取引所の受付で迅は魔石を出す
「換金をお願いします」
「はい、魔石の換金ですね」
受付の女性は受け取り魔石を確認する
女性は何度も迅の換金を手続きをしていた
今日の魔石の量はいつもと同じくらいだから4級だと考えていた
魔石の色を確認する
「魔石は……え!?」
女性は魔石を見て虚をつかれた
魔石は見るだけで等級の違いが分かる
透明度が高いほど高等級の魔石なのだ
3級は4級よりも透明度の高い黒い石
女性も3級の魔石は数える程しか見た事はないが間違いなく迅が提出したのは3級の魔石だと分かる
「さ、3級の魔石ですね。今日は3級のダンジョンに行ったのですか?」
「はい、どんな感じか気になったので試してそれで倒せたので魔石を集めました」
少し信じられない女性は迅に念の為に確認をする
迅は嘘偽りなく正直に答えた
女性も迅が嘘をついているようには見えない
……えぇ? 3級に挑んだ? 今居ないだけで他にメンバーが居るなら有り得なくは無い……
……確認をするなんて3級は分かりづらいのか? 一応俺が見て分かるくらいの違いはあると思うが
女性は魔石の違いが分からないのではなく分かったからこそ驚いている
いつもは4級までの魔石を集めていた人が突然3級の魔石を持ってきたのだ、驚くのも無理は無い
「ところでこれはパーティで? それとも1人で?」
女性は恐る恐る質問をした
何となく帰ってくる答えは分かっている
迅にこの質問に答える義務は無いが答えない理由も無い
「はい、1人で集めましたが何か問題でもありますか?」
「い、いえ、問題などありません。か、換金するので少々腰掛けてお待ちください」
女性は慌てて奥へ移動して換金を始める
質問の意図が分からなかった迅は首を傾げるが問題がないのなら良いかと考え気にせず適当に空いてる席に座って待つ
受付付近が何故か騒がしい
「ついには1人で3級潜り始めたのか!?」
「声大きいです」
「悪ぃ」
男性が叫び掛けて止められる
「4級単独攻略してるから確かに道中の魔物くらいなら単独でも行けてもおかしくない……」
「凄い事ですがそれって何か問題あるんですか?」
先輩方が騒いでる理由が分からない新人が聞くと男性が説明を始める
「問題と言うか話題になる。とんでもないほどのな。それに確実に大手のクランが動く」
3級ダンジョンに単独で挑む者は居ない
それも大手のクランに所属していない探索者が単独でなんてマスコミやクランが食いつかない訳が無い
4級単独も珍しいが居る話でそこまで気にしなくて良かった(4級ダンジョン単独攻略は除く)
取引所の職員が騒ぐのは話題になると対処が物凄く大変で面倒な上、今まで以上の徹底した情報の管理をする必要があるから
「少なくともマスコミにバレたら暫くはそっちの対処もしないとならなくなる。あと大手クランに問い詰められる……俺らが」
「うわぁ、それは嫌ですね」
「ではどうします?」
「本人がどうしたいかによるがとりあえずこっちからは情報が漏れないようにすんぞ。これも立派な機密情報だ」
探索者が何等級ダンジョンに入り今までに何等級ダンジョンを攻略しているかなんて職員がバラしていい情報では無い
下手にバラせば探索者の私生活にも影響が出かねない
「わかりました。慎重に扱います」
……何か問題でも起きたのか?
チラッと受付側に目を向けるが席からは状況は分からず視線を手元に戻す
丁度今メールが来ていた
雫からのメールで明日攻略する予定の5級ダンジョンの場所と集合時間が送られてきた
『5級ダンジョンの場所は……です。現地集合で集合の時間は前回より早めの9時の予定ですが大丈夫ですか?』
5級ダンジョンの場所を調べると予想通り近くにあるダンジョンだった
ここなら楽に迎える距離
……やはりここだったか。それで時間は9時か
9時は寧ろ普段の迅からすれば遅い時間
前回迅が10時という少し遅めの時間を設定したから来れるか心配なのだろう
問題無いとメールに返信をしてメールを閉じた
番号を呼ばれて魔石を換金して得た金を確認する
思っていたよりも貰えた
……流石3級、こんなに貰えるのか
「報酬の額に問題はありますか?」
「いえ、ありません」
「ではこれで手続きは終わりです」
受け取り取引所を出て家に帰る
翌日
迅は9時に間に合うように現地に向かう
すると迅よりも早く既に2人が待機していた
「おはようございます」
「お、おはようございます」
雫は迅に気付くと頭を下げて挨拶をする
遅れて千尋も頭を下げた
服装は一昨日と変わらず迅が貸した指輪を装着している
2人はもういつでも行ける準備を整えている
「おはよう、準備は万端のようだな」
「はい、いつでも行けます」
「ば、万端です」
「予定よりはまだ早いが入るか?」
「そうですね。入りましょう。最深部が何階層か分かりませんし」
「そうか、このダンジョンで判明している情報は何かあるか?」
迅がダンジョンの情報について聞くと雫が答える
「えぇっと調べたところ、道中の魔物がゴブリン型で中ボスがオーク型と言うのが分かっています。中ボスは4階層に居るそうです」
ゴブリン、オーク
緑色で人型に近い見た目をした魔物の名称
ゴブリンは小柄ですばしっこくその上群れの魔物だ
オークは太った巨体で比較的に動きは遅いか一撃が重い
不気味で見た目が嫌いな人が多い魔物
……あぁ、ゴブリンとオークかなら問題ないな。4階層ならこのダンジョンは短いか
どちらも硬い魔物ではないから剣で容易く切れる
3人はダンジョンの中に入っていく