「……なんだか飽きてきたわね」
あれから何匹ものモンスターと遭遇しては倒すを繰り返し、ついに私はずっと思っていた心の声をポロっと零してしまった。
”それは絶対言っちゃダメな奴だろww”
”薄々そうじゃないかとは思ってたけど、やっぱり飽きてたんだ”
”まぁ、さっきからずっと同じような相手とばっか戦ってるしな”
「そうなのよね。深層って言っても、出てくるモンスターは他の階層とあんまり代わり映えしないし、修行相手にちょうど良さそうだったスライムもそろそろ物足りなくなってきたし」
最初は物理攻撃が効きにくいと思っていたスライムだけど、途中から戯れに風圧で身体全体を吹き飛ばす方法を試してみたところこれが大正解。
ただメイスをぶん回しているだけで簡単に体内の核を丸裸にできるようになってしまい、それ以降はもはやただの作業と化してしまった。
「だけど、これ以上に手強いモンスターってなるともっと奥まで行かなきゃいけないし。かと言って、これ以上奥に行くとなるとさすがに時間が厳しいのよね」
なんの用意もしていない状態でダンジョンに一泊するのは、普通にイヤだ。
今日はけっこう暴れて汗もかいたし、できればあったかいお風呂に入ってさっぱりしてから眠りたい。
「というわけで、今日はこの辺で終了にしましょうか。みんなはちょっと物足りなかったかもしれないけど、ごめんなさいね」
”いやいや、めっちゃ見ごたえあったって”
”これで物足りないとか言ってたら、そのうち罰が当たるわ”
”そもそも深層の映像ってだけで貴重なのに、あんな規格外の戦いを見せられて物足りない奴なんているの?”
”それもあるけど、個人的には穂花ちゃんの白いお肌がたくさん見れて大満足です”
”おまわりさん、こっちです”
「なんかちらほら変なコメントが見える気がするけど、どうやらみんなも楽しんでくれたみたいでよかったわ。それじゃ、また次回の配信で会いましょう。次は、リンも連れてこようかしら?」
”それはやめて差し上げろ”
”Dランク探索者を深層に連れてくるとか鬼畜の所業じゃん”
”スパルタにも程があるって”
「ふふっ、冗談よ。それは、もっとリンが成長してからのお楽しみにとっておくから安心して」
”ぜんぜん安心できなくて草”
”リンリンちゃん、強く生きてくれ”
”いや、でもあの子ならワンチャン喜びそうな気もしなくもないな”
「まぁ、それも彼女次第ってことで。それじゃ、今日はここまで。みんなも、お疲れ様」
”おつりんりーん。じゃなくって、おつほの~”
”おつほの~、ってなんか可愛いな”
”おつほの~! また時々ソロ配信もしてくれると助かります!!”
まだまだ盛り上がり続けるコメントを眺めながら、私はカメラに向かって手を振るとその電源を落とした。
「さてっと、それじゃあ帰りますか」
そうして手元に戻ってきたカメラを掴んで小さくため息を吐くと、私は地上に向かってゆっくりと歩き出した。