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ステハジ

 6月の昼下がりの喫茶店である。結子ゆうこ光雄みつおがコーヒーを飲みながら、何やら神妙な顔をして話し込んでいる。


「・・・・・・というわけだから」


「ねえ、“ステハジ”って言葉知ってる?」


 結子が光雄に尋ねる。


「知らない。なにそれ」


「“使い捨ては恥ずかしい”ってことよ」


「ふうん。たとえば?」


「いま世界で一番の問題は『海洋プラスチック問題』ね」


「ああ、聞いたことがあるよ。海に捨てられたごみ袋とかを、魚が食べちゃうって話だろう」


「そうそう」


「でもある程度は仕方がないんじゃないか」


「そういう気持ちがそもそもいけないのよ。光雄、世界中で一年間にプラスチックゴミがどれだけ海に流出していると思う?」


「どれぐらいって・・・・・・見当もつかないけどさ」


「8百万トンよ」


「それってどのぐらい」


「ジャンボジェット機で5万機分ね」


「5万機!そりゃ尋常じんじょうじゃないな。でも、それって主に後進国から出るゴミじゃないのか」


「残念でした。日本はプラスチックゴミの流出で世界第2位なんだって」


「ううん。めちゃくちゃ不名誉な順位だな」


「でしょう。このままだと2025年には海洋ゴミが、魚の数を上回ることになるんだって。だからエコバッグは必需品なの」


「プラスチックのストローとかスプーンも考えないとな」


「あ、それから食品ロスと衣類ロスね。そういうものをわたし達は平気で捨ててるけど、世界では困っているひとがたくさんいるのよ」


 光雄は腕組みをして考える。


「なるほど、とにかくゴミを減らさないといけないんだな」


「やっと分かったみたいね。だから、わたしを捨てようなんて話し、金輪際こんりんざいくちにしたらだめだからね」


「ちょっと待て。それとこれとは・・・・・・」

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