「うまい! うまい! うまいぞおぉおおお!!」
「このようなネズミが都会で売っておるのか……!
何というまろやかさ、それに柔らかい!」
「ほんにその通りじゃ! もはやあの
ここはミツ様の家から少し離れた山であり、アタシたち
そこで彼に調理して頂いた冷凍マウスの天ぷら、から揚げを、みんなが
「アタシも、もう野ネズミは獲らなくていいと言われました。
今後はこちらを購入、差し入れしてくださるとの事なので―――
あ、あと冷凍マウスのお話はもともと、武田様が提案してくださった事です」
「おお、あの方か! 本当に有難い事じゃ」
「この地であのお2人が夫婦になられ、この辺りの
頂ければ……言う事は無いのだが」
次々と希望に満ちた話が飛び出る。それも夢物語ではなく、可能性のある話。
ついこの前まで、ただの
考えられない事だ。
「そういえば長老、アタシと同じく人の姿に化けられる者が出てきたと
聞きましたが……」
「うむ、そうじゃ。化かして
維持出来る者が現れ始めたのじゃ。
これはミツ様や奥方様に触れた事で、妖としての力を取り戻しつつあるに
違いない……!」
「このまま昔のような力を使えるようになれば―――
いずれはあのお2人の子と縁を結ぶ事についても、何の問題もありますまい」
みんなが明るい展望を口にする。
アタシにも女の子が生まれたら嫁に、という話があるので
ないんだけど。
確かに妖の身としてもあのお2人の子なら将来有望だろうし、願ってもない
話というのはわかっている。でもアタシは当初ミツ様のお相手として、
一族代表として送り込まれたのに、何か複雑な気分……と思っていると、
「それにしても、またミツ様の兄上がやらかしたらしいの」
「は、はい。彼が
そこで長老を始め、他の年長者の狐も顔を見合わせ、
「ほんにどうしようもない
「
「そろそろ我らが動くべきか―――」
何やら不穏な空気になっているが、アタシも止める気は無い。
むしろすぐにでもやって欲しいと願っている自分がいる。
他のみんなも同じような空気が形成されつつある中、一陣の風が
舞い込んだ。
「何やら物騒な話をしているようだな」
「……何者!?」
群れの全員がその声に振り返ると、そこには十才くらいの子供が立っていた。
ただその頭には角が二本あり、和風の着物から露出した肌は真っ赤で―――
「山の
どうしてこのような場所へ」
長老以下、全員が身構えるように姿勢を正す。
ただそれは立場の差から来るものではなく、圧倒的な力の差とでもいうべき
圧力に押されてのもの。アタシも気付いた時には両膝をつき、
「何、最近ここらが騒がしくなったと思ってな。
あれだけ
それで……何か変わった事でもあったのか?」
そして、その『鬼』を中心に仲間たちは輪となり、事情を説明する事になった。