「おぉお、これが詩音お姉さまのおにぎり……!!」
「……しかも1人2個ずつとは……
ワタシたちがお店に入った時点でも、お客さん10人ほどいたし……
前後を考えても、4,50個ほどは握った事に……!」
メイド喫茶からの帰り道―――
取り出し、そのサランラップで包まれたおにぎりを
かくいう私、
あのお姉さま(男だけど)がその手で握ったと思われるそれを手にして
ドキドキしている。
おにぎりというのがまた男料理っぽく、あの美人な詩音さんの外見との
ギャップを思わせ―――
「(……でも、相変わらず詩音さんにあったあの耳としっぽ……
2人、いや他の人にも見えていないみたいだったけど……)」
これを水樹ちゃん、一花ちゃんに話すべきかどうか迷っていると、
「よお、お嬢ちゃんたち♪ 今帰りかい?」
ふと、下品そうな男の声が聞こえ3人で振り向くと、180cmはありそうな
長身のおじさんが、気持ち悪い笑顔をこちらに向けていた。
水樹ちゃんはその細目を歪ませ、一花ちゃんも普段ジト目になっている目から
光を失わせている。
その男の年齢に似合わない金髪も、その下品さに拍車をかけていて、
「はい、もう帰るところですが」
「あぁ~ん? 何ぃ~その迷惑そうな目は?
俺、何か迷惑かけたっけぇ~?」
私たちの通う学校は共学ながらも、みんな男に免疫が無く―――
一番元気いっぱいだった水樹ちゃんはすでに足が震えている。
助けを呼ぼうにもすでに午後10時を回っていて、駅から遠い事もあり
人通りもまばらで……
「なぁにキョロキョロしているんだよ?
あ、もしかして大声でも出そうとしてる?
それこそ近所迷惑じゃないのかなぁ~?」
私たちはそのおじさんと一定距離を取っているが、ジリジリと
狭い路地裏に追いやられ―――
いつ迫って来るかわからず、涙目になる。
「あ~あ、そういう目で見られたら傷付いちゃうな、お兄さん。
お詫びにちょっと付き合ってもらおっかな?」
と、腕を伸ばして来て、もうダメだと思った瞬間、
「あら、3人いっぺんなんて欲張りね♪
でも相手が違うんじゃないかしら?」
その男の腕を、いつの間にか女性がつかんでいて、
「お姉さま!?」
「詩音お姉さまー!!」
そこに現れたのは、あの詩音お姉さまだった。