「色々あるな……」
トモナリは武器が欲しいと要求していた。
回帰前は多くの覚醒者がなくなった影響で武器なんかも良いものがトモナリに回ってきたことがあった。
使っていたのは元はトモナリが手に入れたものではなく、他の覚醒者が持っていたものを使っていた覚醒者が死んでトモナリに回ってきたという縁もゆかりもない武器だったと記憶している。
結構良い武器であったのだが自分のものではないという感覚がトモナリの中では強かった。
トモナリにはこれからは覚醒者として活動していくつもりがある。
ちゃんとした自分の武器が欲しいなとずっと思っていたのだ。
マサヨシならば良い武器の一つや二つぐらい持っていそうだと思ったので終末教を捕まえたら武器が欲しいなんて言ってみたのである。
「ちょ……ちょちょちょ!」
「どうした?」
「ア、アイゼン君が終末教を捕まえたから何かもらえるっていうのは分かるけど僕はどうして?」
トモナリが何かもらえるということはマコトにも理解できる。
相手が終末教だったことは驚きだけど、本当に終末教を倒したのだとしたら褒められることである。
ただマコトは何もしていないので何かをもらうような権利はないと思っている。
終末教となんて戦っていないのに何かもらうなんてできない。
「君も協力してくれたではないか」
「でも……僕がやったのは学長を呼んだぐらいで……」
「アイゼン君を見捨てることもできた。逃げることも見なかったことにすることも、あるいは元々アイゼン君に協力しないこともできた。でも君はそうしなかった。正しい行動を取ったんだ」
「そんな、こと……」
「そこまで差し迫った状況ではなかったのかもしれない。だが君が俺を呼んできてくれるということはアイゼン君にとって落ち着いて戦える要因だったかもしれない。あの場にいなくとも君は戦ったのだ」
「キトウ学長……」
「どうせここにあるものは飾ってあるだけで使い道のないものだ。誰かが使ってくれるならその方がいい」
「アイゼン君……」
トモナリはマコトの肩に手を乗せて一度頷いてみせる。
本当にいいのかなという思いがないわけではないけれど、ここまで言われて断るのもなんだか悪い気がしてきた。
「もらえるもんもらっとけ」
「じゃあ……そうするよ」
マコトも自分の装備など持っていない。
大量にある武器を前にして心躍らないわけもない。
この中の一つを持っていってもいい。
いつの間にかマコトの中では決められるだろうかなんて思いが出てきていた。
「アイゼン君は武器だったな」
「これだけあると迷いますけど……そうですね」
武器だけでなく盾や防具類、アーティファクトなどの魔道具類、霊薬もありそうだ。
多少そうしたものに後ろ髪引かれる思いはあるものの今は武器を優先する。
「アイゼン君は何が好みかな? ベーシックなのは剣。それ以外もあるぞ」
「じゃあ、剣か刀で」
本来の計画だったらテッサイが持っている神切を武器にするつもりだったのだが、今のところまだもらえていないので何か代わりの武器が必要となる。
実際のところトモナリにはあまり武器のこだわりはない。
回帰前はなんでも使った。
質の悪い武器を取っ替え引っ替え使っていた時期もあるのでなんでも使おうと思えば使えるのだ。
ただやはり剣は基本的で使っていた時期も長いので扱いやすい。
テッサイのところで習っていたのも剣術だし剣か刀が持っておく武器としてふさわしい。
「ならばこっちだな」
「うわっ、すごい!」
通路一面に剣がかけられている。
「刀は数が少ないが剣は色々あるぞ」
「どうだ、トモナリ!」
「おいおい……」
ヒカリは壁にかけられていた短めの剣を手に取っていた。
器用に柄を掴んでトモナリの真似をして構えている。
「お前には自分の爪があるだろ?」
「むむ……そうだな!」
ドラゴンの爪や牙は強力な武器の素材にもなる。
今はまだ小さい爪かもしれないけれどヒカリの爪はそこらへんの剣なんかよりもよほど強力な武器になる。
人の形になるというのなら武器ぐらいあってもいいかもしれないが、ドラゴンの姿のヒカリには武器はいらないだろう。
「こ、こんなにたくさんあるとどれが良いものなのか分からないですね」
マサヨシが持っているものなのだから悪いものなどないのだろうが、自分に合ったものを探すだけでも苦労しそうだ。
「好きなものを選ぶといい。ミナミ君もだ」
「あっ、はい!」
トモナリはキョロキョロと剣を軽く見回しながら通路を歩いていく。
本当にいろんなものがある。
抜き身のものもあれば鞘に収まっているものもある。
片刃のものもあれば両刃のものもある。
形や長さも様々で見ているだけでも面白い。
剣の中には少ないけれど刀も混じっている。
気になったものを手に取って鞘から抜いてみる。
やや青みを帯びた刃の剣で見た目にも美しい。
「ステータスオープン」
トモナリはステータス画面を開く。
するといつものトモナリのステータスの横にもう一つ画面が現れていた。
「青玉混合剣……ただ混ぜ物みたいだな」
それは武器のステータス画面である。
武器などの装備に意識を集中させながらステータスを開くと武器の簡易的な説明を見ることができる。
トモナリが手に取った剣は青玉と呼ばれる魔力の伝導率が高い特殊な鉱石を金属に混ぜ込んで作った剣だった。
実は悪くないけれど良いものというのにも及ばない代物である。
本当にいいものだったら青玉そのもので剣を作ってしまう。
トモナリは剣を壁にかけて武器探しに戻る。