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第8話 ボス前の会議

「確認した。ボスが居た」

「どうしますか?」

「休憩と作戦会議だ。今一度何が出来るか言い合うぞ」


 階段で座って話し合う

 ボス戦において何が出来るかを知っておくのは重要

 何を任せて何を担当するか、スムーズな連携には役割分担が必須


「わ、私は攻撃魔法、炎系と水系、土系の3つを使えます、後支援魔法が少し」


 千尋が自分の使える魔法について語る


「私は支援魔法、身体強化系統を幾つかと武具強化、シールド系統を複数です。少しだけ治癒も出来ますが本当に軽くです」

「なるほど」


 2人の出来る事を聞き少し思案する


 ……なら支援は基本雫任せ、千尋に攻撃と状況次第で支援か……いや先に俺も言わないとな


「俺は身体強化以外の魔法は使えない。代わりに魔道具を複数持っている……そうだな」


 手袋の上に付けている指輪を外す

 迅が付けている指輪は4つ

 4つとも指輪型の魔道具

 魔道具は魔力を消費して効果を使用出来る

 4つの指輪それぞれに別の効果が付与されている


「2人のどちらの方が魔力ある?」

「魔力の総量であれば私ですね」


 雫が手を上げる


 ……ならこの2つの指輪を雫に貸すか


 迅は外した指輪のうち2つを手渡す

 白色の指輪と緑色の指輪

 使える魔法と魔力総量で考えて選択した


「これって治癒の指輪ですよね」


 雫は声を上げる

 2つのうちの片方は迅が使っていた物だった

 雫にとって忘れがたく記憶に新しい物

 白い指輪、それは治癒の指輪であった


「あぁ、そうだ。治癒の指輪と風の指輪を貸す。治癒の指輪の効果は知っているな」

「はい、一度見ましたから知っています。で、でも借りちゃって良いんですか?」


 治癒系の魔道具は魔道具の中でも希少な部類

 この指輪1個でとんでもない額が付けられる程の希少性を持つ

 そんな物を他人に平気で渡すのは普通では無い

 寧ろ受け取った雫の手が震えるレベルである


「お前の方が使える。もう1つの風の指輪は所有者を起点に突風を起こす。範囲は狭いが防御には使える」

「防御用ですか」

「それだけでは無く近距離の攻撃手段にも使える」


 風の指輪は魔力総量の少ない迅が手に入れて持つだけ持って殆ど使っていない指輪

 魔法の範囲が狭いが迅の言う通り防御に使えて決して弱くは無い

 近距離の攻撃としても使える為、攻撃魔法を持たない雫に向いている魔道具と言える


「こ、この4つの魔道具は全部自力で?」

「あぁ、ダンジョン攻略の際に手に入れた物だ」


 魔道具の入手は中ボスやボスが落とすケースとダンジョンの奥で保管されているケースの2つが現状発見されている

 しかし、ダンジョン攻略をすれば確実に手に入る訳じゃない


「一体何ヶ所攻略してるんですか」

「覚えていないな。金を稼ぐ為にやっているからな。気にした事は無い」

「そうなんですか」

「か、変わってますね」


 ……覚えてないレベルで攻略ですか。とんでもないですね


 探索者となればダンジョンの攻略数と攻略等級と言うのは自らの実績となる

 だから覚えている人は多い

 パーティを組む時にも実績を示せるのは大事

 それを偽る人すら居るくらいだ


「この2つの指輪はお前に貸そう」

「あ、ありがとうございます」


 千尋に残りの2つの指輪を渡す

 千尋は両手でしっかり受け取る

 黒色の指輪と紫色の指輪

 念の為に付けてはいたが結局使っていない指輪と迅では使えない指輪


「ちーちゃんに渡した指輪はどんな効果の指輪なんですか?」

「黒い方は衝撃の指輪、指輪の宝石を起点に衝撃を発生させる。魔力を込める量で威力範囲が変わり都度つど調整が可能」

「な、なるほど」


 迅の説明をしっかり集中して聞く


「紫色の方は分割の指輪、魔法に限り1つの魔法を分割して放てる。これに関しては俺が持っていても使えない物だ。丁度良いからくれてやる」


 分割の指輪の効果は身体強化の魔法しか使えない迅では使えない効果の魔道具なのだ

 この指輪に関してはワンチャンこれで攻撃防げるんじゃねくらいで付けていた

 だから2人のどちらかが使った方が役に立つ魔道具なのだ

 千尋に渡したのは分割するなら攻撃魔法の方が使い勝手良いんじゃないかと言う迅の考えの元


「使えない物……身体強化の魔法には意味が無かったんですか?」

「前に使ってみたが効果はなかった。攻撃魔法なら役に立つ筈だ」

「は、はい、必ず役に立てて見せます」


 千尋は奮起する


「4つも貸してくれましたが他にも魔道具はあるんですか? この指輪達が持っている魔道具全てだったら……」


 雫は4つも渡して迅が使う魔道具が残っているか心配になる


「問題ない。他に3つある。この手袋と靴、この剣もそうだ」

「魔道具を7つも……本当に凄いですね。剣型となると魔剣まけんですか?」

「いや、違う。魔剣とは少し違う魔道具だ」


 魔剣、魔力を込める事で魔法のような力を行使出来る武器型の魔道具の総称

 短剣や剣型が多いから魔剣と呼ばれるようになった

 この剣はその魔剣と呼ばれる種類とは異なる

 魔剣と呼ばれる武器が持つ派手な力は持っていない


「そんな物もあるんですね」

「他には話す事は陣形くらいか……」

「い、異能の説明まだしてない……です」

「異能……あぁ、異能を持っているんだったな。先に伝えると俺は異能を持っていない」


 迅は先に伝える

 異能は持っている方がレアで探索者でも持っている者は少ない

 迅のように持っていない探索者が大半


「異能は珍しいですからね。まず私の異能の説明をします。私は魔力過剰蓄積まりょくかじょうちくせき、本来の魔力総量よりも多く蓄積が可能です」

「だから魔力総量が多いのか」


 先程迅の質問に迷う事無く雫が手を上げていたのは異能によって底上げされた魔力総量を保有していたからだった


「はい! かなり多いですよ」

「ま、魔力切れになったところ見た事ない」


 ……単純だが優秀な異能だな。後衛を選んだ理由も分かる


 本来の器よりも多い量の魔力を蓄積保管出来ると言う単純で分かりやすい異能

 魔力が多いと言うのは魔法が多く使用出来るという事

 後衛ならその効果を存分に使える

 シンプルでいてかなり使い勝手の良い強力な異能と言える

 特に条件やデメリットも無いようだ


「わ、私の異能は制限解除オーバーです」

「ちーちゃんの異能は強いですよ!」


 雫が自慢げに言う


「そうなのか。どのような異能なんだ?」

「こ、攻撃魔法に限りで出力強化です。条件は魔法名の前に制限解除オーバーと付けないとならない。そのくらいです」

「出力強化、魔力の消費は?」

「ふ、普通に魔法を使うよりは変わりません」

「それは強いな」

「出力上昇率も他の似た異能とほぼ変わりません」


 出力強化の異能は何人か存在している

 だが出力強化する異能は行使する時どうしても魔力の消費も増えてしまうのだ

 そのデメリットが無いのは強い

 条件も攻撃魔法に限るのと魔法名に一言足すだけ

 前者は後衛攻撃職なら特に問題にはならない


 ……小規模クランというから甘く見ていたが2人とも有用な異能だな


 想像していたよりも強力な異能を2人は所有している

 なぜその異能を持っていて大手クランに勧誘されていないのか不思議に感じてしまう程に


「陣形の話をするか」


 陣形について話し合いをした

 少しの休憩を挟み作戦会議を終える

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