少し離れた場所で
やせ細り、以前よりも体重は軽くなっていた。
顔色も悪く目の下には隈がくっきり浮かんでいる。
家の前で雨芽を見つけた時、背中に何か覆いかぶさっていたがそれも払えば簡単に離れていった。
あれは多分ただの思念で本体は雨芽の家だろう。
『なんかやっかいな者に好かれているようだが。』
『そうだな…。』
『さっき少し食べられていたから良かったが、食べられなくなっていたらアウトだったな。』
と爺は頬杖をつくと長い息を吐いた。
『ああ…危ないとこだ。』
『でも…このままだと危ないぞ?どうするんだ?喜治。』
『どうもこうもない。祓ったとしても雨芽ちゃんが望まなければ何もならない。いくらでも引き寄せてしまう。欲しいと願えば願うほどに。』
『そうだなあ…喜治は何が最善だと思う?』
うーん、と喜治は唸ると頭を掻く。
『忘れることだ。全て…前に進むために。でも雨芽ちゃんだけが問題じゃない。』
『ふむ、ご両親と話すか?』
『いやー、それはどうだろうな。突然見知らぬ男が家に来て、あなたのお嬢さんには霊がついています、なんとかしましょう?なんて、どこぞの壷を売る奴と似たようなもんだろ。』
『…ならアレを受けたらどうだ?もっと動きやすくなるだろう?』
喜治が苦虫を噛み潰すとうな垂れた。
『まあな。アレは…そういう意味では色々クリアにしてくれるんだろうけど、俺的にはヤなんだよなあ。絶対利用されるし…。』
『でも安泰だぞ?』
『うーん、安月給だろ。』
爺はふわりと浮かぶと台所の棚の上の茶封筒を喜治の前に置いた。
『人助けならいいだろうが。』
『わかったよ。』
喜治は茶封筒を開くと中の書類を持ち奥へと消えていった。