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T050  ユキの過保護とアドバンテージ



チリンチリン



 ユキが入ったその店は、外見喫茶店みたいなのに中身は…、なんか色んな文化がごちゃ混ぜになった…?レストラン?だと思う。そのままカウンターに歩いていくユキ。


「マスター、奥。使っていい?」


 カウンターに立ってワイングラスを拭く、そのダンディ?な男性はちらりとユキに目をやり。


「あいよ…」


 ただその一言で終わる。こういう店に店員がいるということはあの人プレイヤーだよね?そこら辺にある飲食店やオーブショップは無人販売だったし。 

 プレイヤーがお店を開いているのか。


「あ、あと今回のイベントについて。特に参加プレイヤーの上位有力者の情報を〜…。しばらく奥で話してるから帰りにデータちょうだ〜い。値段は?」


「30 000Gだ」


 ユキはそれを聞きにっこりした後、ホログラムパネルを呼び出しそのままなにか操作し、軽い足取りで私たちの方へやってくる。


「よし!おっけ〜。ついてきて」


 そしてユキが向かうは店の1番奥…のそのさらに裏手側。ちょうどカウンターの裏側かな?そこにひっそりとある個室だった。


 扉を開けると…。豪華かつ、下品にならない程度の調度品。柔らかいソファーと全体的に暖色でできた…いわゆるVIPの部屋だった。


「おお…、なんか私、場違い感が…」


「確かにこんなところにこんな場所があるとは、素晴らしいですね」


「まあ〜、一般の人はこの部屋の存在はまず知らないからね〜。ここは、私みたいに高ランクで目立つ人や、そんな人達が密会をする時に使う。そんな部屋だよ〜」


 なるほど、さすがランキング9位。そりゃあそういう場所も知ってて当然か。


「そんな場所に私を通して良かったんですか?」


 んー、ビュアさんの質問ももっともだね。私なんて初心者だよ?


「誰かの紹介か〜、その人同伴どうはんだったらお〜け〜だよ〜。まあ、2人ともたぶん何もしなくてもここに通されたと思うけど〜」


「なるほど」


「ん?なんで?」


 ビュアさんはわかったみたいだけど、私がおっけーな理由って何?


「あのね〜…。ナユカ。あなたももう狙われる側だってこと忘れてな〜い?さっきまで襲われて迷惑だ〜、とか言ってたのに」


「およ?…確かに」


 そういえば私、アイテム狙われてるんだった。


「うん。これ勘違いしてるわ…」


「ナユカさん。あなたも十分有名人ですからね…」


 えー?だって初心者だよ?


「「はぁ〜…」」


 2人にため息つかれた。


「まあ、いいわ。さて〜、ビュアさん。本題をナユカに話してあげてよ〜」


「そうですね」


 おっ!そうそう、用事とはいったい?


「以前、黒龍戦の前に、ナユカさんに目をつけていた。と言いましたよね?」


「うん。私のことストーカーしてたんだよね?」


「よしッ!!ちょっと表出ようか〜ッ!!」



「ちょっ!?人聞きの悪い!!違いますよッ!私はどのタイミングでナユカさんにこの話を切り出すか、その様子をうかがってただけですから!!だからそのタガーをおさめてください!」


「フフ…。それをストーカーッて言うのよ〜ッ!」


 おっと!ユキがエキサイティングしだしたぞー。まあ、ストーカーだとは思うけど!これはあれか?私のために争わないでー!って言った方が良いやつか?


「まあ、ユキ。別に被害があったわけじゃないから」


「でも〜ッ!!」



「ユキ…」


「うぅぅぅ…」


 ん。落ち着いたね。




コンコン




 ん?


「失礼。紅茶だ」


「おっサンキュ〜マスタ〜」


 何かと思えば、さっきの店の人が飲み物を持って来ていた。ユキがたのんでいたみたい…。え?いったいいつ頼んだの?



「それでどんな話なんですか?」


 ビュアさんはいったい何でそんなことをしていたのかだけど。


「ズバリ!スキル〔ジャンプ〕の使い方を教えていただき、それを動画で投稿させて頂けないでしょうか?」


「いいよ!」


「待ちなさい。ナユカ。あなたの見つけたスキルの使用方法よ。それを無償むしょうであげるのは良くない」


 私が何も考えず、二つ返事でOKを出すと、食い込むようにユキからストップがかかる。


「いいよ」


「いいよ〜。でませちゃダメなの。本来スキルの使用方法は個人のアドバンテージを作る上で大事なものよ?ナユカが初考案だとしたらなおさら」


無償むしょうでという訳ではありませんよユキさん。もちろんそれに見合った対価をお支払い致します。それに無理にとは言いません」


 うーん。ユキの言ってることもわかる。私もただとは言ってないんだけどね?ユキの過保護っぷりがここでも炸裂さくれつしちゃってるよ。


「ユキ。私はもちろん対価を貰うし、それに昨日の黒龍戦のPVがもう公開されちゃってるんだから今更だよ?いずれわかるし。〔ジャンプ〕ってスキルなのはみんなわかるようになってたみたいだしね」


「…確かに…。時間の問題…だけど…。うぅ…。ナユカはそれでいいの?」



「いいよ!それにビュアさんには黒龍戦の時にポーション貰った借りがあるからね!」


「ナユカがそこまでいうなら…。いいよ…」


 うん!これでOKだね。


「ビュアさん対価は貰うけど!〔ジャンプ〕について色々お教え致しますよ!」


「ありがとうございます。動画投稿の事なのですが…、今から実際に教えていただくことは可能ですか?あとその時の動画を使わせて頂きたいのですが」


 あ、そっか。でもまあ、PVにいっぱい写ってたから今更だよね。別に色んな人にじかに見られるって訳でもないし〜。


「ユキは?いい?」


「いいよ〜。…もうどうせ目立ってるし〜」


「ありがとうございます。ユキさんにも質問したりしてもいいですか?」



「ん?私?ん〜…。答えられる範囲ならね〜」


 あれ?ユキも別にいいのか。てっきり質問とかは断ると思ってたんだけど。


「じゃあ、さっそく〜。マスタ〜!」


「あいよ」


「私チョコレートパフェ〜、ナユカとビュアさんは?何にする〜?なんでもいいよ〜。大体のものは出てくるから!」


「ここはカフェじゃないとあれほど…」



「私はもも!!ももありますか?」


 やっぱり私はももだよねー!あったらいいなー!


「ああ、あるよ…。桃のパフェでいいかい?」


「はい!!」


 やったー!!もものパフェ!美味しかったらまたこよーっと!!


「じゃあ私は…。ふつうのパフェでお願いします」


「あいよ」


 こうして私達は運動の前にデザートをいただくのだった。ゲーム内だから運動もデザートもないって?いいのいいの。太らないからなおよしだよ!!

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