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第70話・亮一視点02


「はー……ようやく退院出来たけど参ったぜ」


俺はとぼとぼと夜の街中を歩いていた。


ババアに『あなたは満浩みつひろの家の管理人になったから!』

とか言われ―――商売を始めたのもつかの間、


せっかく俺が斡旋あっせんしてやった合宿の話を、アイツは台無しにしやがった。


おかげで格闘技ジムの連中から逆恨みされるわ、ボコられるわで……

何でアイツは家族に迷惑をかける事しかしねぇんだか。


ババアもババアで、『あなたがお兄ちゃんなんだから!』

『管理人なんだから!』と、事あるごとにまたあの家を利用させようと

してくるが、冗談じゃねえっての。

せめて満浩をちゃんと説得してから来やがれ。


「しかもアイツ、いつの間にか転職しやがってたしよお」


今じゃ連絡も取れやしねえ。

いったいどこまで人に面倒をかければ気が済むのか―――


まあ今回は『てめえがちゃんと満浩に話を通しておかなかったからだ!!』

と、ババアにいくらか払わせたからいいけどよ。


その金は親父の金だろうが知ったこっちゃねえ。

家族の事は家族で責任取らなきゃいけねえよなあ?


「あの満浩バカにもいつか責任は取ってもらうが……

 その前に金策はしておかねぇと」


しかし俺みたいに顔と頭を使う仕事ってのはあまり無いのが問題だ。

20代の頃は女の方から寄って来て、そいつらが金払ってくれた

もんだが―――

さすがに40近くにもなると、そうも言っていられねぇし。


「……ん?」


するといつの間にか、ワンレングスの長髪をした女が俺の目の前に

立っていて―――


「あら、ステキなおじ様♪ ね、私と遊びません?」


見た目は20才そこそこか?

まあ厚化粧したところで、30代前半くらいだろうが。


「あぁん? 小娘がおっさんをからかうんじゃねぇよ。

 それに遊ぶつもりなら高くつくぜ? 安くないんでな、俺は」


美人局つつもたせの可能性も考え、俺は用心しつつ金はそちら持ちだと告げる。


「あら、自分から声をかけておいてそんな事は言わないわ。

 それに同年代だと物足りないのよ、私。


 あなたみたいな、経験豊富なおじ様じゃないと……♪」


水商売系か? それなら金もたんまり持っていそうだな。


「仕方ねぇな。遊んでやるけど後悔するなよ。

 もうガキ相手じゃ満足出来なくなるぞ?」


「頼もしいわぁ♪

 じゃ、どこに行きます?

 おじ様にお任せしますからぁ」


行き先をこちらに任せるって事は―――

ますます『そういう事』ってわけだな。


「ったく。その年で男あさりなんて親が泣くぜ?」


ひどぉい♪

 おじ様だって女を何人も泣かせてきたんじゃないのぉ?」


「あー、それを言われちゃ弱いな」


俺は彼女の肩を抱くと、そのままタクシーを呼んだ。



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