目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

『俺、案外いけんじゃね?』4

 狂弥は我に帰ると、自制心で手が止まる。

 その姿を見たユキナは、すかさず狂弥に向かってビキニをゆらゆらと揺らし、誘惑した。


「狂弥君?撮影が終われば、お楽しみ・・・・が待ってるよ〜♡」


 狂弥は頬を赤らめて、うっとりした表情を浮かべると、自然と手が動いてワンピースを脱いでいた。


 しまった……。


 ユキナは満面の笑みを浮かべて、呆然としている狂弥の背後に移動した。


「ブラは私が着けてあげる!」


 そう言うと、ユキナは素早い手つきで狂弥の腕にブラジャーを通していた。


「!?」


 気付くと、ブラジャーという今まで生きてきて着けることが無かった初めての感覚に、狂弥は不思議と胸を触っていた。


「これが、ブラジャー……」

「メチャメチャ似合ってるじゃん! 

 すごく可愛いよ!」


ユキナは狂弥の背中を、洗面台の鏡まで押して行った。


「ほら、見てみて!」


 狂弥は自身のブラジャー姿に見惚れて、頬を赤らめる。


「これが、エロスっすか」

「そうよ〜♡」


 ユキナは笑みを浮かべると、狂弥の真横に移動して、すかさずカメラの準備をした。


『パシャ!』


 ユキナはスマホの画面に映し出された写真にウットリした。


「最高よ!」


 ユキナの反応に狂弥は胸をワクワクさせて、写真を確認しに行く。

 写真に映る狂弥の姿は、まるで初々しい乙女が大人の世界に踏み出すような危ういつやめきを醸し出していた。


「でも、少し露骨すぎるわ。この写真の前に一段階、別の写真が欲しいわね……」


 ユキナは写真を見ながら、狂弥の胸をじっと見つめた。


「あっ! ワンピースだ!」


 ユキナは目を大きく開けると、訳もわからず、あたふたしている狂弥に白のワンピースを渡した。


「もう一回着て!」

「は、はい」


 言われるがまま、狂弥は再びワンピースを着る。 すると、ユキナは狂弥の腕を引っ張り、歩き出した。


「ユキナさん、どこに連れて行くつもりですか?」

「お風呂場。シャワー浴びよう!」

「えっ!?」


 ユキナの一言に、狂弥は胸を膨らませた。



 二畳程の広さに浴槽が置かれた、狭いが掃除されて整えられている風呂場。

 ユキナは見るなり、感心したように笑みを浮かべた。


「凄い! 洗面台があんな感じだったから、風呂場なんかとんでもない事になってると思ってたよ」


 ユキナの反応に狂弥は嬉しそうに俯く。


「すね毛を剃った時に、もしかしたら風呂場使うかもと思って掃除したんです」

「へぇ〜。だから、さっき風呂場から出てくるのに時間が掛かったんだ。

 片付けてくれてありがとね!」


 狂弥は顔を赤くすると、ユキナの方をチラチラと見る。


「あの〜。俺、こういうの初めてだから……」


 ユキナは狂弥に目もくれず、淡々とシャワーヘッドを持つと、狂弥の胸に向けた。


「じゃあ、かけるよ」

「えっ……」


 シャワーヘッドのボタンを押して、ユキナはお湯を出すと、狂弥の胸にかけた。


『シャァァァァァ……』


 いきなり、狂弥はシャワーをかけられて困惑していると、ワンピースから着けている赤いブラジャーが透けていた。


「うん、コレコレ! 思った通りに行ったわ!」


 狂弥は自分の胸元を確認すると、ユキナの狙いが分かり、ため息を吐く。 


 まぁ、そんなラッキー展開は無いよな……。


「よし、乾く前に早く戻るよ!」


 ユキナはシャワーを止めると、再び狂弥の腕を引いて洗面台に向かった。



 狂弥とユキナは鏡の前でポーズの確認をしていた。


「じゃあ、両腕を胸に寄せて、台に手をついてみて」

「こうですか?」


 狂弥がポーズを取ると、ユキナは横から確認した。


「ん〜。両手はつかなくていいかも。

 なんか良い物無いかな?あっ!」


 思い出した様にユキナは自分のバッグから口紅を取り出した。


「コレ良いじゃん! 前に雑誌の撮影でやったんだよね!」


 狂弥に口紅を渡すと、ユキナはジンバルの三脚を展開して、洗面台の真横にスマホを設置させた。


「口紅を左手で持ったら、さっきのポーズで鏡の方を向いてくれる?」

「はい」


 狂弥のポーズを確認すると、ユキナはスマホの画面を確認した。

 すると、狂弥が気合を入れすぎて、肩で息をしているのに気が付いた。


「良いね! じゃあ一回、軽く深呼吸してみようか」


 狂弥は言われた通りに深呼吸をすると、自然と落ち着きを取り戻して、凛とした表情を浮かべていた。


『パシャ!』


 スマホのシャッターを押し、写真を撮るとユキナは直ぐに確認した。


「うん、上出来ね! 狂弥君、あと一回違うポーズで撮ってみよう」

「分かりました」

「じゃあ、顔はそのままで、左手の口紅を口元へ持っていって」


 撮影に慣れた狂弥は、リラックスして口紅を持ち上げると、ユキナは感動のあまり目を輝かせた。


 これだわ……。私が求めていたベストショット!


『パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!』


 ユキナは無我夢中で何枚も写真を撮った。


「よっしゃあ! これで撮影完了! 早く狂弥も見て!」


 今までとは明らかに違う、ユキナのテンションの高さを見て、狂弥は自然と笑みを浮かべる。


 撮影って結構、楽しいんだな……。




To Be Continued…


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?