時は西暦2085年——人類はついに時間旅行の技術を手に入れた。とはいえ、まだ試作機の段階であり、安全性も確立されていない。そんな中、政府は「歴史的な実験」を成功させるため、被験者を全人類から無作為に選ぶことを決定した。
発表の瞬間、世界中が固唾を飲んで見守る。選ばれたのは、一人の若者——タケルだ。彼には家族がいなかった。唯一の親友は、小さなハムスター「ポコ」だけ。
「ポコも一緒に行かせてくれませんか?」
通常、タイムトラベルは人間のみ許される。しかし、政府はこの特例を認めた。こうして、タケルとポコは共に時間旅行に旅立つこととなる。
タケルはタイムマシンに乗り込み、研究員から最後の説明を受けた。ミッションは100年後の未来へ行き、そこが西暦2185年である証拠を持ち帰ること。
「それでは、発射します!」
光が弾ける。眩い閃光の中、タケルはポコをそっと抱えた。だが、その瞬間——異変が起こった。
時空の流れが突然乱れ、機体が揺れ始める。外部モニターには、謎の渦が映し出されていた。
「何だ!?予定外の干渉か!?」
次の瞬間、強烈な重力がタケルの体を引き裂くように襲い、意識が途絶えた。
目を覚ますと、そこは見渡す限りの荒野だった。地平線まで広がる砂の大地。廃墟のような建物が遠くに点在し、不気味な沈黙が支配していた。
「しまった……予定よりずっと未来に来てしまったのか?」
慌ててハッチを開けようとするが——おかしい。体が妙に軽い。
さらに、手を見た瞬間、彼は凍りついた。
そこにあったのは、小さな手だった。
「え?」
反射的に走り出そうとすると、驚くほど素早く転がるように前進してしまう。視界は地面に近く、世界が妙に大きく感じられた。
「まさか……そんな……」
タケルは水たまりに映った自分の姿を見て、絶叫した。
なんと、彼は、ポコと合体し、ハムスターになっていたのだ。