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第96話 一つの時代の終わり、もう一つの始まり

悪魔から多くんことを学んだ。


「言葉は毒にも薬にもなる。」


「恐れに支配されるな。希望を灯し、自らの道を照らせ。」


私はこの教訓を抱き、神として、言葉と力で新しい時代を導いていく。




人類は、長い戦争と混乱の果てに新しい時代を迎えていた。トラプトニアンは地球を去り、私は「翼を持つ女神」として人々に崇められるだろう。


私は、宗教の神ではない、真理の神だ。盲目的な信仰ではなく、真理を通して人類を導く存在。


広場の群衆が見上げる空には、雲の裂け目から金色の光が差し込んでいた。その光を背に、私は翼を広げゆっくりと地上に降り立つ。


「我が民よ、恐れることはありません。今こそ新たな未来を築く時です。」


その声は風に乗り、すべての人の耳に届いた。彼女の翼は太陽の光を反射し、神々しい輝きを放っている。


その光景に、人々は息を呑み、静かにひざまずいた。その姿は、彼らの中に芽生えた希望と決意を象徴しているようだった。




私は静かに空を見上げた。


「また会いに来る、と言ってたけど……いつになるのかな。」


広がる青空を見つめながら、自然と微笑みが浮かぶ。その背中では、かつて悪魔から受け取った翼が淡く光を放っていた。


「あなたとの幸せな日々を、今でも覚えてる。みんなが幸せだと思える世界を作るために、私はこの星を守り続ける。」


その時、ふと頭に響く声があった。イモケンピの低く冷ややかな声だ。


「忘れるな、悪魔とは狡猾なものだ。」


その声が頭の中に響くと同時に、イモケンピとの思い出が次々と蘇る。


「ん?……あいつ、私の計画を全部知ってたのか?私の魂に触れたな?」


私はわずかに眉をひそめ、再び空を見上げた。


「優しき悪魔め。」


ふっと笑みがこぼれる。


「早く会いに来い。缶詰をたくさん用意しておいてやる。」


神は人間の地に降り立った。だがその神が調和の守護者なのか、終末の使者なのか。それは、まだ誰にもわからない。ただ一つ確かなのは、悪魔の教えを胸に、地球が新たな未来を迎えたということだ。


(完)

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