「……そっか。まあ、あまり危険な事はしないでくれ。
ああ、次は金曜の夜だな?
わかった、待っているよ」
会社の定時過ぎの時間に、俺は広間で手元の端末の通話を切り、
テーブルに置く。
「ミツー、今の裕子さんから?」
倉ぼっこ=
「そうだ。金曜の夜にこちらに来るから―――
それとこの前、弥月さんと一緒に怪異を解決したらしい」
俺が伸びをするように天井を見上げると、長い銀髪をした
「裕子様、弥月さんと同じく『人外を狩る』仕事をするように
なったんですよね?
ミツ様はその、そちら側には」
「俺は別に誘われなかったし。
むしろ、裕子さんが乗り気だったのが予想外というか。
でも理由は聞いているだろ?
万が一の時、お前たちの助けになるようにって。
弥月さんのような物分かりの良い人間ならともかく、問答無用なヤツも
いるという話だからなあ」
「僕は基本、家の中から外出してもそれほど外に出なかったから、
あんまりそういう危機感は無いけど。
ただ人間も
黒髪ロングストレートの高校生くらいの少女が、お菓子を食べながら語る。
「そういや銀はどうしているんだ?」
「多分、ミツと一緒だよー」
「今頃は土蔵の二階で、弥月さんと話しているんじゃないでしょうか」
あー、俺が裕子さんから電話を受けているのと同じで―――
「しかし……銀はどうなんだ?
人の恋愛に口を挟むつもりはないけどさ、人間と妖怪って」
俺の質問に、理奈と詩音は顔を見合わせ、
「好きになっちゃったのなら、それはもう仕方ないんじゃないかなー」
「それに、人外と人との恋の話なんて―――
昔からそれなりにありましょう」
確かにそういう類の伝承や民話はたくさんある。
たいていは悲恋話で終わるが……
「俺は特に反対はしないけど、弥月さんの方はどうなんだろう?」
彼女にだって家族はいる。しかも人外を狩る使命を代々継いで来た一族だ。
すんなり話が通るとは思えない。
「確かに騒ぎになりそうだけどねー、ただそういうのって逆効果って事も
考えられるしー」
「その通りです、ミツ様。
障害が多い方が恋は燃え上がるものなのですよ」
2人の話にそういうものか、とうなずき、
「じゃあ俺は夕食の支度をするから、しばらくしたら銀を呼びに
行ってくれ」
「あ、それなら僕も手伝うー」
「ア、アタシも手伝います!
料理が出来たら呼びに行けばいいんですから」
そして俺は人外2人と一緒に台所へ向かった。