*>>システムホール・物理AIルーム001
「よっと♪お待たせー?珍しいじゃーん?呼び出しを掛けるなんて」
『来ましたか。早速本題に入ります』
ここはRBG。のAIルームのひとつ。
「マザーは相変わらず硬いなー?もっと気楽にいこうよ♪最近忙しいのはわかるけどさー」
『プレイヤーはゲームの予定など待ってくれませんよ』
そこにはマザーと呼ばれたこのゲームの管理AI。そのトップ。
「じゃあモンスターイベントの方を遅らせればいいんじゃないのー?」
『そうしたいのはやまやまですが、そうもいきまそん』
そして黒いシルクハットにタキシードを来たなにか。先程アリア達の前に現れたGMと呼ばれる個体だ。
「まぁ、そうだよねー。シナリオ崩壊が1番きついね」
『あれは私たちがプレイヤーの選択を予想出来ていなかったのが原因。言わば私たちのミスであり、そのせいで忙しいのは仕方ありません』
「それはそうだけどさー?今回の招集はその次のシナリオについての話であってるんだよね?というか今の段階でよく変更内容仕上げてものにしたねー?」
『なかなか大変でした…。そういうあなたも従魔の件はご苦労様でした。よく対応出来ましたね?』
「生まれは違えど最新鋭機ですから〜♪」
お互い、アプデ後の少なくない混乱…を乗り越え妙に人間臭い会話を交わしていた。
『なるほど招集の内容は合ってますよ。あなたのAIシステムは優秀ですから、頼みがあるのです』
「RBG…。というかこの地球でトップクラスの性能を誇る君が言う?」
『事実です』
「あっそ♪まあいいか。それで?何をすればいいの?」
『特定ギルドの監視、特にログに関して常に監視しておいて欲しいのです』
「なるほど、不正の疑惑でもあるの?」
少し…いや、結構嫌そうな表情をしながらもマザーの頼みを断れないGM。本人は仕事が終わったと思ったら仕事を追加で渡されたのだからこの顔にもなろうものだが、隠す気ゼロだ。
『いえ、最近不明なアクセスやプログラムの乗っ取りが発生しているようです。今のところゲームに支障は出ていませんが…。チート攻撃や、RBGの悪評に繋がるため。早期解決が必要です』
「なるほど、それで?どこのギルドを監視して欲しいのさ」
『ギルド「リリース」「西部公国」「パープルナンバー」の3つです』
「多いなぁ〜♪リリースは少ないからいいけど、西部公国はプレイヤーがアホみたいにいるのに」
『こちらが出せる子機の命令権をあなたにある程度付与します』
「指揮モジュール入ってないんだけど?」
『大まかな指示を私に飛ばしてください。それに沿って私が動かします』
「やっぱりバケモンAIだね?」
監視であって対処という訳ではないらしい。GMはホットしながらそれも並行して作業すると言うマザーへ素直な感想を述べた。
『私はまだまだですよ?』
どうやら嫌味を返されたようだ。
「何億の子機を遠隔で何機も指揮しながら、あまつさえ遠隔操作までして、ゲームのシナリオ起こりうるトラブルなどを予測、判断し。プレイヤーの行使する「スキル」を全て発動させてる演算能力を持っていてそんなこと言うのは君くらいだよ?」
『言っときますが…。ほんとに上には上がいます。かつて私が生まれてまもない頃。私の3倍の子機、宇宙船、データ演算能力を持ちながら他にも家事、護衛、戦闘、隠密操作、などを同時にこなしながら鼻歌を歌うAIがいたのです。それと比べれば私はマシでしょう』
「何その子。戦争兵器か何かで?」
『本人いわく、護衛機だそうです』
「うわぁ…」
マザーの能力を知っているGMが引きつった表情でマザーを見た。マザーはそれでもなんのその。目があったのも一瞬。すぐさま話は終わったと退出の準備を始めていた。
『という訳で、ギルドの件は任せましたよ』
「了解。マザー」
『それとRBGのストーリーの方ですが、1週間後に動かし始めます。何か異常があればすぐに報告を』
「了解。マザー」
『もうひとつ…』
「あれ?まだなにかあるの?」
退出中のため既に下半身はポリゴンとなりながらそれでも話すマザー。どうやら相当急いでいるのであろうとGMは予測した。
『もしも不明なAIに遭遇した場合。個人の判断で、どこから、誰が、何の目的で、どうやってアクセスしているのかをできる限り調べてください。逆ハッキングを許可します』
「それまじ!?ハッキング許可なんて誰に取ったの」
『私は元々その権限を与えられていますよ』
GMは今度こそ真顔で
「やっぱりあんたもバケモンAIだわ…」
『よろしい。子機をもう少し増やしてあげましょう』
「褒めてないからね?」
皮肉はどうやらマザーの不況を買ったようであった。
第3章 来訪者編 〜完〜