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第28話 付き合ってから初めてのデート

 野菜動物園は、札幌の郊外にある。野菜達がたくさん飼われている場所で、マイケルが運営者だ。


 トマトは水々しくて鍋にしたら美味しそう。とうもろこしはつぶつぶしていて鍋に入れたら食べるのが大変そう。


 きちんと管理されてるので、清潔だ。とはいえ、野菜が飼われているのがコンセプトなので、野菜人権家には入れない所だ。


 そこに今日向かう予定なのだが……


「やっべ、すこし遅れたかもしれない。せっかく付き合い始めで大事な時に遅刻なんて許されない。急がなければ!」


(正式に付き合うことになってから初めてのデートです! 私はこの時をずっと待っていました)


 集合場所にはすでに五月が満面の笑みを浮かべながら待っていた。見た感じ怒ってはなさそうだ。


 俺は瞬時に平静を装って、五月に接触を図った。


(ていうかこの流れは一樹くんが『待った?』と言う流れなのでは?)


「ごめーん。待った?」


(やっぱりキタキタキタァ!)


「いえいえぜんぜ……すっごく待ちました」


 な、なんだと!?


 んなアホな、俺もしかして遅刻したのか? それとも時間間違えた!?


「あれ、時間通りだ……」


 腕時計は集合時刻五分前を指している。これは一体……


「今日がくるの、ずっと待ち遠しかったので……」


 瞬間、俺の理性が吹き飛ぶ音がした。ついでに後ろの茂みから歓声と嘆声が聞こえてくる。


「なるほどね。全く、可愛い奴め」



         ◇



「今日は俺の運転で野菜動物園に行く予定だけど、昼ごはんはどこでしよっか?」


「あっ、私。お弁当作ってきたのですが、よかったらお食べになりませんか?」


 五月の手料理……だと!


 即断即決、今日の昼ごはんは五月のお弁当をありがたく頂戴することにした。


「芽衣のお弁当毎日作ってた成果がここで活かされるとは」


 メイ……? どっかで聞いたことあるような……? まあいっか。

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