さて、話は戻って御神体のある村を出る時の話。
「リカード、元気にやってるか?」
「とーちゃん!?」
村にやってきた冒険者の一人がリカードに声をかけると、リカードは驚いたようにそう叫んだ。
「おう、でかく……はなってねえが元気そうだな。フランツ、おめえもしっかりやってるみてえだな」
「はい。まさか、交代の冒険者がジョルジュさんだとは思いませんでした」
冒険者はフランツにも気さくに声を掛ける。
リカードの父親ということだし、フランツとも面識があるのだろう。
「危険な冒険ばっかり選んでる変態おじさんがこんな依頼を受けるなんてびっくりだね」
「レイ。おめえは相変わらず、生意気だな」
レイの暴言に対してもさらっと受け流すのは大人の余裕だろうか。
「はじめまして。今、リカードやフランツ、レイと一緒に冒険をしているタカヒロです」
「ああ、直接会うのは初めてだったな。こいつらが世話になってる。感謝してるぞ」
私の挨拶にそう返してくるジョルジュさん。
リカードから私の話を聞いていたのだろうか。
「とーちゃん、なんでにーちゃんのこと知ってるの?」
「え? なんで俺がこの人のことを知っているんだ。知らねーよ?」
「今、直接会うのはって言ったじゃない。それって知ってたんじゃないの?」
「レイ、おめえは相変わらず鋭いな」
リカードの疑問にジョルジュさんはとぼけるが、レイがさらに追求する。
「……ジョルジュさん、どうなんですか?」
「いや、まあ、ちょびっとだけ知ってるような、知らないような……」
フランツが静かに、しかし有無言わさぬ口調で確認する。
それに対し、しどろもどろになってしまうジョルジュさん。
どうも、なにか隠しているらしい。
「まあまあ。神殿で話を聞いたとか、そういうことじゃないかな?」
「そうそう、そうなんだよ。かわいいリカードが魔物に不意打ちされて無事だったかを確認するのは親父として当然だろ?」
私が助け舟を出すと、ジョルジュさんが渡りに船とばかりに乗ってくる。
しかし、魔物に不意打ちされて?
「リカードが魔物に不意打ちされてどういうこと?」
案の定、レイがそこの部分を突っ込む。
「え? ほら、冒険者やってたら魔物に襲われるなんて日常茶飯事だろ?」
「それはそうですが、なぜ不意打ちされたとことをご存知なんですか?」
ジョルジュさんがなんとか言い返すが、フランツもさらに追求する。
そんな時、ジョルジュさんと一緒に来ていたらしい猫又族の少年が全力で走ってくる。
そして、おもむろに私達の前で土下座をするのだった。