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第94話・兄妹喧嘩・04


「たーーーっ!!」


「フンッ!!」


突然始まった弥月兄妹の戦い。

兄の琉絆空るきあさんと妹の加奈かなさんが徒手空拳としゅくうけんで打ち合う。


ただ、彼が最初にここに来た時、妹に一方的にボコボコにされた時とは異なり、

(■4章91話 兄妹喧嘩・01参照)


打撃こそ加奈さんに繰り出さないものの、ほとんど一方的に彼女の攻撃を

さばいていた。


「遅い! 対応も! 攻撃も!」


妹の突きや蹴りを腕で弾き、あるいは防御しながら兄は戦闘の最中さなかに語る。


「止まるな! 退くな! 反撃するチャンスを見つけろ!!」


「実力は確かだから性質たち悪いですわねっ、ホント!!」


加奈さんが距離を取り、汗をぬぐう。


「本当に強いですわ、あの方。ウチの道場でもやり合える人がいるかどうか」


俺の隣りで武術経験者の裕子さんが感心した様子で話す。


琉絆空さんの身長は170cmそこそこ、加奈さんより10cmは高い。

文字通りの男女差だが、それを差し引いても実力差は歴然で―――


すると彼女は胸の前でバッバッバッ、と音を立てるような勢いで

何らかの印を結び、


「……ッ!!」


気合いと共に何かを放つが、彼は動じる事なくその場で片腕を振る。

虫でも追い払うような軽い感覚で、パシッ! と何かを叩くような音が

聞こえた。


「うわ」


「な、何ですのあの方」


「かなり強い霊力だっぺ。それをあっさりと」


理奈、詩音、銀が驚きの声を上げる。

どうやら人外3人組には見えているらしい。


「加奈。実害の無い妖怪を見逃すのはいい。

 人間だって質の悪いヤツはいるしな。


 だが―――恋人が妖怪というのは弥月みつき一族として認められない。

 そして何より……」


みんながその先の言葉を固唾かたずをのんで待っていると、


「お兄ちゃんがそんな事許さないいぃい!!」


「やっぱりかよこのクソ兄貴いぃいい!!」


そして戦闘が再開された―――



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