三軍男子の
亜矢と
なぜ、本来なら撮影にチカラを注ぐはずの我らが映文研のメンバーがステージに登壇することになったかというと、ハルカとカリンのふたりが、飛び入りに近いカタチで舞台に立ったという事実を知った
「アイツらが参加できるなら、俺たちにも舞台に立つ権利はあるよな」
と、持ち前の傍若無人さで実行委員会のメンバーに直談判し、ほぼゴリ押しで参加の権利を勝ち取ってきたからだ。
「あんなやり方で他人をあおる人間と、それを黙認して舞台に立つオトコの
そう言って不敵に笑いながら、声をかけた映文研副部長に対して、
「え〜、ボクたちも出るんですか〜?」
「副部長、ひとりで行ってきてくださいよ〜」
と、上級生の無理強いに付き合わされることになった下級生たちは不満の声をあげたが、
「良く言ったよ、高須! 一発ブチかまして来てよ! なにするか知らんけど……(笑)」
「うん! 映文研のみんな、期待してるよ!」
と、
「まあ、先輩たちがそう言うなら……」
「仕方ないですね〜」
悲しい男の
ここまでが、
「樋ノ口さんは、三脚にカメラを固定して、なるべくステージ全体が映るように撮影してくれる?」
と、指示をだして撮影の準備に入った。
「ねぇ、高須くんたちは、どんなことをするの?」
表情に明るさの戻った亜矢がたずねてくる。
「あんまりハードルをあげるべきじゃないけど……まぁ、期待して見ていてくれ。上手くいけば、あのふたりの歌も、オレの付け焼き刃な歌も吹っ飛ばすくらいのパフォーマンスを見せてくれるハズだ」
歌唱が始まる前から、ステージのセンターに立つ
♪ このブギーがマジだってわかるだろ?
歌詞が始まると、
♪ 俺は神への信仰で救われていた
♪ だけどそうしたら天国へ行くチャンスを逃してしまった
♪ 俺は未来を心配していた
♪ だけど今は全然ビビっちゃいない
ここまで、センターの
ダンサーが三人に増えたことで、それまで呆然と見ていただけのギャラリーから、期せずして、拍手が湧き始めた。
♪ こんなにお気楽でいられるわけなかった、無理、無理、無理
♪ 街の向こう側に出かけるまではね、そう、そう、そう
観客の盛り上がりにあわせるように、三年と二年のメンバーの後ろに控えていた一年生部員の
♪ つまり、俺はあのブギーのリズムを聴いたってことさ
♪ そう! 踊らずにはいられなくなったんだ
いよいよ、楽曲が一番盛り上がる部分に差し掛かり、センターの
♪ Dance! 俺にはおどることしかできないんだ
ダンス! の歌声に合わせ、五人は大きく飛び跳ねて、見事な
ビーチに集まっているギャラリーのボルテージは、最高潮だ。
彼らは、拍手や歓声だけでなく、指笛の音も混じりながら、映文研のダンスを盛上てくれている。
♪ 上手くいかないこともダンスでやり過ごしてやる
♪ 今夜、弾けそうな熱をかかとに感じているんだ、ベイビー
ワンコーラスを踊り終えると、舞台の中央で激しい動きを見せていた
「飛び入りで参加させてもらって申し訳ない。楽しんでもらえたなら本望だ。Thank You!」
と言ったあと、バックに控えるメンバーとともに、五人揃って深々とお辞儀をして、舞台から降りてきた。
彼らの予想外のパフォーマンスに、ビーチでは、拍手が鳴り止まない。
「学祭本番では、フル・バージョン期待してるぞ!」
観客の中からは、そんな声まで聞こえてきた。
「いや〜、マジでビビったわ……映文研って、どこで、こんなスキル身につけたん?」
オレが、ビデオカメラの録画停止ボタンを押したことを確認したのか、すぐそばでは、
そんな、クラスメートの質問に答える。
「あぁ、うちの部員全員で観た昔の映画のダンスシーンに影響を受けてな……ダンス動画を撮影するために、練習してたんだよ」
そのダンスシーンとは、映画ファンからは、《映画史上最悪の日本語タイトル》と
「このシーンを超える動画を作ろうぜ!」
と、熱く燃え上がった映文研メンバーが考案した振り付けに、
「部長は、撮影係としてがんばって下さい」
と、事実上の戦力外通告を受けたことは、どうか広言しないでほしい。
そんなことを考えながら、