ここは学園の外れにある旧校舎。
洋館のような出で立ちの旧校舎の空は近づくほど薄暗く、先程まで快晴だったのが嘘のようだ。
どこからともなく聞こえてくるカラスの鳴き声は、この旧校舎の不気味さをさらに際立たせる。
普段はその外観の不気味さからだろうか。一般生徒どころか、教師にいたるまで。
ここに立ち寄る人間は一部を除き、今はほとんど居ないと噂されている。
「おい、そこで何をしている?」
それ
「見慣れない顔だな……
目の前の人物は
「……まさかとは思うが、入部希望者か?」
自分が頷けば、目の前の人物は驚きつつも合点がいったようだった。
「まさか
目の前の人物の言葉に対し、眉間に皺を寄せてささやかな抗議する。
「あぁ、今のは失言だった。すまない」
思ったよりも素直に謝られたことで、自分も怒りの矛を収める。
「それじゃあ、部室に案内するよ。ついてきてくれ」
目の前の人物に促されて、旧校舎の中へと入る。始めて入る旧校舎は、外の不気味な雰囲気とは打って違い、明るく清潔感のある空間が広がっていった。
「外の様子と全然違って、驚いたか?」
正直に答えれば、目の前の人物は口元を緩ませて笑う。
「一般の生徒や教師が寄ってこないよう、普段はちょっとした仕掛けをしてあるんだ。キミみたいなそういう新鮮な反応は、見ていて面白いよ」
階段を登りながらそんな会話をしていれば、目の前の人物は急に自分に問いかけてくる。
「一応、確認ではあるんだが……この部活動の最低入部条件は、ちゃんと理解しているかな?」
その質問に、部活動紹介で貰ったチラシを見せながら頷く。
数日前に行われた、部活動紹介。
その際配られたチラシには、手書きでこう書いてあった。
『普通の人間厳禁!』
『イカれた奴以外は立ち入り禁止!』
『ヘタレもいらん!』
『口が軽い奴もいらん!』
『冷やかしは帰りやがれ!!』
「本当……酷い入部条件だと、我ながら思うよ」
目の前の人物は少し困ったように頬をかくと、何故そうなったのかという理由を話し始める。
「その条件には理由があってさ。君みたいな変わった人間がたまに来るんだけど、大体が冷やかしでね。それにウチの部はほかの部活動とは少し……いや、すまない。冗談を抜きにしても、だいぶ変わっていてね。ヘタレた人間だと直ぐに辞めちゃったり、口が軽いと色々と変な影響がでたりして……そういったことがあって、その酷い最低入部条件ができたんだ」
そう言って目の前の人物は、苦笑いを浮かべた。
「そんなこんなで、普通の人間の感性ではまず
首を横に振れば、目の前の人物は満足気に頷く。
「うん。キミはそうだろうと思ったよ」
何故か確信しているような顔をするこの人物に、心の中で首を傾げながら長い廊下を進む。
「もう少しで我らの部の部室だが、着く前にキミに伝えておきたいことがある。ウチの部が他の部活動と変わってるのは、そのチラシや先程の会話で大体察してくれているだろう。
二階にある長い廊下を進み続け、一番奥から数えて三つ目の部屋で立ち止まる。
教室を示すプレートには、手書きで『イカ部』と書かれていた。
「さぁ、着いたぞ。ココが我らが部活動の本拠地……『イカれた奴等の集まる部』の部室だ」
そう言って、目の前の人物は取ってに手をかける。
「ようこそ、通称『イカ部』へ」