わないワケにはいかないでしょ(笑)


「医者のいうこと、ちゃんと聞いてくださいね周防さん」

「(。・-_-。)……分ったよ」


 仕方なさそうな顔して、シャツのボタンをもぞもぞ外していくタケシ先生。頬を染めて時々上目遣いでこっちを見るんだけど、んもぅお色気ありすぎて、困ってしまうんだ。


 ヨダレを垂らさないように、ゴクリと飲み込む。


 そんな俺を渋い顔して見やりながら、ゆっくりとシャツの前を開き、胸を見せてくれたので、喜び勇んで心臓の辺りに、聴診器を当ててみた。


「うおっ、バクバクした音が、ハッキリと聴こえる!」


 呼吸の音と一緒に、心臓の音がクリアに聴こえてくる。


「そうかい、よかったな」

「しかも何気に早くね? 心音」


 聴いてるこっちまで、一緒になって早くなってしまう。目の前にある獲物……じゃなかった患者さんがホント、美形過ぎるのがいけない。


「……心拍数の数だけ、お前への想いが溢れてるってことだよ」


 ・:*:・(*´エ`*)ウットリ・:*:・

 俺ってば、すっげータケシ先生に想われてるじゃん。ここは飼い犬としての使命を果たすべく、頑張らないといけないよな。


 そう思ったので、いそいそと白衣を脱ぎ捨てた。 


「じ、じゃあ、さ。その想いに応えるべく、今ここで更に想いを深め合おうじゃないか、タケシ先生!」

「ハッ!!Σ(ll゜Д゜ノ)ノ」


 白衣は脱いだけど聴診器を耳にかけたままで、タケシ先生に抱きついてみる。


 どうして、聴診器を外さないのかって?


 (-д☆)キラッ

 決まってるだろ。アチコチに当ててタケシ先生の想いを、チェックしてみるのだ!


 ココカイ?(((*´Д)ノ*ノ▽ノ)ア、ダメ・・・なぁんて展開を激しく希望したのに――


 覆いかぶさり聴診器を手にした俺へ、愛の鉄槌が下され……つぅか医者らしいって言えばいいのか、人の弱い部分をコアに狙って、クリーンヒットしてくれた。


 しかも治療しなくていい、限界ギリギリのライン。


「っ……このバカ犬がっ! 聴診器はおもちゃじゃないんだよ。どこに当てようとしてんだっ!」

「ううっ……どこだっていいだろ。俺は医者なんだし」


 蹴り上げられたわき腹を擦りながら、顔を歪めるしかない。恋人に対して、容赦なさすぎだぜ。


「白衣を脱いだ時点で、職場放棄決定だよ。エロ医者め」


 ぷいっと横を向き、シャツのボタンを嵌めていく手をぎゅっと握りしめてやった。


「着ないで……」

「は――!?」


 お願いした声を掻き消すような、怒った声のタケシ先生。


「その……せっかく脱いだんだし、さ。お医者さんごっこは止めて、恋人ごっごしようよ」


 自分なりに一生懸命、キモチを伝えたのに。


「やらないよ、そんなもん」


 鼻で笑いながら、華麗に一蹴されてしまった。(ノД`)シクシク


 なのにシャツを手早く脱いで、俺の頭にバサッとかける。


「うわっぷ! なっ、何っ!?」

「恋人なのにどうしてごっご遊びを、わざわざしなきゃならないんだ。そっちのほうが可笑しいだろ」


 タケシ先生のぬくもりを感じるシャツを手に取りながら、声のするほうを窺い見たら、リビングの扉に手をかけていた。


「ごっこじゃないことするなら、付き合ってやるよ」


 艶っぽい笑みを浮かべ、キレイな上半身をこれでもかと見せつけてから、出て行く後ろ姿に俺はもう――


「ごっこなんてしませんっ! 是非ともお付き合いしてくださいっ!!」


 手にしたシャツを抱きしめながら、大声で叫ぶ。


 久しぶりに誘ってくれたタケシ先生の言葉を、ぎゅっと噛みしめながら、急いで後を追ったのでした。


 めでたし めでたし((´∀`))

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