そして、俺は走った。
ずっと待ってた人に会いに行った。
斎藤檸檬は、静かに公園のベンチに座っていた。
俺に檸檬は、気がつくと立ち上がり俺を抱きしめてくれた。
「久しぶり。」
と俺は大人の女性になった檸檬に言った。
檸檬も、浪人して芸術大学に合格した。
「洋ちゃん、ずっと待ってた。」
「俺もずっと会いたかった。」
ここから二人の物語は始まる。
俺は、高嶺の華を手に入れた。
二人は、キスをした。
プロ野球選手になったがヘリウスは四年連続最下位だった。
チーム内の雰囲気は、重たかった。
石丸剛久監督が、俺を見て握手してきた。
「ヘリウスを強いチームにして欲しい。」
と言われた。
開幕戦は、洋が先発だった。
これがプロ野球か。
球場は、洋が入団した事で満員のお客が入った。
バイトを辞めるのも草野球を辞めるのも寂しかった。
バイトでは、映画を無料で見放題だったし。草野球では、センターを守っていた。
久しぶりに投手に戻った。
対戦投手は、昨年度二十勝をあげて新人賞のタイトルを取った石黒豊だった。
俺は、ヘリウスを日本一のチームにしてみせる。
第一球を投げた。
球がミットに吸い込まれた。
165キロ出た。
球場は、割れんばかりの拍手を洋に送った。
悪くない。楽しい。
塩見洋は、マウンドで躍動した。
三振をストレートで奪い取った。
そして三番の豊との対戦。
洋は、大きく振りかぶって投げた。