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第41話 勝つ方法


Y社運営部。


モニターの前で、Y社社長が不思議そうな表情を浮かべ、運営部長に尋ねた。

「トップページのメイン配信の同接数が減っているようだが、どういうことだ? …システムの不具合か、それとも…T社がまた何か仕掛けてきたか?」

「社長、どちらでもありません」


運営部長は素早くデータを表示しながら説明を始めた。

「視聴者がランキング2位の個人チャンネルに流れていたようで…」

「なんだと? 2位って誰だ」

「宮本次郎という探索者です。彼の配信の同接数はすでにフライヤーやイリスを超えており、間もなく100万人を突破しそうです」


運営部長が答えている間に、モニターには宮本の配信画面が映し出された。

画面右側にはリアルタイムの視聴データが驚異的な速度で増加している様子が表示されていた。

同接数:367,788...452,113...667,759...781,132...900,188...


社長は目を大きく見開き、画面をじっと見つめた。

そこには、威厳を放つ黒竜と、全身が血まみれ(モンスターの血液で)になりながら、片手でハンマーを握り、山腹に立つ宮本の姿が映し出されていた。


(ウェイスグロ最強のX級モンスターが現れたのか…!なるほど、だからこうなったのか!)

(しかし、この男…一人でここまで戦い抜いたなんて、どうやったんだ?こんなこと、普通じゃ考えられん…)

(絵里…お前はとんでもない男を契約したんだな)

(これは、我々Y社がT社を超える絶好のチャンスだ。この機会を逃すわけにはいかん)


社長が内心驚きながらも冷静に考えを巡らせている中、運営部長が勘違いした提案をしてきた。

「このチャンネルを制限したほうが良いでしょうか?」

「馬鹿者、そんなことするわけがあるか。彼は我々が押し上げるべき未来のトップ配信者だ」

社長は運営部長を鋭い目つきで睨みつけた。


「今すぐ、宮本と黒竜の戦いが終わるまで、我々のすべてのPRを彼の配信画面に切り替えろ。君には15分与える。どんな手段を使っても構わん。宮本の同接数を200万人まで引き上げろ」

「ですが…他のチャンネルに大きな影響が出る可能性が…」と運営部長が慎重に指摘した。

「それは許容できる損失だ。トップ配信者の誕生には、ただの積み重ねだけではなく、決定的な契機が必要。今がその絶好の機会だ。こんなチャンス、二度と訪れないかもしれん」


その断固たる口調に、運営部長は何度も頷きながら命令の実行に取り掛かった。


________________________________________


聖ゴリル山の山腹。

黒竜がドラゴンブレスで宮本を仕留められないと悟ると、その怒りは頂点に達した。巨大な翼を広げ、空を覆い隠しながら猛スピードで急降下してきた。

「待ってたぜ!」


その瞬間、宮本はハンマーを仕舞い込んでいた。

先ほどまでの戦いでモンスターを倒し続け、さらに3度のドラゴンブレスをハンマーで耐えたことで、体内の雷霆の力はほとんど枯渇し、短時間での回復は望めない。


代わりに、彼は空間リングから全長2メートルの銀色の刀を2本取り出した。

それは嵐の雷竜の口から取られた最も鋭利な牙の一対であり、根元部分には宮本が片手で握れるように凹みを削り出していた。


伝説級モンスター素材を使用していることが露見して面倒を引き起こすのを恐れ、宮本は専門家に頼んで神器に仕上げることはせず、あえて素材そのままの状態で使用するよう軽く改造しただけだった。


竜牙双刃りゅうがそうじんを手にした宮本は、わずかに身体を前傾させ、左足を前に、右足を後ろに引き、弓歩の突進体勢を取った。

その気迫は頂点に達し、かつてない威圧感を放っていた。

この圧に圧倒され、黒竜でさえ一瞬瞳孔が縮んだ。


もしこの場にダンジョンの意志が働いていなければ、黒竜の知性をもってすれば、宮本の恐るべき気迫を感じた時点で、ただ突撃するような愚かな行動は取らず、より理性的な遠距離攻撃を選択しただろう。



が……



ギャーン!

宮本の双刃が斜めに交差し、黒竜の爪と激突した。


その圧倒的な体格差のせいで、宮本の身体は吹き飛ばされ、足元で地面を削りながら100メートル以上引きずられてようやく止まった。

一方、黒竜の爪にも浅い白い傷が2本刻まれていた。防御を貫通することはなかったものの、黒竜の最も堅い部分に傷をつけるだけでも、その実力を示していた。


見た目には宮本が押し戻されたように見えるが、力の観点から見れば互角と言える。

千メートル上空から急降下し、巨大な体格を活かした黒竜の攻撃に、どんな強者でも真正面から耐えることはできないはずだ。


しかし、宮本はそれを成し遂げ、しかも無傷だった。


一撃で仕留められなかった黒竜は、その巨体にもかかわらず恐ろしい機動性を発揮し、爪で引き裂こうとし、口で飲み込もうとし、尾で薙ぎ払うなど、宮本と十数回もの激しい接近戦を繰り広げた。


遠距離戦の撃ち合いとは異なり、このような小さな者が大きな者に挑む力と力の激突は、視聴者たちの興奮を極限まで引き上げた。


宮本の配信コメント欄は次々と飛び交うコメントで埋め尽くされていく。


:(投げ銭1000円)宮本おじさんの持ってるものって何?秘密兵器?

:(投げ銭3000円)双剣!?かっこいい…!

:(投げ銭1000円)体格差が50倍以上あるのに、黒竜に負けてないのマジで意味わからん…すごすぎ!

:見てるこっちが緊張するんだけど…!

:ウェイスグロのX級モンスターに狙われて、もう終わりかと思ったけど、まさか互角とは…!

:(投げ銭5000円)こういう力のぶつかり合い最高!興奮して眠れない!

:黒竜、内心どう思ってるんだろ?人間相手にここまで互角ってw

:これ、宮本おじさんもしかしてDelta級なの?モンスター化してないのは何で?

:探索者になったばかりだって言ってたし、モンスター化はまだじゃない?遺伝子融合が必要なんだよね。

:(投げ銭80000円)頑張って!!勝ったらDM見てね♡


激戦を続ける宮本は、黒竜の防御力に苦しめられていた。

竜牙双刃でなんとか鱗を貫いたものの、小さな傷口を作り、数滴の血を流させるのが精一杯だった。

このペースでは、いくら戦い続けても黒竜を討つことは不可能だろう。


(もっと強力な力が必要だ…!)

(この黒竜を一刀両断にできる爆発的な力が…!)


宮本はかつて独自に編み出した仙人スキルを思い返していた。

(…ならば、モンスター化の能力も自分で開発できるはずだ)


モンスター化した遺伝子解放者の力は、何千何万倍も倍増すると言われる。

モンスター化が成功すれば、この防御を突破できるかもしれない。


宮本は、絵里が送ってきた称号試験の資料の中にあった「遺伝子解放者」の詳細を思い出していた。

これにより宮本は、五段階に分かれた遺伝子ロックのそれぞれが持つ能力を明確に理解していた。


モンスター化の条件は、まず遺伝子ロックを四段階まで解除すること。

そして、モンスターの遺伝子を取り込んで融合すること。


実際、宮本はこの二つの条件を既に満たしていたが、自分ではそれに気づいていなかっただけだった。


今、この黒竜の防御を突破するために、宮本はモンスター化の必要性を強く意識し始めた。

そして、彼は試み始めた…。



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