「‘ドラゴンを守るというのか!’」
周りの人たちが一斉に武器をトモナリに向ける。
「トモナリ……僕は……」
「ヒカリ、しゃべるな!」
「どうして……」
「友達だろ? ここでお前を見殺しにしたら俺は自分を許せない。お前がヒカリなら……俺はお前を守る」
たとえ今ある力が無くとも同じ選択をするだろう。
「俺はヒカリの友達なんだ!」
今ならまだ周りの人たちを殺すことなく制圧することができるかもしれない。
退けるつもりはない。
意思を示すかのようにトモナリも剣を構える。
「……それがお前のする選択なのだな」
「そうだ!」
「そうか。ならば尊重しよう」
トドメを刺そうとした男の目が突如金色に変わっていく。
まるで爬虫類のように瞳が縦に伸び、人の眼と離れていく。
「な、何だ!?」
ガラスにヒビが入るような音が響き渡って、世界が割れた。
トモナリと金の目をした男とヒカリ以外の全て割れて消えていく。
残されたのは白い世界だった。
「あんたは……」
「……ドラゴンナイト。ドラゴンの友よ。お前のことを認めよう」
エドかと思ったけど、少し雰囲気が違う。
「お前に力を貸すことも認める。これからもドラゴンの友でいてやってくれ」
「……はい」
何者ですか?
そう聞きたかったけれど、強い力に圧倒されて質問なんかできなかった。
「トモナリィ〜」
「ヒカリ!」
巨大な竜だったヒカリの体がシュルシュルと縮んでいく。
そしていつものミニ竜サイズに戻る。
「トモナリ!」
ヒカリはトモナリの胸に飛び込んだ。
「怖かったのだ。辛かったのだ。……でも嬉しかったのだ」
頭の中で声がして暴れ回らなきゃいけないのは、ヒカリとしてもとても嫌なことだった。
しかしトモナリはヒカリのことを守ろうとしてくれた。
友達だといってくれて、人間に対して抵抗しようとしてくれた。
それがとてつもなく嬉しい。
感情の表し方が分からなくて、ヒカリは尻尾を回転させるように振って、ただただトモナリの胸を抱きしめる。
「ふっ、仲がいいな」
「……エド」
気づいたら金の目の男はいなくなって、トモナリの隣にエドが立っていた。
「認められたようで何より」
「あれは何だったんだ? ……一体……」
「私も聞きたいことは多いがな。まあ、何でもいいだろう。先ほどのあれはアースドラゴンの……意思のようなものだ」
「アースドラゴンの意思?」
「私が認めてもそうはいかないという事情があるのだ。君たちが今経験したことについて私は問わない。だからアレについても説明を求めるな」
「……分かりました」
世界の終末を再体験した。
なぜそんなものをトモナリとヒカリが再体験することになったのかエドは聞かない。
その代わりに説明できないことを聞かないようにと言われてしまう。
トモナリとしても説明は面倒だし、聞かないでいてくれるならありがたいと思うことは否めない。
「これからアースドラゴンは君の味方だ。時として、抗いようのない命運に飲み込まれた個体はいるかもしれないが、基本的にアースドラゴンはドラゴンナイト、君の友だ」
エドは金色の瞳をトモナリに向ける。
何だか知らないけど、ドラゴンの友達だと叫んだことが良かったらしい。
「また会えることを楽しみにしている」
「……急に耳鳴りが」
頭が割れそうな耳鳴りがして、トモナリは顔をしかめる。
「安心しなさい。ただ終わるだけだ」
「なんて言ってるのか……」
耳鳴りがひどくてエドの言葉が聞こえない。
「良い友達を持ったな。大切にするといい」
「うん! トモナリは僕の友達なのだ」
「ふふふ……友達か。いい話だな」
「う……く……」
頭が割れそうで目も開けていられなくなる。
「私も友達になりたいものだ……」