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第40話

 ファミレスで話し合ってから数日が経った。

 その間、これと言って問題は無く、先輩達とも仲良く接している。


 文化祭の準備も進んでいる中、私と新島先輩は部室の片付けをしている。

 咲崎高校では文化祭の準備期間中に運動部は部室の掃除をするというのが伝統になっている。

 そして今日の当番は私達だ。


「よいしょっ……ふぅ、これで全部終わりましたね」

「ありがとう柚希ちゃん、お疲れ様~」

「新島先輩もお疲れ様です」

「それにしても掃除当番までダブルスでやるとは思いませんでした」

「ふふふ、それもテニス部の伝統なのよ」

「変な伝統が多いですね」

「ふふ、ホントね」


 最初は用具やユニフォーム等が乱雑に散らかっていたがキレイに片付いた。

 しかし幾ら校則とはいえクラスメイトに申し訳ない。

 普段からキレイに使っていればこんな校則も無くなるのかな。


「それにしても暑いね~」

「そうですね、それに埃が凄いです」

「ね~。窓が壊れて換気出来ないからしょうがないけど流石に參るね~」

「はい。それに結構汗もかいたのでシャワー浴びたいです」

「そうだね、さっさと着替えて帰ろうか」

「はい」


 キレイに片付いたロッカーの前で着替えを始める。

 新島先輩とは隣同士なので一緒に着替える。


 今日の新島先輩は以前と変わらない様子だった。

 ハーレムが解散してもいつも通りに接してくれる。


「ねぇ柚希ちゃん」

「何ですか?」

「私がハーレムを脱退するって言った時『友也君に甘えたくないから』って言ったの覚えてる?」

「はい」

「実はね、他にも理由があるの」

「理由って?」

「それは……あなたよ」


 新島先輩は体操服を畳みながらそう言った。


「あのままハーレム状態で付き合ってたら、あなたにも申し訳ないと思ったから」

「どうして私なんですか?」

「だって柚希ちゃんも友也君の事、好きでしょ?」

「え!? そ、それはまぁ……兄妹ですし」


 一瞬、図星を突かれて顔が熱くなってしまった。


「兄妹でお互いに強く想い合ってて、柚希ちゃんは本当にお兄さんが好きなんだって感じたわ」


 きっと兄妹として仲が良いって意味だと思うけど。

 それにしても今のは不意打ち過ぎ!

 焦りを押し込めようとしていると、新島先輩は薄く微笑み


「それとも、異性として好きだったり……する?」


 と、気持ちを見透かしているかのように尋ねてきた。


「えぇ!? 何言いだすんですか急に!」

「ふふ、冗談♪」


 冗談にしては的を射すぎてて怖い。

 相変わらず鋭いからなぁ、この人。


 新島先輩の考えている事が余計分からなくなってきた。

 もしかして……本当に私の気持ちに気づいてる?

 だとしたら、ハーレム脱退した意味は……


「柚希ちゃん」

「え、あ、はい!」


 新島先輩は下着姿で真剣な顔をしながら私を呼ぶ。

 もしかして考えてる事バレちゃった――


「胸、大きくなってない?」

「……へ?」


 む、胸!? 今胸が大きくなったって言った?

 あまりの想定外の事にあたふたしていると、新島先輩はグイッと私に近づいて胸を触る。


「やっぱり! 入部した時より大きくなってる」

「あ、あの……恥ずかしいですよ」

「女同士なんだから気にしない気にしない♪」


 そういって今度は両手を使って胸を揉んできた。


「立派に育って一体誰に揉ませる気だ~?」

「ちょ……ハァハァ……揉まない……で」


 胸を揉まれたのなんて初めてだけど、相手が新島先輩だなんて……。

 んんっ、なんだか頭がポ―っとしてきてヤバイかも……。


「はぁはぁ、どうしたの柚希ちゃん。顔赤いよ?」

「んぅ……せんぱいだって……赤いじゃないですか」

「そんな事……はぁはぁ……ないわよ」


 新島先輩の顔は赤く染まっていて、息遣いも荒くなってる。

 まぁ私も人のこと言えないけど、これ以上されたらホントにヤバい。


「ハァハァ……ヤバイ……です」

「うん……私も……はぁはぁ」


 息が出来ない……

 意識が薄れていくのが分かる……


 もう限界かと思ったその時、部室のドアが勢いよく開いた。


「やっほー! 楓ー終わった~?」


 何故かユニフォーム姿の水瀬先輩が勢いよく入ってきた。

 そして私と新島先輩を見ると


「な、ななな、何してるの2人とも!?」


 と水瀬先輩は床にヘタリ込んだ私達を中腰になって覗き込み


「もしかして……2人ってそういう関係なの?」


 と若干顔を赤くして聞いてきた。


「そんな訳ないでしょ! 柚希ちゃんの胸が成長してたから揶揄ってただけよ」

「そ、そっか。安心したよ~」


 やっぱり私は揶揄われてたのか。

 っていうか胸なら新島先輩の方が大きいんだか……ら……!?


 目の前には新島先輩を遥かに凌ぐ双丘が揺れていた。


「水瀬先輩って凄く大きいですよね」


 私がそう呟くと、新島先輩の目が水瀬先輩の胸にロックオンした。


「確かに。これは反則よね」

「え? な、なに?」

「柚希ちゃん! 後ろに回って捕まえといて!」

「は、はい!」

「ちょ、ふ、2人共どうしたの!?」


 新島先輩の気迫に圧されて勝手に身体が動いてしまった。

 それにしても新島先輩の目が全然笑ってないのが怖い。


「ふふふ、その大きな胸に天誅ーーーー!!」


 そういって水瀬先輩の胸を鷲掴みする。


「こんなに大きいモノを見せびらかすなんて! この! この!」

「あんっ、楓……やめて……」

「どうすればこんなに育つのかしら」

「そん……なに……激しく……しないで」


 あわわわ、いつもの新島先輩じゃない。

 完全に我を忘れてる……。


「うりゃうりゃ! これがいいのかぁ~?」

「んんぅっ!? や……だめ……」


 う~ん、凄い光景だけど改めて見るとやっぱり大きいなぁ。

 お兄ちゃんも大きい方がいいのかなぁ……はっ!?


「そういえばお兄ちゃんを誘惑したとか言ってましたよね」

「そうよ! そうだわ!」

「今は……ハァハァ、関係……無いでしょ~」

「いいえ、関係あるわ。この大きな胸で友也くんを誘惑したんでしょ!」

「そ、そんなことは……ナイヨ」


 あ、これは誘惑してる。


「くぅ~! ずるいずるい! 私だって大きい方なのに!」

「でも楓はトモと付き合ってた時があるんだから色々したんじゃないの?」

「えへへ~、あの時の友也くん可愛かったな~」

「そっちの方がズルーイ! 私もトモとシたい!」

「な、何言ってるのよ! 私達はまだ健全よ!」


 なんだかよく分からない内に話が変な方向にいってる。

 でも、そっか。お兄ちゃん新島先輩とはシてないんだ。

 って安心してる場合じゃない! この状態をなんとかしなきゃ。



 コンコン



「あ、あの、2人共落ち着い――――」


 コンコン

 ガチャ


「失礼しまー――キャッ!」


「「「っ!?」」」


 声のした部室の入り口を見ると、顔を真っ赤にしためぐが立っていた。


「めぐ!? 違うの、これは――」

「えっと、あの、すみませんでしたーーーーー!!」


 私の言い分も聞かず物凄い勢いで謝りながら走って行ってしまった。

 瞬時に状況を理解した私と新島先輩は慌てて叫んだ。


「待って! 違うのよーーーー!」

「誤解だからーーーーー!!」


 その後、めぐの誤解を解くのに1時間程掛かった。

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