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爆弾魔 VS チェーンソー

爆弾魔 VS チェーンソー

 素紺部すこんぶ町でのゾンビ事件から1週間後の日曜日。日が昇りかけ、朝霧が立ちこめる早朝5時に、シゲミは市目鯖しめさば高校の校庭に立っていた。ブレザーを着て、左肩にはスクールバッグをかけている。


 校庭を囲むネットを切り裂いて中に入り、シゲミの正面から近づいてくる1人の女子生徒。チェーンソーを手にして不適に笑うリオが、シゲミと10歩分の間隔を空けて立ち止まる。



リオ「このときを待っていたぜぇ……お前と本気でり合う、このときを」


シゲミ「その前にお礼をさせて。素紺部町では助けてくれてありがとう。リオちゃんなら、7万体ものゾンビが相手でも壊滅させられると思ったわ」


リオ「お前とタイマンを張れるなら、ゾンビごとき100万体でも葬ってやるさ……さぁ、働いた分の報酬、しっかり払ってもらうぜ」


シゲミ「もちろん。約束だからね。でも、後悔しないでよ」


リオ「その言葉、そっくりお返しするぜぇ」



 バッグに手を入れるシゲミ。リオは両手でチェーンソーを握り、体勢を低くする。2人の間の空気が張り詰めたのを察したのか、校庭の周囲を歩いていたハトの群れが一斉に飛び去る。


 羽音を号砲に、シゲミは手榴弾を2つ、リオに投げつけた。チェーンソーを振り回し、手榴弾を細切れにするリオ。爆発することなくバラバラになった手榴弾が地面に落ちる。


 シゲミとの距離を詰めたリオは、下から上にチェーンソーを振るう。側転しながら刃を避けるシゲミ。そのまま右足を開いてしゃがみ、体を回転させてリオの足を引っかける。リオは体勢を崩しながらも、シゲミに目がけてチェーンソーを振った。刃は空を切ったが、風の刃を生み、2人の後方にあった校舎を両断する。


 着地して体勢を整えようとしたリオの顔面に、シゲミの左回し蹴りが当たる。地面を滑りながら蹴り飛ばされるリオ。その頭上から、無数の手榴弾が降り注いだ。即座に勘づき、リオはバック転をしながら手榴弾の爆発をかわす。


 リオ目がけて投げられた手榴弾がすべて起爆した。バック転を止め、再びシゲミとの距離を詰めようとするリオだったが、辺りは爆煙に包まれ、シゲミの姿が見えない。煙のどこから攻撃がくるかわからない状況では、さすがのリオも警戒せざるを得ない。チェーンソーを正面に構えながらじりじりと後退する。そのとき、かかとが当たった。足元に視線を向ける。地面に長方形のC-4が置かれていた。


 リオは地面を蹴って大きく飛び上がる。0.5秒ほど遅れてC-4が爆発。直撃は避けたリオだが、右足首から先から爆煙に飲まれ、履いていたローファーが吹き飛ぶ。火傷も負った。


 校庭を包んでいた爆煙が晴れ、宙を舞うリオの目がシゲミを捉える。シゲミは地上からM79 グレネードランチャーの銃口をリオに向けていた。空中で身動きが取れないリオへ、擲弾てきだんが発射される。身をよじらせ、迫り来る擲弾を真っ二つに切り裂くリオ。シゲミは瞬時に次弾を装填。リオが着地した地点に撃ち込んだ。


  擲弾はリオに直撃し、爆炎を上げる。排莢はいきょうし、3発目を装填したシゲミだが、その僅かな隙がリオの接近を許す。リオは全身に火傷を負ったが、一切怯むことなく猛スピードでシゲミに近寄る。そして首を狙ってチェーンソーを薙ぐ。シゲミは攻撃の軌道を読んで身をかがめることで、首を斬られることを避けた。が、グレネードランチャーの砲身が中程で斬られてしまう。


 バックステップで後退しながら、グレネードランチャーを投げ捨て、バッグに手を入れるシゲミ。追撃するべくチェーンソーを振り上げて前に突っ込むリオ。両者がトドメととなる一撃を放とうとした。その瞬間、上空から何者かが2人の間に落下し、割って入った。


 死角から現れた第三者に警戒し、シゲミとリオはそれぞれ後ろに下がる。2人の間にいたのは、市目鯖高校空手部主将・キョウイチ。空手道着を着てしゃがみ、地面に右の拳をついている。拳は地面に突き刺さり、キョウイチから半径2mほどにひびを入れていた。


 キョウイチは拳を地面から引き抜いて立ち上がると、シゲミのほうを見る。シゲミは驚いて、大きく目を開いた。



シゲミ「キョウイチくん? 何でここに?」


キョウイチ「朝練中に校庭から物音が聞こえたのでね。駆けつけてみれば、シゲミさんが戦っているじゃないか」


シゲミ「そうだけど」


キョウイチ「しかも、相当な手練れと戦っている……これほどハイレベルな戦いを見て、黙っていられるわけがない。このキョウイチも参戦させてくれないか?」


シゲミ「えぇ……?」



 困惑するシゲミ。リオも同じような反応を示す。



リオ「ちょっと待て。これはアタシとシゲミのタイマンだ。邪魔者は消えろ。じゃなきゃ、お前から先に殺すぜ?」


キョウイチ「ほう……望むところ」



 にらみ合うリオとキョウイチ。リオの反応は最もだった。素紺部町のゾンビ事件を解決するため、シゲミは1対1で殺し合いをすることを条件にリオの協力を仰いだ。もしここでキョウイチが参戦したら、1対1の戦いではなくなってしまう。


 思わぬ乱入者の出現に、シゲミの戦意が削がれる。今にも一戦おっぱじめそうなリオとキョウイチだが、さらなる乱入者が現れた。



皮崎かわさき「少し早めに来てみれば……学校でケンカはダメですよ」



 シゲミのクラスであるC組の担任・皮崎 リエが歩いて近づく。シゲミは「先生まで……」とつぶやき、バッグに入れていた手を引き抜いた。皮崎は3人の顔に視線を送り、続ける。



皮崎「ケンカ両成敗です。シゲミさん、キョウイチくん、そしてリオさん……アナタたち全員に、私が制裁を加えます」


シゲミ「えっ?」


キョウイチ「つまり、先生も戦いに混ぜてほしいということですね……いいでしょう! 素晴らしい朝練になりそうだ!」


リオ「ちっ……邪魔者がもう1人……全員切り刻んでやるぜぇ」



 リオはチェーンソーを両手で握りしめ、キョウイチは道着の帯を強く締める。皮崎は口から長い舌を露出させる。


 シゲミは大きくため息を吐いた。



シゲミ「わかったわ……殺し屋バトルロワイヤル、開戦といきましょう」



<爆弾魔シゲミ💣怪異専門の殺し屋女子高生💣-完->

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