「いぇーい!」
「ナイス〜!」
ブルーホーンカウが死んだことをしっかりと確認してミズキとユウトがハイタッチする。
「さすがだな。みんなに経験を積ませながら上手くブルーホーンカウを弱らせて戦った。こうすることでみんなのモンスターと戦う苦手意識もだいぶ薄れたようだな」
うまく攻撃をかわせたり倒せたりすれば自信につながる。
戦うことに緊張していた生徒たちも一度ブルーホーンカウを倒したことで明るい雰囲気になっている。
「アイゼン君はよかったのかな?」
「何がですか?」
「モンスターを倒すことに参加しなくて、だ」
トモナリはブルーホーンカウを攻撃しなかった。
レベルを上げるための経験値のようなものは覚醒者ならばモンスターを倒す場にいるだけでももらえる。
しかしその量は微々たるものでありレベルを期待することはほとんどできないのである。
一度でも攻撃しておけばそれなりに経験値は入るのによかったのかとマサヨシは聞いているのだ。
「ええ、俺はみんなよりレベル高いですしね」
ゴブリンダンジョンに挑む時点ではみんなレベル5だった。
そのあと事件があってあまり討伐できなかったがみんなレベル6には上がっていた。
トモナリはゴブリンキングと戦っていて、自分では倒せなかったもののその時の経験値を得られたためにレベル7になっていた。
『力:42
素早さ:46
体力:41
魔力:30
器用さ:44
運:20』
現在の能力値はもはやレベル一桁といっても信じてもらえないほどに伸びている。
日々のトレーニングや課外活動部で先輩たちと戦った時に伸びた能力値も結構大きい。
自分が強くなることも必要ではあるけれど、今のうちからみんなのレベルもしっかり上げておけばトモナリも後々楽になる。
「はっはっ! さすがだな!」
トモナリの考えにマサヨシは満足そうに笑った。
皆自分が強くなることしか考えていない。
生き残るため、お金を稼ぐためには強くなることが必要で非難されることでもない。
だが誰しも一人では戦えない。
みんなで強くなることは最終的に自分の生存率を高めてくれるのだ。
まだ覚醒者としてかけ出したばかりなのにそうしたことを理解しているとは素晴らしいとマサヨシは感心していた。
「まあ俺にも計画ありますからね」
ーーーーー
ゲートダンジョンの中を進んでブルーホーンカウを倒してレベルを上げていった。
「レベルはどうだ?」
「えと……7になったよ」
「ステータス見せてもらってもいいか?」
「うーん、まあトモナリ君ならいいか」
まだまだレベルは低いので少し戦うだけでも簡単に上がっていく。
次から4班と交代で、トモナリもちょいちょい参加しながらブルーホーンカウを倒していた。
ミズキにレベルを聞いてみたらいつの間にか7にまで上がっていた。
あまり人にステータスを尋ねるものではないが他の人はどうなっているのだろうと気になって聞いてみた。
ミズキも人にむやみにステータスを開示するものではないと授業で習っていたので一瞬ためらったけれどトモナリならいいかと見せてくれた。
『力:22
素早さ:30
体力:15
魔力:12
器用さ:35
運:14』
「中々だな」
ミズキのステータスを見てトモナリは感心する。
トモナリのステータスと比べてしまうとやや見劣りしてしまう感じは否めないがそれはトモナリが特殊なだけである。
世の中一般のステータスと比べた時にミズキの能力は高い方だといえる。
レベル10では各能力値が20もあればいいところなのだけどもう既に20を超えている能力値が三つもある。
ミズキの職業は剣豪で魔法職ではないので魔力が伸びにくく低いのは仕方ない。
体力値がやや低めなのは職業によって伸びやすい能力値があるのでこちらもある程度はしょうがないのだ。
総合的には高めなので低いところを見て嘆くより高いところを見て素直にすごいと思った方がいい。
テッサイとの修行のためか器用さは非常に高い。
素早さも高いのでこのまま成長すれば剣姫と呼ばれる日もすぐだろう。
「超感覚……良いもん持ってんな」
能力値よりもスキルを見てトモナリは驚いた。
超感覚というスキルは直接能力値に影響を及ぼすようなものではない。
けれど感覚を研ぎ澄ませてくれるもので超感覚スキルを鍛えていけば周りのことを感覚で捉えられるようになる。
自分の動き、相手の動きを細かく分かるようになればまるで未来でも見ているかのように先読みして動くことができる。
剣姫と呼ばれていたのは伊達でなかったのだなと思った。
「ふふん、ほんと?」
トモナリに褒められてミズキは嬉しそうに胸を張っている。
「ああ、お前は強くなるよ」
スキルも使えば慣れてくるし、一部のものは使っていると強くなる。
超感覚もそうしたスキルなのでガンガン使っていけばいい。
「とーぜんでしょ! トモナリ君には負けないから」
「俺も負けないように頑張るよ」
ミズキはずっとトモナリのことをライバル視している。
けれど嫉妬に塗れるようなことはなくてカラッとしていて普段はいい友達である。
「みんなはどうだ?」
「僕もレベル7」
「私も」
「俺は……まだ6だ」
「じゃあ次はユウトがトドメを刺すようにしよう」
みんなの状況も確認しながら攻略を進めていく。