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  Ms.アレクシアのオカルト探偵室

・世界中で起きている超常現象について

  23/12/2012 00:00



 更新しても外部には反映されないようだけど、保存はされてるらしいから記事にしておく。

 世界中で発生してる超自然現象だけど、自分も当初はマヤの予言が実現したのかと驚嘆していた。でも、そこまで盲目的なオカルト信者でもない。懐疑的なほうだと思う。

 だから、すぐにおかしいと感づいた。


 通信状況が不安定だから断片的な情報しか得られないけど、それでもこの大異変のデタラメさが伝わってくる。互いに矛盾する伝説や宗教の奇跡すら全部実現してるらしい。

 YouTubeに投稿されたエルサレムの映像なんて典型的だ。

 あそこは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地で、三つの宗教は一部の教えが重なり一部が異なる。なのに、それぞれに特有の神秘が同時に実体化してるんだもん。

 例えば、ユダヤ教徒のもとにはイエス・キリストではないけど本物の奇跡を起こす来訪者が現れて真の救世主とされてる。なのに、キリスト教徒のもとにはイエス本人と思しき外見と能力を有する者が訪れ主の再臨とされてる。もちろん、イスラム教徒のもとには預言者としてやっぱりイエスらしき人物が現れてる。


 ここアメリカでもそんな調子なんでしょうね。


 自分は外に出てすぐ、セイレムの方角から箒に乗って飛来した魔女たちに襲撃された。

 それはもう典型的なワシ鼻の老婆で、三角帽子と黒衣を纏い、まるでフィクションのような火球や氷柱を発射する魔法で州軍航空隊を一蹴して、こっちにまで攻撃してきた。


 あれほど詳細に観察したいと望んだ超常現象でも、現実になれば恐怖でしかない。彼氏募集中で友達も家族も近くにいないオカルトマニアな変人女一人じゃどうしようもない。

 だから家に逃げ帰って、さっきまで扉や窓に鍵をかけ、カーテンを締めきって田舎町の悲鳴や銃声に怯えながら自室にこもっていた。

 それでも人の温もりが欲しくなって、携帯からふとツイッターを覗いたら、マサチューセッツ州の住民に対して上空を仰ぐよう促す呟きがあった。


 自分がいる地方なわけだけど、「空からクトゥルフ神話の神が来た!」というのだ。


 いかにもおかしいけどこんな状況だもん、これに興味を惹かれた。なにせ、クトゥルフは作家ラヴクラフトによる創作神話、完全に人工物とわかってるからだ。

 引っかかったのは、どうして発言者がそれをクトゥルフ神話の神と断定したかだった。あの作品のそうした存在は、たいてい姿が不明瞭なのだ。

 他の超常現象をそう認識した可能性もあったけど、この目で改めたいと思った。だから勇気を振り絞ってカーテンを開けたのだ。


 そして、そこに完全な空想が実体化していると確信した。


 なぜなら空を舞っていたのは、クトゥルフ神話のニャルラトテップという神だったからだ。どうしてそう言いきれるかといえば、ただのニャルラトテップですらなかったからだ。


 ある漫画家が趣味で描いてイラスト投稿サイトに掲載した描写そのままなのである。

 ジャパニメーションが美少女にアレンジしたものをアメコミの作家が真似たため、なんともブサイクでふざけた造型になってしまったものだ。笑い者になってネット上で騒がれたので憶えてた。


 あんなに緊張感の欠けた化け物もいまい。ここから、今起きてることの正体も想像できた。


 おそらく、これはただの超常現象じゃない。人の頭の中にしか実在してなかった事象が、なんかの原因で現実になってるんじゃないかな?

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