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第106話 スキル定着スクロールの行方:ドン・ロドリゴ編

「ようみんな!来てくれたな!俺だ!戦うコックさん、ドン・ロドリゴだ!」

 ダンジョン食材を使用した料理配信で人気のダンVtuber、ドン・ロドリゴの配信が始まった。


 使うスキルは料理のみで、ダメージ蓄積により、上層と中層の魔物を倒し、倒した魔物のドロップ品や、ダンジョン食材を使って料理をするという、なかなかに尖ったチャンネルである。


 極めることで料理のスキルを攻撃に至るまでにしたが、あくまでも料理スキルは料理スキル。一撃の火力は近接職スキルには遠く及ばない。


 その為防御力の高い下層以上には通用しないが、それでも中層までの魔物を料理スキルで倒せるのだから、視聴者としは面白いエンタメのひとつとして受け止められている。


「今日は大量のスキル定着スクロールが売りに出されたことで、俺もいくつか〜んん、ゲットしてみたんだな!」


 口癖の「〜んん。」を言いながら、ドン・ロドリゴは画面に語りかける。今日は狩りの最後の料理配信にゲストが登場するとのことで、リスナーも楽しみにしている。


「今日はそのスキルを使って狩りをしてみようってわけだな!手に入れたスキルは、まず探知に、気配察知。これで隠れている魔物を先に、襲えるようになるぜえ!」


 ビシ!と草むらを指さしながら言う。そこに魔物が潜んでいたわけではないが。

「次に腕力強化、筋力強化、HP強化だな!俺の料理スキルでの攻撃を補う為と、地形ダメージを気にしない為だな!」


:どれもお安めのスキルばっかだな

:例のあれで売り出されたスキルか

:身体強化にしなかったんだな

:馬鹿、あれはそれなりに高いだろ


「ああ、そうなんだ。ハズレスキルと言われるこれらだが──組み合せればそれなりの効果を発揮するっていうところを、見せたいと思ってな!マイナスの効果が発動する可能性を考えて、スキルは絞らせてもらった。」


 ドン・ロドリゴはカメラを目の前の鉄製で出来ているらしき門に向ける。

「今日俺は!中層のボスに初めて挑もうと思う!ターゲットはロック鳥だ!」


:ドン、ソロだろ?近接で飛ぶ魔物はきつくないか?

:今まで対戦したことのない魔物楽しみ

:がんばれ!ドン!


「ああ!頑張るさ!応援してくれ!」

 そう言って、ドン・ロドリゴは鉄の扉を両腕で押して開いた。


 ここは草むらステージだが、足元の地面が毒を含んでいる毒ステージでもある。ドン・ロドリゴも耐性は持っているが、もともとのステータスがそんなに高くない為、じわじわとHPが減ってしまう。


 それを気にせずに戦えるというだけでも、HP強化はありがたかったし、一時的にHPステータスを1.5倍に引き上げられる為、普段よりも攻撃を受けた際のHPの減りを気にしなくて良いところも良かった。


 ロック鳥はその名の通り岩山の上のほうに巣を作って住んでいる。そこにたどり着くまでに、毒の地面を歩いたが、普通の平地のように気にせず歩くことが出来た。


 ぬかるんだ土地は、靴の隙間から毒を肌に触れさせてくる為、この地に生息する魔物や植物は、それを気にしない毒持ちか、ロック鳥のように岩山に暮らしていて日頃地上に降りてこないかのいずれかだ。


 ドン・ロドリゴは岩山に手をかけて登り始めた。するとドン・ロドリゴに気が付いたロック鳥たちが、巣から遠ざける為に、番の2体で一斉に羽ばたいて襲ってきた。


 ドン・ロドリゴは岩山の一部の平坦に突き出た場所に着地すると、巨大なロック鳥たちを迎え撃つため、包丁を取り出して構えた。その様子をドローンが撮影している。


「クエエエエエエーッ!」

 ひと鳴きして一斉に襲いかかってくるロック鳥を、腕力強化と筋力強化で薙ぎ払った。


 包丁一振りで首が切り落とされ、墜落していくロック鳥。

「これは〜んん!期待以上だぜ!」


:身体強化じゃなくても、腕力強化と筋力強化であんだけ強くなれんのか!

:力の使い方をわかっているドンだからだな

:身体強化は全身を爆上げするけど、それが部分的に発動してる感じか

:でも身体強化と違って、部分的に強化するせいで反動がくるんだろ?


「そうだな!試してみたが、ちょっと強めの筋肉痛に後日見舞われるな!なに、俺が使い方をマスターすれば、それも軽くなるさ!」


 もう1体も難なく倒すと、岩山を登ってロック鳥の巣から巨大な卵を手に入れた。下に降りて頭を落とされたロック鳥も回収する。


 それからダンジョンの中の安全地帯と呼ばれる場所に向かうと、ゲストを紹介した。

「紹介しよう!今日のゲストだ!俺にスキルを譲ってくれた、剣呑寺いおりさんだ!」


「こんいお〜!剣呑寺いおりです!よ、よろしくお願いします……。今日はロドリゴさんの料理を食べる為だけに呼ばれました。」


:ゲストでいるなら名前出しても良かったのかw

:シークレットゲストっていおりんか!


「それじゃあ早速料理していくぜえ!今日はロック鳥の親子丼だ!

 ダンシ〜ングタ〜イム!」


 ドン・ロドリゴは料理する時間をダンスタイムと表現している。実際3Dモデルで踊るように料理をするドン・ロドリゴの姿は、リスナーたちに人気の演出である。


 ドン・ロドリゴはもともと調理師免許持ちだが、普通の料理人になるよりも、ダンジョン食材を料理して配信する配信者に憧れた。


 探索者をやっているのは、食材を自分で調達したほうが安いからである。

 あっという間にロック鳥の親子丼が完成し、カメラに映し出された途端、コメント欄は食べたいで溢れていた。


「さあどうぞ!マドモアゼル。」

「い、いただきます……。んっ!美味ひい!ちょこさんに恨まれちゃいますね!」


 柔らかく唇で切れるかのような鶏肉を、甘いタレとそれが染み込んだ卵が包んでいる。正直熱々のご飯に染み込んだタレと卵だけで何杯でも食べれそうだなと美織は思う。


「私ほんとに食べるだけでいいんでしょうか?正直何もしていないんですけど……。」

 と落ち着かなそうに美織が言う。


「スキル定着スクロールは滅多に売りに出ないものだからな。売りに出してくれたお礼と言ったところさ。コラボも出来たことだし、楽しんでくれよ。料理を振る舞うコラボはたまにしているのさ。」


瀬戸内ミリー:ずるい……。私もドンさまとコラボしたい……。

:出たwミリーw

:ネタ強め配信者には必ず湧いて出る獣w


「おっ。するかい?俺は構わないぜ?」

 と笑うドン・ロドリゴ。


獄寺ちょこ:お土産期待してるから。

:ちょこタンwww

:見てたwww

:そりゃ食べたいよなw


 獄寺ちょこのコメントに、ドン・ロドリゴが親子丼の残りを、マジックバッグに用意していたタッパーに詰めてくれることになり、恐縮しつつ赤面しながら、美織はそれを受け取ったのだった。


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スキル【海】ってなんですか?

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