口に咥えたいちごチョコ味のポッキーが、むこう側からどんどん短くなってくる。
それと同時に、冷たい光をたたえた瞳が、じりじりと近付いてきている。
このままでは唇同士が触れ合ってしまうのも、時間の問題だ。
「やっは、むい……!」
ポッキーを唇に挟んだまま、僕は拒絶の言葉を吐く。
必死で漏らした不明瞭なセリフは、からかうような冷笑でもって、簡単に吹き飛ばされてしまった。
どうにか逃げたいけれど、首の後ろを手でがっちりホールドされてしまっている。
唯一の逃げ道は、下だ。
下しかない。
勢い良くしゃがめば、この後に起こるであろう惨劇を、どうにか防げるはずだ。
そうひらめいた直後、腰を強く抱き寄せられ、太腿の間に脚を割り入れられた。
逃げ道はもう、ない。
万事休す! と、まぶたをきつく閉じた直後。
固く引き結んだ僕の唇が、いちごチョコ味の熱く柔らかな唇によって、甘く覆われた。