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第142話・初顔合わせ05


「まあその、何だ。

 自分と舞桜まおさんの仲は認めてくれるって事でいいのか?」


しばらくして落ち着いた頃、琉絆空るきあさんから両親に問いかける。

その隣りには、すでに腕輪を外して元に戻ったぬし様もいた。


「私はお前の年齢の頃にはすでに母さんと結婚していたしな」


「むしろ遅過ぎるくらいですよ、まったく。

 一族の中では特にあなたは素質があるんですから、もしこのまま

 結婚しないつもりならと、他の分家から問い合わせが結構あったん

 ですからね」


武人のような風体の父親と、女子中学生くらいにしか見えない母親は

そろって息子を諭す。


「あー、そういえば親戚のおばちゃんが一時期見合いしろって

 うるさかったよね」


「それにお兄さん、相当の実力者だべなあ。

 そりゃ相手がいないのならと、押し付けてもくるべよ」


妹の加奈さんと川童かわこの銀がうなずく。


「やはり、鬼というのは戦力という事で」


第三者として、俺が疑問を口にする。

その後、問題にはならないのかという言葉は飲み込んだ上で。


弥月みつき一族は使える者は使う主義だ。

 まあ問答無用という連中もいるにはいるがな。


 鬼を戦力として迎え入れる事が出来るのなら、そう問題視は

 されないだろう」


「恋人同士でもありますし、反対するのであれば『それなり』の

 覚悟が必要となるでしょうから」


にこやかに笑うお母さんが、その童顔も相まって怖い。


「では協力者、それに恋仲としても認めて頂けると」


裕子さんが眼鏡を構えて確認するように話し、


「はー……」


「ではこれで一件落着、というところでしょうか」


倉ぼっこの理奈と、野狐やこの詩音も胸をなでおろすが、


「では琉絆空、あなたはこれをお持ちなさい」


そうして母親が出したのは、あの妖力ようりょく封じの腕輪だった。


「ど、どういう事だ母さん。隠橘おきつさんを信用してないのか?」


父親が思わず抗議の声を上げるが、


「鬼ですもの、万が一という事もあります。

 それに恋人というのであれば、彼氏がそれを持っていても

 反対はしないでしょう?」


そこで母親と舞桜さんは視線を交わし、


「アタシは構いません。いずれ夫婦みょうとになるのですから―――

 琉絆空殿、持っていてくださいませ」


「いや、しかし。何もそこまでしなくても」


「別に信用しているのならそんな物……」


俺と銀、男性陣の外野はそれを消極的に見守るが、


「(あー、心の中でガッツポーズきめてる舞桜さんが見えます)」


「(いつでも前の姿になれるっていうのなら、そりゃねえ。

 多分お母さまもそれをわかってて)」


「(今夜からあの腕輪、大活躍でしょうね……)」


裕子、理奈、詩音の女性陣(一人男の娘含む)は『事情』を知っており、

それを知らない男性陣との若干の差があった。




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