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第17話 訓練

ショッピングモールへ戻った俺は、とりあえず千里魔眼を使って町を見渡した。

所々に見たことがないモンスターはいるが、昨日ほどの大群はいなそうだった。


(時々モンスター同士で争ってくれるのは助かるな)


映画館入口へ戻ると、例のごとくハルカが駆け寄ってきた。


「おかえりなさい!何かあったんですか?」


「自衛隊がモンスターと戦っていたから、少しそれの手助けをな」


「そうだったんですか!自衛隊の方々は無事でしたか?」


それを聞いて、ふと頭に変態が思い浮かんだが、振り払う。


「あぁ…うん、何とか間に合ったな」


「そうでしたか! 今日は何かご命令はありますか?」


「命令?そうだなぁ…」


自衛隊の戦い方が頭に浮かんだ。訓練なんか良いかもしれないな。


「ちょっと屋上駐車場で魔法とかの練習でもしてみるか?」


「あ、良いですね!それじゃ皆呼んできます!」


ハルカは勢いよく駆け出していった。

少し経つと、ハルカが眷属たちを連れて戻ってきた。確か近接系が17人で魔法系が10人だったかな。


「それじゃあ行こうか」


屋上駐車場へ向かうと、見張りをしていた眷属3人がこちらに気付いた。


「あれ、ヒロキさん…というか全員?どうしたんですか?」


「軽い訓練をしようかと思ってな。お前達もやるぞ」


「わかりました!」


眷属たちが俺の前に並ぶ。


「まず魔法が使える者たちは、魔力と自分が使える属性の魔法を組み合わせたら、どのような強化ができるのか試してみろ。俺は火魔法だが…」


俺は眷属たちがいない方向に右手から炎を出して、左手から魔力を炎へ放出する。すると炎の勢いが強まった。


「このように炎と魔力を混ざることで炎の勢いが強まる。魔力は思っているより自由で、昨日の戦いでも見ただろうが、こんなこともできる」


右手を空に向けて炎を出して、左手で魔力を放出して炎をコーティングして球体にする。


「こうして魔力に膜の役割をさせて炎を球体にする。そして…」


俺は駐車場の地面に炎の球体を放った。地面に直撃した炎の球体は形が崩れると、一気に燃え広がった。


「これは炎の球体が地面に直撃したことによって、膜の役割をしていた魔力が崩れて炎と混ざった。

そして、先程も見せた通り魔力と合わさった炎は勢いを増し、こうして燃え広がったって訳だな」


「なるほど…魔力に膜の役割を持たせるのはどうやってるんでしょうか」


気弱そうなエルフ、レンが質問してくる。


「フフ…それはな、"俺は〇〇をしたい"と想像しながら魔力を放出することだ。

例えばこの場合は形を保ちたいと考えながら魔力を放出している。正直こうして燃え広がるようになったのは偶然の賜物だ。

元々、ゲームでもよくあるようなファイヤーボールだとかを想像して作ろうとしただけだったからな」


「ハハハ、なるほど」「たしかに自由ですね」


「ああ。だから、こんなことも出来ると思うのだが…」


俺は"攻撃をしたい"と考えながら、魔力を放出して、魔力自体を一箇所に集めていく。そしてそれを落下防止で設置してある低めの壁に放った。


ドォン!


重めの衝撃音が鳴り響いて、壁に少しくぼみができた。


「おぉ!できたな。今のは攻撃をしたいと考えながら魔力を一箇所に集めて放ったんだ」


「はえ〜魔力で…これは鍛錬のしがいがありそうですねぇ」


ハルカは感心した表情を浮かべながらそう言った。


「そうだな。先程も言ったが、まずは自身が使える魔法に魔力を当てたりしてみて、どのような変化が出るのか見てから色々試すのが良いだろう。

試すときは他の人に当たらないように注意しながらやるようにな。それじゃあ、あっちで離れてやってみてくれ」


「「「はい!」」」


魔法が使える眷属たちはウキウキとした表情を浮かべながら少し離れたとこまで小走りで行った。


次は近接組だな。


「さて、次は近接戦闘だな。これは…まぁそうだな、まずはステータスのことについて考えてみようか」


「ステータスですか?」


元獣人のマナミが首を傾げる。


「ああ。まず、攻撃は攻撃の威力が上がる。

防御は受ける攻撃の威力が軽減する。

俊敏は動きが速くなり、その分反応も早くなる。

魔法は魔法の威力が上がる。

簡単に言うとこうだ。ただ疑問が残る、どういう原理で威力が上がったり、軽減したりしてるのだろうかと」


「ギギ?」


確かにそうだな、と言ってそうな感じでカイが顎に手を当てて首を傾げる。


「これはある程度聞いてはいるだろうが、モンスターには銃撃が効きづらい。

なぜ効きづらいのか、寝る前や移動中に考えていたのだが、最近になってようやく1つこれなんじゃないかと結論が出た。

それは、銃弾には魔力が無いからなのではないかと」


「つまり…ステータスは魔力の影響が強いってことですか?」


元ドワーフのカレンがそう問いかけてくる。


「ああ、魔力は身体の内側を巡っている。それはモンスターだって一緒だろう。

攻撃するときや防御するときだって、ある程度はその行動を想像するだろう?

だからステータスは自身が持つ魔力による補正の強度なのではないかと、俺は考えた」


「でもそれじゃあ、魔法が低い私達はあまり強くなれないってことですか?」


「フフフ…さっきも言ったがステータスにある魔法は単に魔法の威力を上げるだけだ、魔力量を上昇させる効果はないから安心しろ。

おそらく、種族差はあるだろうが全人類の魔力量は大差がないだろう、もちろんエルフの"魔力の泉"などのスキルがある場合は別だがな。

それと、今のお前達の種族はなんだ?」


「!! ハーフデーモンです」「そうだった」

「ギギ!」


眷属達が思い出したかのような表情を浮かべる。


「そうだ。俺はスキルの関係上、魔力をかなり使用するが、未だに限界まで使用したことはない。悪魔という種族自体が魔力量が多いのだろう。

そしてそれはハーフデーモンであるお前達も同じだと思う、もちろん俺ほどじゃないだろうがな。

だからまずは魔力を扱う方法を教えよう。それから色々検証するぞ」


「「「はい!!」」」「ギギ!!」



そうして俺は近接組に魔力を扱い方を教えていった。

魔法組は魔法スキルによって魔力の使い方を頭に叩き込まれるが、近接組はそれがない。

扱い方を教える方法は簡単で、俺の魔力を相手に流し込んで、身体中に巡っている魔力を激しく動かして魔力を自覚させるというものだ。

全員それなりに魔力を放出したりして、扱えるようになったところで、また説明しだした。


「それじゃあ色々検証してみようか。ある程度魔法のときと似た感じだとは思うんだが…」


俺は"強力な攻撃をしたい"と考えながら、手に魔力を集中させて、近くにあった放置されている車の扉部分を軽く叩いた。


すると、音を鳴らす感覚で軽く叩いただけだが、車は大きくへこんだ。そして手に集中していた魔力は消えてなくなった。消費したようだ。


「「「おぉ~」」」「ギィ〜」


「やはり魔法と似たような感じだな。"〇〇をしたい"と想像ながら魔力を集中させるんだ。効果が出ると魔力が消費される。

近接戦闘では反射的に魔力を集中させるのが重要になるかもしれないな。

まぁとりあえずは武器とかにも魔力を集中させたりして、自分が何をできるのか色々試してみてくれ」


「「「分かりました!」」」「ギギ!」


そうして俺達の検証が始まった。





しばらく検証して色々分かった。

まず魔法組の結果だ。


土魔法は岩を創る際に魔力を混ぜることで頑丈になり重くなった。


氷魔法は氷塊を創る際に魔力を混ぜることで溶けづらくなり、周囲に放つ冷気が強くなった。


水魔法は水に魔力を混ぜることで水の量が2倍程度増えた。


光魔法は光に魔力を混ぜることで光が強くなり、しばらく消えなくなった。


火魔法は炎に魔力を混ぜることで火力が上昇した。


魔法組はこんな感じだな、魔力を混ぜることでその魔法の特性が強化されたってことだろう。

他にも想像による魔力の強化もあるので要研究だ。


次は近接組だ。

近接組は反射的に使うのが重要になるということで、想像しやすくするために簡単な名称を付けた。


"攻撃強化"

攻撃を実行する体の部位や武器などに魔力集中させて攻撃を強化する。

単純だが非常に強力な攻撃手段となるだろう。


"威力減衰"

物理的な攻撃や魔法を防御する体の部位や盾などに魔力を集中させて、直撃した攻撃の威力を減らす。


"跳躍強化"

脚に魔力を集中させて高く跳ぶことができる。

跳ぶ角度によっては連続で使用して高速移動も可能だろう。


"衝撃強化"

これは攻撃強化とは違って衝撃のみを強化する。

致命的な傷は作れないだろうが、体勢を崩したりするのに使えるだろう。


"飛行強化"

これは翼や羽に魔力を集中させて羽ばたくと、一気に飛び上がることができる。

今のところ俺とカイ専用だな。


"声量強化"

喉に魔力を集中させて非常に大きい声を出せる。

おふざけっぽいが何気に使えそうではある。


とまぁ今のところはこれぐらいだな。これもまた自由度が高い。

基本的に魔力を集中させて効果を発動するというやり方なので練度が必要だ。

これまた要研究である。


とまぁこんな感じだな。皆夢中で訓練している、楽しいのだろう。

俺も始めるとしよう。

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