目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

仲間も忘れず1

「話はこんなところだ。ここにある飲み物やお菓子は好きに食べてくれて構わない。他にも何か欲しいものがあったら遠慮なく言ってくれ」


 課外活動部の説明が終わった。


「それでは解散とする」


「学長、少し時間いいですか?」


 一年生たちがようやく終わったとホッとする中でトモナリは説明が終わってすぐにマサヨシに話しかけた。


「時間ならある。なんだ?」


「ちょっとご内密に」


「……分かった」


 トモナリはニヤッと笑う。

 レストルームの隣には会議室も完備されている。


 長机と椅子があり、モニターやホワイトボードがあったりとゲート攻略に向かう前の説明などで使われている。

 トモナリとマサヨシは向かい合って座り、マサヨシの隣には秘書であるミクもいた。


 ヒカリも自由にしていいと言われたのでお菓子を持ってきていてトモナリの隣の席で食べている。


「それで話とはなんだ?」


 マサヨシは正直トモナリが何を話すのか期待していた。

 レイジ、テル、フウカとの戦いを見てトモナリがゴブリンキングとの戦いで生き残ったのは偶然ではなかったのだと確信した。


 以前からトモナリがトレーニングをしていることも知っていたし、最近他の生徒を連れてトレーニングを教えていることも知っている。

 職業は希少でステータスも高い。


 特殊なスキルを持っていてヒカリというドラゴンのパートナーまでいる。

 期待するなという方がおかしいぐらいである。


「二つ……いや、三つお願いがありまして」


「たくさんあるな」


「遠慮せずに言えというので」


 こうしてお願いをしに来るところもマサヨシとしては好感が持てるところだった。

 生徒の願いは出来るだけ叶えてやろうと思うが実際にマサヨシを利用してやろうなんて人は少ない。


 ただ強くなるためには豪胆さも必要になる。

 マサヨシですら利用して強くなろうとしている姿勢はとても素晴らしいと感じているのだ。


「一つ目は課外活動部にもう一人誘いたくて」


「誰を誘いたい?」


「三鷹裕斗という生徒を」


「三鷹裕斗……」


「こちらです」


 マサヨシの隣に座るミクがタブレットを操作してユウトの情報を引き出してマサヨシに渡す。

 ヒーラーとしての能力だけじゃなく秘書としてもとても優秀だ。


「同じ特進クラスの子か。入学テストの成績は普通……職業は戦士だがステータスが良くスキルも良いものだったから特進クラス入り。アイゼンと同じ班だな」


 最初のゲートで振り分けられた班は余程のことがない限りそのまま同じ班で行動することになっていた。

 時にシャッフルされることもあるけれど8班は8班のままになる。


「どうしてこの子を?」


「本当はそんなつもりなかったんですけど課外活動部に来たメンバーを見てあいつも入れたいなと」


「というと?」


「俺を含め、清水瑞姫、工藤サーシャ、黒崎皇は同じ班のメンバーです。あいつに才能があるかは分かりませんが同じ班で一人だけ違いが出るとやりにくくなります。まあ、俺は少なくともユウトに努力する才能はあると思っています」


 この同じ班であるということがユウトを誘おうと思った最大の理由であった。

 ユウト以外の8班のメンバーがたまたま集まってしまった。


 同じ活動をする上でレベルや能力に差が出てきてしまうのは仕方ない。

 けれど課外活動部として活動していくとユウト一人と周りの差が大きくなってしまう。


 ユウトが将来どうなるのかのデータはトモナリの中にない。

 職業も一般的な戦士であるし強くなりきれない可能性だってある。


 けれどもユウトは意外と努力をしている。

 トレーニングにも真面目に取り組んでいるし、トモナリと戦う時は本気で挑んでくる。


 強くなるかは知らないが弱いままで終わるとも思えない。

 連携を深めるという意味でもユウトが課外活動部にいてくれるとありがたい。


「いいだろう。君がそういうのなら三鷹裕斗君を課外活動部に誘ってみよう」


「ありがとうございます」


「それでお願いはあと二つかな?」


「特進クラスに上げてほしい人がいます」


「特進クラスに?」


 少し意外なお願いだったとマサヨシは驚いた。

 特進クラスの中で課外活動部に誰かを誘いたいというのは理解できる話だ。


 同じクラスの生徒であるので見込みがある人を引き抜くのもあり得る。

 ユウトを誘いたい理由も納得できるものだった。


 ただ一般クラスの子を特進クラスに上げたいというのはなかなか意外な話である。

 課外活動部は部活で特進クラスはクラスである。


 誘うことの性質も違う。

 さらにはトモナリは普段はトレーニングに勤しんでいて部活にも入っていない。


 一般クラスの子とはあまり交流がないはずだった。

 どこで知り合ってどうして特進クラスに推薦するのか気になった。


「補充、考えていますよね?」


「それはそうだな」


 ゴブリンキングとゴブリンクイーンの発生によりトモナリたちはピンチに陥った。

 しかし直接ゴブリンキングと対峙しなかった生徒でもゲートにおける突発的な出来事に恐怖を感じてしまった子がいた。


 覚醒者を止めるまでいかないけれど活動することに自信がなくなってしまったということで特進クラスから二人ほど一般クラスへの編入を希望している生徒がいたのだ。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?