「お、俺のせいって、全く身に覚えがないんですが、俺が一体何をしたっていうんですか?」
俺は弁明したが、1ミリたりとも
「身に覚えがないですって? 知らないで済んだら警察はいらないのよ!!!
でもいいわ。そうね。そうかもしれないわね。貴方は気づいていなかっただけかもしれないわね。それじゃあ何があったかちゃんと説明してあげる。
それは私が数週間前、この温泉旅館を訪れたときのことよ───」
~ 数週間前 ~
「あ、ああ…! ああああああぁ~っ!!」
私こと
「み、見事だわ。なんという温泉なの。まさにこれこそが秘湯───それも秘湯中の秘湯だわ。全温泉愛好家が感動の涙に溺れるでしょう」
私はさっそく掛け湯をして、温泉に浴かったわ。
「湯温は39.3……いえ、39.2度ね。温泉としては高めだけど、源泉かけ流しとしては低温ね。
泉質は炭酸水素塩泉、それに含鉄泉と含よう素泉も少々…。
それなら冷え性、皮膚病に効果があり、飲めば鉄欠乏性貧血症や高コレステロール血症の改善が期待できるわね」
私は肩までどっぷり温泉に
そして時を忘れてただただ温泉と一体となって時間を過ごしたの。
───どれくらいの時が過ぎたかしら。
ようやく満足した私は温泉からあがるべく、岩場に足を掛けた。
すると、その時、異変を察知したの。
───誰かが脱衣所にいる!?
「え? ええっ? うそ、誰? 宿のお婆さん?」
そう思ったけど私は一旦、身を隠すことにしたわ。
するとひとりの男が温泉に入ってきたの。
「ちょっ───! 男の人がなんで!? あとヤダ! すっぽんぽん! 堂々とさらけださないで! ちょっとは遠慮しなさいよ!」
私は身を小さくして岩陰に潜んだわ。
その男はひとしきり温泉のロケーションに感動した後、生意気にも温泉を分析し始めたわ。
「湯温は39.2……いや、39.3度か。温泉としては高めだが───」
何言ってるの、素人ね。お湯の温度は39.2度よ。
そんなことも見抜けないなんて一流の温泉愛好家とは言えないわね。
それよりいつまで
私も早く上がりたいのに、このままじゃのぼせてしまうじゃない……!
ようやくその男が温泉を出たので、私も岩陰から出られたけど、残念ながらそこから先の記憶がないの。
おそらくのぼせて倒れてしまったのね。
そして気が付いたらこうなっていたのよ。
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【後書き】
私の小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。
いやー、有真くん。無自覚にやってしまいましたね~。
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