あたしは幼い頃から何も喋らない女の子だった。
友達に遊ぼうと誘われても、何故か声がなかった。
保育士さんと二人っきりになって、ある言葉を言われた。
「桜歌ちゃん、桜歌の名前の意味って知ってる?」
『?』
あたしは夕暮れに照らされた保育室の中で、先生の顔をじっと見つめる。
「せんせーね、桜歌ちゃんがおうかって名前を名付けられた理由、桜歌ちゃんのお母さんに聞いたんだ」
それはね――――、
さくらっていうピンクの花の咲く木がいっぱい花を咲かせるように、周りも周りからも幸せに見えるような女の子に育ってほしい。
――――そう名付けられたんだって。だから冬みたいに寒くて辛いときも耐え忍んで春を待つ桜のように幸せを摑み取れる素敵な女の人になってね。
――い。――さい――るさい、うるさい!!
そんなのになれるわけないだろうが!!だってあたしは、学校のスピーチでも授業で名指しされたときも友達に教科書貸してとも言えないグズなんだぞ!?
あたしは桜なんかじゃない。人生を謳歌することもできないなり損ないの口なし人間なんだよ!!
二度とあたしにそんな口効くなよ!?どいつもこいつも!!
死んでやる、もう死んでやるううううううううぅぅぅぅぅ――――――――――!!!
「――――――――――あああああああああああああっ!?っはあっはあっ、はあ、……はあぁ」
風花桜歌はイヤな夢を見た。