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第15話 流山凛は告白される

 放課後。流山が部活に行こうとしたときだった。


「流山さん。ちょっと話があるんだけどいいかな」


 クラスの男子が話しかけてきた。

 流山はあまり面識のない彼からの申し出に不安そうだったが、周りのクラスメイト達は騒いでいた。


さかえくんが流山さんに声をかけた! これって!」


「きゃー! きっとそうなんだわ!」


「マジかー、栄のやつやっぱ流山さんのとこ行くかー!」


「まぁ、美男美女でお似合いだな」


 そういう方面の話が好きではない流山でも、これが何の話か分かった。

 高校生の一大イベント、告白というやつだ。

 ただ柏のことが好きな流山からしたら、はた迷惑はイベントであった。


「ごめんなさい。部活があるので」


 そう言って去ろうとしたが、前方に栄が立ちふさがる。


「時間は取らせないからさ」


「…………」


 栄は笑顔だったが、そこには逃がさないと言った絶対的な意志を感じさせた。

 困り果てた流山を横にいた鎌ヶ谷が心配そうに見ていた。


「大丈夫よ、玲奈。先に部活行ってて」


「……分かった」


 それだけ言うと、鎌ヶ谷は教室を後にした。

 栄と向かい合う流山。


「手短に済ませてください」


「伝わったみたいで嬉しいよ」



 ――――――――――――――



 流山と栄は教室を出て、校舎裏へとやってきた。

 人気のないところであるため、流山は少し警戒した。

 二人は向かい合う。

そして栄が口を開いた。


「流山さんはさ。僕のこと知っている?」


「……ごめんなさい。クラスメイトってぐらいしか」


「まぁ、そうだよね。そうなんだよね」


 何が面白いのか、けらけらと笑う栄。

 流山は話が見えなかった。


「僕ね。これでも優等生で通っているんだ」


「そう」


「サッカー部でも一年唯一のスタメンでね」


「……それはすごいわね」


「サッカー部は嫌いかい?」


「そんなことはないわ……」


「嘘だね」


 栄は笑顔のままそう言った。

 流山は一瞬、全身が緊張した。

 話を続ける栄。


「きっと流山さんは、僕のことなんて興味ないだろうなぁとは思っていたよ。だからね。興味が出るような話を持ってきたんだ」


「? 何かしら?」


「僕ね、南中のサッカー部だったんだよ。ねぇ東中の流山さん?」


「!?」


 その言葉を聞いた瞬間、流山の脳裏に中学時代のことが思い出される。

 忌まわしい記憶がよみがえる。

 それでも流山は気丈にふるまう。


「何が目的なのかしら」


「いいね、興味を持ってくれたみたいで」


「私の質問に答えなさい」


「あの事件で、僕たちサッカー部は活動停止。彼は学校にも来なくなったよ。そして地味な中学生活を送ったよ」


「それが何?」


「僕はね後悔しているんだ。だから高校では最高の青春を謳歌しようってね」


「さっきから何が言いたいの?」


「簡単な話だよ。流山さん。僕の彼女になってよ」


「は?」


 唐突な話に、流山は理解できなかった。

 だが、栄の方は楽しそうに話す。


「分かってないね流山さん。これだから元からスクールカーストが高い人は困るんだ。いいかい僕は優等生、サッカー部のスタメンっていう努力でカーストを上げたけど、ここで一つ問題がある」


「問題?」


「恋人だよ恋人。スクールカーストにおいて上位に入るには恋人の存在が必要なんだよ」


「そういうものなのかしら?」


「ああ、こればっかり難しくてね。でも今僕は三姫である君の弱点を握っている」


「…………」


「もう一度言おう。流山さん。中学時代のことを知られたくなかったら僕の恋人になってよ」



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