狂弥は我に帰ると、自制心で手が止まる。
その姿を見たユキナは、すかさず狂弥に向かってビキニをゆらゆらと揺らし、誘惑した。
「狂弥君?撮影が終われば、
狂弥は頬を赤らめて、うっとりした表情を浮かべると、自然と手が動いてワンピースを脱いでいた。
しまった……。
ユキナは満面の笑みを浮かべて、呆然としている狂弥の背後に移動した。
「ブラは私が着けてあげる!」
そう言うと、ユキナは素早い手つきで狂弥の腕にブラジャーを通していた。
「!?」
気付くと、ブラジャーという今まで生きてきて着けることが無かった初めての感覚に、狂弥は不思議と胸を触っていた。
「これが、ブラジャー……」
「メチャメチャ似合ってるじゃん!
すごく可愛いよ!」
ユキナは狂弥の背中を、洗面台の鏡まで押して行った。
「ほら、見てみて!」
狂弥は自身のブラジャー姿に見惚れて、頬を赤らめる。
「これが、エロスっすか」
「そうよ〜♡」
ユキナは笑みを浮かべると、狂弥の真横に移動して、すかさずカメラの準備をした。
『パシャ!』
ユキナはスマホの画面に映し出された写真にウットリした。
「最高よ!」
ユキナの反応に狂弥は胸をワクワクさせて、写真を確認しに行く。
写真に映る狂弥の姿は、まるで初々しい乙女が大人の世界に踏み出すような危うい
「でも、少し露骨すぎるわ。この写真の前に一段階、別の写真が欲しいわね……」
ユキナは写真を見ながら、狂弥の胸をじっと見つめた。
「あっ! ワンピースだ!」
ユキナは目を大きく開けると、訳もわからず、あたふたしている狂弥に白のワンピースを渡した。
「もう一回着て!」
「は、はい」
言われるがまま、狂弥は再びワンピースを着る。 すると、ユキナは狂弥の腕を引っ張り、歩き出した。
「ユキナさん、どこに連れて行くつもりですか?」
「お風呂場。シャワー浴びよう!」
「えっ!?」
ユキナの一言に、狂弥は胸を膨らませた。
二畳程の広さに浴槽が置かれた、狭いが掃除されて整えられている風呂場。
ユキナは見るなり、感心したように笑みを浮かべた。
「凄い! 洗面台があんな感じだったから、風呂場なんかとんでもない事になってると思ってたよ」
ユキナの反応に狂弥は嬉しそうに俯く。
「すね毛を剃った時に、もしかしたら風呂場使うかもと思って掃除したんです」
「へぇ〜。だから、さっき風呂場から出てくるのに時間が掛かったんだ。
片付けてくれてありがとね!」
狂弥は顔を赤くすると、ユキナの方をチラチラと見る。
「あの〜。俺、こういうの初めてだから……」
ユキナは狂弥に目もくれず、淡々とシャワーヘッドを持つと、狂弥の胸に向けた。
「じゃあ、かけるよ」
「えっ……」
シャワーヘッドのボタンを押して、ユキナはお湯を出すと、狂弥の胸にかけた。
『シャァァァァァ……』
いきなり、狂弥はシャワーをかけられて困惑していると、ワンピースから着けている赤いブラジャーが透けていた。
「うん、コレコレ! 思った通りに行ったわ!」
狂弥は自分の胸元を確認すると、ユキナの狙いが分かり、ため息を吐く。
まぁ、そんなラッキー展開は無いよな……。
「よし、乾く前に早く戻るよ!」
ユキナはシャワーを止めると、再び狂弥の腕を引いて洗面台に向かった。
狂弥とユキナは鏡の前でポーズの確認をしていた。
「じゃあ、両腕を胸に寄せて、台に手をついてみて」
「こうですか?」
狂弥がポーズを取ると、ユキナは横から確認した。
「ん〜。両手はつかなくていいかも。
なんか良い物無いかな?あっ!」
思い出した様にユキナは自分のバッグから口紅を取り出した。
「コレ良いじゃん! 前に雑誌の撮影でやったんだよね!」
狂弥に口紅を渡すと、ユキナはジンバルの三脚を展開して、洗面台の真横にスマホを設置させた。
「口紅を左手で持ったら、さっきのポーズで鏡の方を向いてくれる?」
「はい」
狂弥のポーズを確認すると、ユキナはスマホの画面を確認した。
すると、狂弥が気合を入れすぎて、肩で息をしているのに気が付いた。
「良いね! じゃあ一回、軽く深呼吸してみようか」
狂弥は言われた通りに深呼吸をすると、自然と落ち着きを取り戻して、凛とした表情を浮かべていた。
『パシャ!』
スマホのシャッターを押し、写真を撮るとユキナは直ぐに確認した。
「うん、上出来ね! 狂弥君、あと一回違うポーズで撮ってみよう」
「分かりました」
「じゃあ、顔はそのままで、左手の口紅を口元へ持っていって」
撮影に慣れた狂弥は、リラックスして口紅を持ち上げると、ユキナは感動のあまり目を輝かせた。
これだわ……。私が求めていたベストショット!
『パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!』
ユキナは無我夢中で何枚も写真を撮った。
「よっしゃあ! これで撮影完了! 早く狂弥も見て!」
今までとは明らかに違う、ユキナのテンションの高さを見て、狂弥は自然と笑みを浮かべる。
撮影って結構、楽しいんだな……。
To Be Continued…