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第68話……ヴェロヴェマ帰れず!?

 R国の原子力潜水艦が海溝深くで事故を起こした地球は混乱していた。


 深海海溝部にての連鎖爆発であったため、籠った力は地球のプレートに直接激しい圧力をかけた。

 そのため、その圧力を受けた地殻に連動して、世界各地の火山が一斉に噴火した。


 火山活動による噴煙は、成層圏まで浸透し広く大気圏に拡がる。

 微細な粒子を核にして、雲がたくさん産まれ、大地に多くの雨を降らせた。


 一方で、毎日積乱雲による雷雨が押し寄せるために日射量は極端に減り、地球の平均的な気温は低下。

 今までの温暖化が嘘のように、毎日肌寒い日が続いた。



 日照不足により農作物は高騰。

 世界的な飢餓も予感させる。


 太陽光発電を始めとするクリーンな発電は上手く稼働せず、電力不足が世界を覆った。


 事故が事故だけに先進各国は原子力にエネルギーを求めることができず、化石燃料発電により一層の負荷がかかり電力不足は加速。



 世界的な世論の圧力に抗しきれないR国は、新進の経済大国であるC国とより強力な軍事同盟を締結。

 覇権国A国との陣営と再び冷戦の様相を呈する。


 過去の冷戦と違うのは、C国に経済的に依存している先進各国が、全面的にはA国に加担しないということだった。


 世界情勢は不透明感を強め、資源や食料価格は高騰の一途をたどっていた。


 ……特に化石燃料資源に乏しいN国は深刻な電力不足に陥っていた。





「……という訳でな、カズヤ! 先日から電力は配給制になったんだ!」


「大変なんだね……」


「他人事じゃないぞ! VRゲーム関連に対しては電力配分が全くないんだ!」


「ええ! なんで?」


「必要不可欠な分野じゃないからだってよ」




 ……。


 私はもうしばらく、現実世界には戻れそうになかった。




☆★☆★☆



 ハンニバルは辺境連合国家の盟主格のレオナルド王国に来ていた。


 実はレオナルド王国の政府より、用事があるとのことで呼ばれていたのだ。



 辺境連合国家は現在、カリバーン帝国の従属勢力である。

 その辺境連合国家への帝国側駐在首席武官が私だったのだ。


 ……それを忘れるほどに、現在の帝国中央政府はこの地への興味が無くなっていたのだ。




「ヨウコソお越シ下サレタ!」


「ご用命とあらば、なんなりと!」


 レオナルド王国の重臣たちが列席する中。

 私は左手を胸に当て膝をつき、レオナルド王国のアメーリア女王に敬意を表す。



「其方ヲ我ガ王国ノ、軍事顧問ニ据エヨウト思ウ……」


「……有難き仰せ、恐悦至極に存じまする」


「ウム、デハ其方ニ相応シイ地位ヲ与エヨウ!」


「ははっ!」


 恰幅の良いタコ型の大臣が進み出て、詔を読み上げる。



「ヴェロヴェマ殿、其方ヲ、レオナルド王国軍准将ニ任ズル!」


「ははっ」


 赤いカーペットの上で、大臣より詔書と印璽を受け取る。

 さらにこの職位は、年25万帝国ドル(年収2500万円相当)の俸給付きだった。



 お給料キタ!!

 ……と、貧乏性の私が喜んだのは言うまでも無かった。


 お仕事の内容は、新設するレオナルド王国宇宙軍の艦隊の計画立案。

 ……いわば、お金を払ってもやりたいようなお仕事だった。




☆★☆★☆


 その後、女王様たちと会食。


 女王様は若い女性のお姿である。

 さらに言えば、いつも薄布を纏っただけの服装で、相変わらず目のやり場に困るようなお姿である。


 それに対して、大臣の方々はタコ型星人。

 ここはタコ星人さん達の星なのだ。

 いつ訪れても、女王様と臣民たちの姿のギャップが凄い。


 ……そもそも、この女王様は人間なのだろうか?



 クリームヒルトさんも副官として同席し、今後のことで意見交換を行いながら、女王様たちと楽しく食事をした。




――食事後、ハンニバルの艦橋。



「提督!」


「なんでしょう?」


「提督はああいう服装がお好みなのですか?」


「……え?え?」


 ひょっとして、私の脳内の思考が読まれたのか??

 なにはともあれ、メチャメチャ焦った一幕であった。




☆★☆★☆


「砲撃力が足らないポコね!」

「接近戦に弱いメェ!」


 艦橋にて一人、レオナルド王国宇宙軍の艦船設計図をひいていたら、幕僚たちが覗き込んでくる。



「じゃあどうしたらいいの?」


「大口径レーザー砲をたくさん載せるポコ!」

「強襲上陸艇も載せるメェ!」


 皆に設計ツールを弄らせたら、



【予算オーバーです!!】


 エラーメッセージがでた。

 彼等は優秀な戦術スタッフだが、やはりバランス感覚に欠けるな。


 ………………。

 …………。

 ……。


(二時間後)



【予算オーバーです!!】


 ……自分もだった。




 仕方なく、砲撃力を抑え目にして、ある程度の耐久力や抗堪性(こうたんせい)を優先することにした。

 この星系とカリバーン帝国の間は、巨大アメーバなどが棲む危険宙域があるためだ。



――現行にて生産する艦艇は8隻。


 汎用性を持たせるために、砲塔型のレーザービーム砲を選択する。

 ターレットなどの部品点数は多くなるが、固定砲は艦が少数では使いにくかったのだ。


 多目的VLSは16セルを艦体内に4基搭載。


 他にも対空用に機銃座も4つ備えた180m級の核融合炉型の戦闘艦とした。


 大気圏突入可能で、水上停泊可能型。




 ……ここからが、もっとも大切なのだが。


 製造受注について、ハンニバル開発公社惑星ベル工場を推薦しておいた。




☆★☆★☆


〇ヴェロヴェマ君の給与所得


カリバーン帝国軍年金(予備役手当含む)

……年2万4000帝国ドル


レオナルド王国軍俸給(役職手当含む)

……年25万帝国ドル


計27万4000帝国ドル

(年収2740万円相当)



金持ちやな。

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