静寂の中、爆音が轟く────
「──ザッ、こちら一分隊は──!繰り返す、一分隊は離脱する──!」
ノイズ混じりの音声が、静寂に吸い込まれる。
彼女は胸元のペンダントを握り息を吐く。
「第二分隊は只今より、他分隊の撤退支援に入る!」
彼女は分隊員にそう告げ、銃を構える。
彼女の放つ弾丸が敵兵を撃ち抜く。
そして彼女は、自ら殿を受け持ち、分隊員を退がらせる。
……Sir、
私、ちゃんと約束、守りますよ……
──スコープディスプレイセンサーがパターン赤を示す。
やがて、ドローンの重なり合う羽音が鼓膜を揺らす。
彼女は遮蔽物へ身を潜め、息を殺し、
そして静かに狙いを定め、絞り込むように、
トリガーを引く──
放たれた弾は敵を貫き、機体は飛散する。
彼女は小さく、息を吐く──
その刹那。
乾いた音が響き。
彼女の胸元がゆっくり
──赤に染まってゆく。
やがて、冷たい雨が降り出す。
微かに震える呼吸──
胸元からペンダントを取り出す。
血濡れた手が、そっとペンダントに触れる。
金属の冷たさに、彼との繋がりを感じる
「借りたペンダント、返せなくなりました……」
──その声は風に消されるほどか細い。
「約束……守れなくて、ごめんなさい……
ずっと一緒に、居たかった……
愛していま……Sir……」
無情に命は流れ落ち…
瞳は光を失ってゆく…
最後まで、彼女の手には…
青く光る、“約束の証” が握られていた──
──数日後
オフィスの扉をノックする音。
兵士から静かに差し出されたのは小さな箱。
彼の視界から、色が消える。
中にはドッグタグと、彼女に持たせた青いペンダント。
硝煙と血の、微かな匂いがする。
「嘘、だろ……?」
床に膝をつき
声にならない嗚咽が込み上げる。
彼女の笑顔も…
頬を染めた言葉達も…
今はもう……
届かない。
胸を引き裂く後悔と、温もりの記憶が、彼の胸を締め付ける。
「僕が、ちゃんと……
止めていれば……
ごめんよ……
ごめん…」
青く光るペンダントだけが、
静かに彼を見守っていた。
儚く切ない愛の記憶────。