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第130話……宇宙海獣の秘密!?

「消火班急げ!」

「破孔があるブロックに充填物注入開始!」


 ハンニバルの装甲ブロックに大きな穴が開いていた。

 これが重装甲のハンニバルでなければ、艦が真っ二つになっていたであろう攻撃だった。



「左舷回頭、反撃開始!」

「艦載機発艦!」

「近距離重粒子ガトリング砲撃ち方はじめ!」



――ドドドドド

 無数の近距離砲を繰り出し、宇宙海獣に反撃するハンニバル。


 ……しかし、これといったダメージは与えられない。



「どうしましょう?」


 不安そうな顔をする副官殿。

 私の顔を見られても、策はないしどうしよう??



「吾輩に任せろケロ!」

「宇宙海獣同士、思念波で話しかけてみるケロ!」


「頼みます!」



 藁をもつかむ感じで、カエル王女様の思念波での会話に賭ける……。


 …………。

 ……。


「……お返事がないケロ!」


 駄目なんかぃ!?



「おかしいケロ、相手が生き物でないみたいケロ!」


 ……宇宙海獣がおかしな場所に現れて、通商破壊行為。

 ひょっとして、操られているのかな?

 私はふと疑問に思った。



 ……よし!


――スキル【魔眼】発動!


 眼圧が上がり、網膜が腫れ、目の前が真っ赤になる。

 私は【魔眼】で宇宙海獣の内部を垣間見る。


 ……【異常探知】

 うん!?

 宇宙海獣の中枢神経系に、不可思議な機械が埋め込まれている!?



「砲術長! 敵宇宙海獣のFD-468ブロックを集中射撃!」

「了解ポコ!」


 至近距離から、ハンニバルの全火砲が宇宙海獣の機械が埋め込まれた一部分だけを狙う。



――ドドドドーン


 流石に、部分的に電磁障壁を貫き、爆炎が上がる。

 宇宙海獣に有効弾を与えたようだった。



『痛いわぁ~!!』


 突然、カエル王女の体を介して、こちらにも強烈な思念波が飛んできた。



 さらに、カエル王女と、宇宙海獣が思念波で会話する。


 …………。

 ……。



 どうやら、この宇宙海獣は精神操作用のモジュールを埋め込まれていたようで、それから解放されると、何処かへ次元跳躍していった。



 ……しかし、まだなんだか違和感があるぞ!?


――スキル【羅針眼】発動!


 すぐ近くの宙域に、ダークマター隠蔽型の潜航艇を発見する。



「砲術長! YF-698宙域へ向けて砲撃!」

「了解ポコ!」


――ズシィーン!


 何もないはずの宙域にハンニバルが砲撃すると、爆炎が上がり、大破したダークマター潜航艇が姿を現した。



「情報収集の為、敵艦へ白兵戦要員乗り込め!」

「了解メェ~!」


 バフォメットさんに率いられた白兵戦要員50名が、敵ダークマター潜航艇に乗り込む。


 ……約30分後に制圧。士官の捕虜も得た。



「お、御助けを……」


 怯える敵士官。

 何しろ、こちらでの私の姿は、一つ目巨人のギガース族だ。



「先ほどの宇宙海獣の秘密を吐いたら、助けてやる!」


 敵士官を睨みつける。



「あ、あれはですね……」


 敵士官が口を割る。

 彼はクレーメンス帝国の者であった。

 そして、先ほどの宇宙海獣は、やはり彼らに操られていたのだった。



「しかし、生きている宇宙海獣に発信機なんて付けられないはずケロ!」

「我々はそんなアホじゃないケロ!」


「……実は……」


 カエル王女の疑問に対し、捕虜の士官が答える。



……その仕組みとは、こうだった。


 まず宇宙海獣の小さな幼生を捉え、神経系を操る機械を埋め込む。

 その後、培養液にて人工的に育成する過程を経るというものだった。


 ……所謂、人工的に宇宙船を襲うように訓練された宇宙海獣だったのである。



「酷いことをするケロ!」

「許せないケロ!」


「……御助けを!!」


「約束通り、命は助けてやる!」


 その後、捕虜を艦内の営倉へとぶち込んだ。




☆★☆★☆



「酷いシステムケロ!」

「宇宙海獣を助けてくれケロ!」


 憤ったカエル王女様に、宇宙海獣の解放を頼まれる。


「まかせろポコ!」


 砲術長が胸を叩いて答える。

 ……てか、それは私のセリフじゃないの?



 その後、カエル王女の手助けも借りて、アルファ星系宙域での宇宙海獣の解放に成功。

 アルファ星系政府と、カエル王女に感謝された。




「一旦、引き上げるぞ!」


「「「了解!」」」



 他にも不幸な宇宙海獣がいるかもしれないが、ハンニバルは艦の損傷も激しく、いったんラム星系の準惑星ツーリアの母港へと帰投した。

 なにしろ、ハンニバルの左舷には直径15mもの大穴が開いていたのだった。




☆★☆★☆


「凄い攻撃力クマね!」


 帰港して損傷個所を調べると、クマ整備長が驚く損害だった。

 整備長に修理をお願いする。


「すいませんけど、直してください!」


「わかったけど、今日の晩ご飯奢りクマよ!」


 ……今晩は焼肉を奢らされた。

 しかも、高級肘川牛である。



「お替わり10人前クマ!」

「こっちも2人前追加ポコ!」


「こっちも、上ロース20人前追加メェ~!」


 ……み、みんな食べすぎだろ!?

 お、お財布が壊れる……。




 その後、ハンニバルは更なる防御力を備えるべく改装した。

 ……追加防御装備モジュールが重なり、今回ついに全長が1200mの巨艦になってしまった。


 しかも、艦体は双胴型なので横幅もかなりある。

 艦載機カタパルトも延伸し、砲塔も増やした。


 欲しいものをどんどん取り付けると、どんどん大きくなってしまった。



 ……これは宇宙港での車庫入れ大変だな、おい。


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