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第23話 『占い魔術研究部』最高! 俺、一生この部活でがんばっていきます!

「しかしどうするかなあ」


 このまま自然な会話を装いつつ、ストーカー(仮)のほうに動きがあるのを待つ……と言っても、部活の時間に部外者が長いこと邪魔しているのも不自然か。


「まだ視線は感じるか?」


 どれくらいの間、見られているものなんだろう。主に1人の時を狙うはずだから、誰かと一緒なら見られないんだっけか?


「ビンビンっすね」


「ビンビンっすか……」


 5分? 10分? 少なくとも俺たちがここにきて会話をしている最中、ずっと見られているわけか。

んー、俺とアヤ、2人同時にここに来たのはまずかったかもな。覗きをしているストーカー(仮)に俺たちがレナさんに接触したことがバレてしまった。


「レオンを呼んで探らせましょうか?」


「お、ナイスアイディア! いや、やっぱり待て。それだと俺たちだけで解決したことにはならないんじゃ」


 天使族のメンツが云々。


「今そんなことを言っている場合なの?」


「いやだけど……そうだよな。なんかお前……ちょっと見直したわ」


 天使族のメンツってけっこう大事なもののはずなのに、そんなことよりもレナさんの安全のほうが大事だと一瞬で切り捨てられる潔さ。これがレオンさんの言っていた「上に立つ人間の資質」ってやつなのかな。


「……何よ急に?」


「かっこいいなって思っただけだよ。レオンさんに連絡ついたか?」


「かっこいいって何よ……かわいいって言いなさいよ……」


 アヤが消え入りそうな声でそう呟いた。


「ん……なんだって?」


 とっさに聞こえないふり。

 なんで今日はそんなにデレばっかりなんだよ……。これ以上はこっちも受けきれんぞ?


「あ~あ~あ~!」


 レナさんが急に大声を上げて走り出す。


「どうかしたのか⁉」


 ストーカーに動きが⁉


「だから~! そういうのは独り身のいないところでお願いするっすよ~! ちょっと体が熱くなってきたから練習に戻るっす!」


 あっかんベー。

 そんな言い方されると、まるで俺たちが隙あらばいちゃついているカップルみたいじゃないか……。ただのビジネスパートナーだぞ?


「レオンから。異能力アビリティを使って逃げられたそうよ」


「マジか……」


 レオンさんから逃げられる相手ってことか。

 しかしこれでますます警戒されそうだな。


「どんなヤツなのか手掛かりは?」


 首を振るアヤ。


 んー、厳しいな。

 しっかりと作戦を立てなければ……。



* * *


 というわけで作戦はこうだ。


 部活動中は、少なくとも俺かアヤのどちらかが近くに寄り添い、見張り兼ボディーガードをする。

 登下校の時にも周囲を警戒しつつ付き添いをする。平日は絶対に1人にはしない。

 土日はしばらく外出を控えてもらう。

 どうしてもの時は、俺かアヤに連絡しつつ、可能な限り友人に迎えに来てもらうなど1人になる時間を作らない。


 ストーカーの視線を感じた時のサインは、「今日はパフェが食べたい気分っす」と叫ぶ。または声が出せない時などは、「キツネ」のハンドサインを作って、頭の上に掲げるということになった。


 俺たちはおとり役ということで、犯人の捕縛はレオンさんが担当することになった。

 相手がかなり強力な異能力アビリティを有していそうだということから、異能力アビリティを持たない無能力者アンチの俺では太刀打ちできないだろうという見立てからそうなっている。アヤが捕縛担当にならないのは……犯人が消し炭になってしまったら困る、という理由からだ。脳筋おつ。



 そして3日が過ぎ、今日は金曜日。

 平日の見張りもこれで終わりか。


 ちなみに今のところ成果はなし。

 やはり部活動中は視線を感じるらしく、助走前の「キツネ」のハンドサインがトレードマーク化してしまっている。

 レオンさんが近づくと、すぐに逃げられてしまうので、いまだ犯人の顔どころか種族や性別の絞り込みすらできていない状態だ。

 しかし、幸か不幸か、登下校時にはホシは現れていないし、レナさんに直接的な被害は出ていない。



「カケル……顔がニヤついていて気持ち悪いわ」


「えっ……」


 気持ち悪いって言われた……。

 ショック。

 でもそりゃあさ、ニヤニヤもするだろ? 合法的に女子の連絡先を手に入れてしまったんだからな!『占い魔術研究部』最高! 俺、一生この部活でがんばっていきます!


「やっぱりその連絡先消して!」


 アヤが俺のスマホを奪い取ろうとしてくる。


「おいっ、やめろって! これは仕事なんだから仕方ないだろ!」


 アヤは連絡先を教えてくれないし、ミウ以外では初めて手に入れた女子の連絡先なんだぞ! 絶対消されてなるものかっ!


「キモッ。カケルがストーカーなの?」


「違うわいっ! なんてこと言うんだよ!」


「言い訳は署で聞かせてもらうわ。消えなさい、ストーカーさん」


 おいおいおいおいおいおい!

 異能力アビリティ発動すんなって!

 そんな炎の球を食らったら、署とやらに行く前に消し炭になるだろ!


「相変わらずアツアツっすね……。もういい加減慣れたっすけど……正直うらやましいっす。レナも彼氏ほしいっす。はぁ~あっす!」


 これ見よがしに、クソデカため息。

 だから俺たちは付き合っているわけでは……と何度目かの否定をしようと――アヤのその顔、なんとかならないっすか? 毎回そうやって顔を赤くするから、レナさんにからかわれているってことに気づいていないんすか?


「今日はホントにパフェが食べたい気分っす……。駅前のカフェで、超ジャンボチョコパフェをおごってくれたりはしないっすかね~? どこかにやさしい彼氏さんはいませんかね~?」


 なぜ俺を見る。


「私も一緒に行くから」


 腕を絡めてくるなって。

 だからレナさんにからかわれているだけだって気づけよ……。


 とは、口が裂けても言わない。

 だって、レナさんのおかげで……あざーっす!

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