ドン!
カリオ、ユデン、タヨコはそれぞれ三方向から、各々《おのおの》の
ギャオン! ギャオン! ギャオン! ギャオン!
赤い機体は真下の三人に向けて、両手のライフルを発射、
(並みの
ビームが地面に着弾し、激しい
ドシュッドシュッドシュッドシュッ!
キュンキュンキュン!
赤い機体は猛スピードで急降下してこれを
ビギィイン!
「ぐぉあ!?」
カリオは上からの斬撃をビームソードで受け止める。ぼこり、と音を立ててカリオのクロジの足が地面にめり込む。 圧倒的な
(サムライ兄ちゃん、さっき斬られかけた時よりかは対応できるようになったか。にしてもあのスピードとパワー……ひょっとしてビッグスーツとは違う兵器か?)
ユデンは再びピストルを連射する。赤い機体はピストルのビームがそこを通るより先に、一瞬でタヨコの目の前に急接近する。
「チッ!」
タヨコは舌打ちしながら大鎌を横に
だが、赤い機体は頭部に向かって来たそれを横に避けつつ、左手の武器を腰にマウントすると、その手でゼルディの尻尾を掴み、思いっきり引っ張ってゼルディを投げ飛ばす。
「きゃっ!?」
「うぉ!?」
ユデンのハオクの方へ投げられたゼルディが飛んでくる。ユデンは思わずそれを両腕でキャッチすると、
赤い機体はカリオの方へ向き直り、再度突撃してくる。
カリオは腰の
赤い機体は左の武器を再度手にし、左右両側から斬りかかって来る。
(……ここだ!)
フォン!
青いX字の光の線が、空中に浮かび上がる。
――ウキヨエ流居合術・一瞬二斬バッテン!
ビギギィン!
独特の衝突音。
(……クソッたれが!)
カリオは顔をしかめた。ビームソードが複合武器の刃に
(あの鎌女達と共闘だなんてややこしいっ……!)
カリオ達三人が
(距離は中途半端、経験したことのない速さの敵……でも)
赤い機体がカリオの斬撃を防御した瞬間、リンコは赤い機体の後頭部に恐るべき速さで照準を合わせる。
(どんなに速くても止まる一瞬はある、そしてラッキーなことに後ろガラ空き!)
リンコはトリガーを引く。狙いもタイミングも完璧。必中の確信。
ガァン!
(……え?)
リンコはスコープ
(……いや、まさかそんな……)
「こいつ!」
「うらあ!」
赤い機体がカリオのクロジを蹴飛ばすと、今度はユデンとタヨコが赤い機体に斬りかかる。三機の振るう刃が宙に
激しい斬り合いの中で、またほんの一瞬、赤い機体は斬撃をユデンに防御されて動きが止まる。
その
ガァン!
――赤い機体は、再び頭を動かしてビームを避けた。
(冗談でしょ!? 後方からの……
ユデンに攻撃を止められた赤い機体を狙い、その横からタヨコが大鎌を振りかぶり、突撃する。
――が、赤い機体はユデンに斬りつけた方の反対側の手の銃で、
「!!」
「タヨコッ!」
ユデンは
「よし、射程に入った」
シュンシュンシュンシュンシュン!
赤い機体の頭上をを羽状と
シュンシュンシュン!
バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!
赤い機体は上空に飛び上がる。複雑な軌道を取りながら、浮遊兵器が連続で繰り出す刺突と射撃を、猛スピードで飛び回りながら回避していく。
ガガガガガガ!
バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!
バシュシュシュシュシュッ!
さらに空中のフリクからマイクロミサイル、地上からチネツのガトリングガンとニッケルのビームライフルの射撃が赤い機体に向けて放たれる!
「……当たらんな」
「速すぎんだろ!」
ボン! ボン! ボン!
上空を高速で飛行しながら、赤い機体は複合武器を振るい、チョーク一基と浮遊型短剣二基を破壊した。
(マズい、浮遊兵器の包囲攻撃が全く効果ねえ……!)
ギャオン! ギャオン! ギャオン! ギャオン!
赤い機体は空中を自在に飛び回りながら、ニッケル・フリク・チネツに向けてライフルを撃ち始める! 回避行動を取る三人。
ギャオン! ギャオン! ギャオン! ギャオン!
(クソッ、頭数も銃口もこっちの方が多いってのに、こっちが押されている!)
速さの次元が違う。赤い機体と、そこから放たれる橙色のビームを
ダダン!
「おおおお!」
「おらああ!」
味方の射線が減ったところで、カリオとユデンが地面を蹴って飛び上がり、空中の赤い機体目掛けて突撃する! 左右から青いビームソードと刀の一閃が、赤い機体に迫る!
ガシッ
「!!」
「!?」
赤い機体は両手の武器を離し、下から向かってくるカリオとユデンに高速で接近。そのまま二機の頭部を左右の手で
「……!」
「ぐおおお!」
ドドォオオン!!
重い衝突音と共に、激しく
煙が晴れると、無傷の赤い機体が現れる。落下してきたのをそのまま掴んだのか、両手には複合武器が戻っていた。
その足元。大きな二つのクレーターのそれぞれの中心に、黒い機体と金色の機体――カリオのクロジとユデンのハオクが仰向けに倒れていた。
カリオのビームソード、ユデンの刀がそれぞれの手からこぼれ落ちる。二機とも動く気配はない。
「……クソッ……」
リンコは小さく声に出して、
その時だった。
「……? 何だ、何か上を通って……」
治安部隊員の一人が上空の何かに気づいた。顔を上げたリンコもそれに気づく。
赤みがかった空が、揺らめく。
その陽炎が赤い機体の方へゆらゆらと飛んでいく。
「光学迷彩……?」
陽炎は赤い機体の真上に停止すると、光学迷彩を解いて姿を現した。我々にとって
ビッグスーツがすっぽり収まりそうな大きさの円盤を、赤い機体は見上げる。
「――もうそんな時間か」
コックピットのスピーカーから聞こえてきた女性の声。
――赤い機体のパイロットの声だった。
(魔人血戦⑧へ続く)