この度は、数ある物語の中から、この『縁えにしが結むすぶ影かげ』に手を伸ばしてくださり、本当にありがとうございます。

私たちのすぐ隣にあるかもしれない、けれど目には視えない世界の片隅で、

忘れられた想いは「影」となり、人と人との繋がりは、時に儚く、時に強く「縁えにし」を結びます。

この物語は、そんな世界で懸命に生きる少年・悠斗と、過酷な運命を背負う少女・美琴──

ふたりの魂が成長し、いくつもの“想い”と出会い、そして自らの“想い”を紡いでいく軌跡を描いています。

「霊」や「呪い」と聞くと、私たちはつい、身を強張らせてしまうかもしれません。

それは、日常を脅かす「恐怖」の象徴であり、避けるべき「災い」として、古くから語られてきましたから。

けれど、もし、その「影」たちが、ただそこにいるだけの理由があったとしたら？

もし、その「呪い」が、誰かの耐えきれないほどの悲しみや、叫び出すことすらできなかった願いから生まれてしまったのだとしたら──？

本作では、彼らが“なぜ、この世に未練を残し続けているのか”、

“その胸の内に、どんな想いを、どんな涙を隠し持っているのか”──

そして、運命の糸に操られるかのように、“なぜ、彼女は呪われなければならなかったのか”。

その、いくつもの「なぜ」の答えを、主人公たちと一緒に、ゆっくりと、でも確かに探し、辿っていく物語です。

それは、決して怖いだけのものではありません。

ただ、悲しいだけでもありません。

時に、呪いという形をとってしまった想いすら、ただの「悪」として切り捨てられないのかもしれない。

──そんな、人の心の奥底に触れるような、どこまでもやさしくて、胸の奥がきゅっとなるような、すこしだけ切ない物語を、あなたにお届けしたいのです。

この、悠斗と美琴が紡ぐ「縁」と「影」の物語を、

どうか、最後まで、あなたの大切な時間の中で、そっと見届けていただけたなら、

作者として、これ以上の喜びはありません。

もし物語を読んで、何かを感じていただけたなら、どんな些細なことでも構いませんので、ほんの一言でも感想やコメントをいただけると、それが私の何よりの励みとなり、明日への創作の大きな力になります。

応援していただけると、本当に、本当に嬉しいです。

ホラーと銘打ってはいますが、いわゆるショッキングな描写や、ただ怖がらせるだけの展開は極力控え、「怖さの裏にある物語」を大切に描いています。怖いものが本当に苦手、という方にも、ぜひ一度、この世界の優しい恐怖と、切ない真実に触れてみていただけたらと願っています。

それでは、ゆっくりと、物語の扉を開いてみてください。