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ボランティアだと思って!
ボランティアだと思って!
雪銀海仁
恋愛スクールラブ
2025年02月05日
公開日
1.3万字
完結済
高三の恭介は、クラスで新たに気になる子ができた。 そんなある日、恭介は高一の佳奈の告白を受ける。「好きな子がいるから」とやんわり断る恭介だったが、恭介が女子と喋りなれていないことを知った佳奈は「その子とお話しする練習を、登校しながら私としましょう、ボランティアだと思って!」と食い下がる。しぶしぶ承諾する恭介を見て、喜ぶ佳奈。 恋人でも友達でもない二人の、奇妙な日常が始まるのであった。 【アルファポリスキャラ文芸ランキング日間5位/4344作】 【カクヨム甲子園《テーマ別》・なろうネット小説新人賞二次落ち】

第1話

       1


「源くん、ありがとう。どうにか全部埋められたよ。ほんとに助かっちゃったなぁ。神様仏様、源様って感じだよね」

 県立青嶋高校のテスト後の三年二組の教室。源恭介きょうすけは、前の席で半身になる椎名夏希なつきと向かい合っていた。

気安い笑顔はいたずらな感じで、椅子の背に乗せた腕の近くでは、きめ細やかなショートヘアがさらさらと風に揺れていた。

「ああそう。そりゃあ良かった。またなんかあったら言ってきてくれていいよ。まあよっぽど暇だったら、だけど」

 心臓バクバクの恭介だったが、後頭部を人差し指で掻きながらクールな風に返事をした。

 すると夏希は、にこりと笑顔を大きくした。小さな口からは、きれいなわずかに八重歯が覗いている。

「ほんと? そんじゃあもうこれからどんどん頼っちゃうから。いやーつくづく、持つべきものは親切なクラスメイト、だよね」

 楽しげな調子の夏希の台詞に、「ああ、うん。時間があったらだけどな」と恭介はぼそりと返事をする。

視線は当然、教室の隅。夏希は眩しすぎて、直視できるはずがなかった。

六月の頭の席替え以来、夏希は頻繁に後席の恭介に話しかけてきていた。

恭介が壁を作る一方で、「源くん。君って尊敬する人っている?」とか「髪切ったんだけど、かわいいかな?」とか、かなり突っ込んだ内容の話題が多く、恭介は混乱半分、嬉しさ半分といった感じだった。

陸上部、短距離のエースで、男女関わらず友達の多い夏希。勉強はあまりできないけどそれを隠すでもなく、前向きに明るく生きている。

夏希は優しくて綺麗で快活で、クラスのどの女子よりも女の子していると恭介は思う。できればずっと、一日中でも見ていたい。

だけど女子というのは、根本的に男子とは違う生き物だ。男よりも強固な友達グループを作るし、よくわからない男と妙に打ち解けるし、何より……。

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