「はじ……!?」
審判がはじめの合図を途中でやめました。
「ふふふっ、マーシーが言うように、おらは数あわせズラ。負けを認めるズラ」
ズラーが手を上げて審判に笑いながら言いました。
「ぎゃはははははーーーーーー!!!!」
「引こめーー!!!!」
「この見かけ倒しーー!!!! ぎゃはははーー!!」
観客から馬鹿にした笑いや罵声が響きます。
ズラーは舞台から、うなだれて降りてきました。
役者ですね。本当はデェスちゃんより強いのに。
でも、心中は穏やかでは無いでしょう。
何しろ戦闘民族ですからね。戦わずに負けを認めるなど、なかなか出来る事ではありません。
でも、なんでその必要があるのでしょうか?
「うおおぉぉーーとっ!!!! これは私が予言した通りの展開となりました。なんとズラー選手は見た目だけの張りぼてです。実力はデェスちゃんより下でしたーー!! ここで私はもう一度予言します。いいえ、断言します。ダニー選手も見た目だけの数あわせです。デェスちゃんより強い選手などガンネスチームはいないと断言いたします。これはもうファルコンチームの優勝、コング選手の全勝優勝でしょう」
もう、マーシーが絶好調です。
少しうるさいですね。
「うおおおおおおおおおぉぉぉーーーーーーーーっ!!!!! ファルコーーーン!! コングーー!!!!」
すでに、勝ちを確信したのか、観客席から歓声があがります。
ファルコンチームに賭けていた人達が大喜びのようです。
「おおーーとっ!! ここで審判が、ズラー選手の後ろに付いてガンネスチームのベンチにむかいます。恐らく戦う意思があるのか確認するのでしょう。しばらく時間がかかりそうです。待ち時間は、そう、これまでの試合の見せ場を集めた総集編をお送りしましょう。最後は当然我らがアイドル、デェスちゃんのポロリがありますよ! ご期待ください!!」
「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!!!!」
全く男って馬鹿ですね。
デェスちゃんのポロリは虚像、幻影です。
巨大スクリーンに無駄にお金をかけた超高速高解像度カメラで撮影された、デェスちゃんのくい込むビキニアーマーをお尻の下からエッチに写した映像が流れ出しました。
いつ撮ったの??
「あの、ダニー選手、あなたも負けを認めますか?」
審判がガンネスチームのベンチまで来るとダニーに聞きました。
「くっくっくっ……」
ダニーは顔に影を落とし、不気味に笑います。
「まさか、試合をするのですか?」
ダニーの余裕のある姿を見て審判は戦う気があると思ったようです。
「うわあああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっっ!!!!!!」
デェスちゃんの大きな胸が、巨大スクリーン一杯、大アップでメッチャメッチャ揺れています。
ポロリへの期待からでしょうか? 観客達が大歓声をあげました。
てっ、いうか。さっきからデェスちゃんしか、スクリーンに映っていません。
マーシーはドスケベですね。
「いや、やめておくダニ。どうせ、おらもマーシーが言ったとおり数あわせダニ」
その言葉を聞くと、審判はダニーを指さして、その後胸の前で手をクロスして、マーシーに向けました。
「おおーーとっ!! ダニー選手が負けを認めましたーー!! やはり私が言った通りになりましたーー!!」
「ふざけるなーー!!!!」
「ぶち殺すぞーー!!!!」
「だれか、マーシーの頭をライフルで狙撃しろーー!!!!」
観客席からブーイングです。
それも、そのはずです。
巨大スクリーンの映像が、コングとの対戦になりあと少しでポロリだったのに、急にマーシーの顔のドアップに切り替わったからです。
「おおーーと!! こ、これは、恐ろしい。殺されるといけませんので、再びデェスちゃんの美しいビキニの様子を映しましょう」
もはや、観客の興味は勝負の行方より、デェスちゃんのポロリに移ってしまったようです。
「それでは、この試合はファルコンチームの勝利でよろしいですね」
審判がガンネスチームのベンチのデェスちゃんを見て言いました。
きっと、デェスちゃんをこのチームのリーダーとでも思ったのでしょうね。
「えっ、なんで? 僕は出るよ」
当然ですよね。マモリ様が驚いた様子で言いました。
「えっ??????」
審判はマモリ様の顔を見てびっくりしています。
そして、その姿を頭の天辺からつま先までゆっくり見ました。
見終わると、頬が赤くなります。
「じゃあ、皆、僕は行ってくるよ」
「はっ! 相手は弱すぎます。決して本気を出されませぬよう、お気をつけてくださいダニ」
「まさか! まだまだ実力を出し切っていないかもしれません! 油断はいけませんよ」
さすがです、マモリ様に油断はありません。
「あのー……コ、コング選手が弱い?? 本気で言っているのですか?」
でしょうね審判の疑問は良くわかりますが、この人達は本気で言っています。
審判は質問しながらも、マモリ様を指さして、その後、マーシーに向って手をあげて輪を作りました。
巨大スクリーンの映像は、今丁度、肩ひもが切れてピンクが見えそうになったところです。
「おおーーとっ!! ガンネスチーム、大将は試合をするようです」
巨大スクリーンの映像が、マーシーの顔のドアップになりました。
「ばっっきゃーろーー!!!!」
「てめーー!! ぜってーぶっ殺す!!」
「生きて家に帰れると思うなーっ!!!!」
「あと少しだったのにーー!!」
「てめー、わざとだろー!!」
「わざとやったなーー!!」
「ギャグのつもりかーー!!」
「面白くねーーんだよ!! ぶっころすぅぅぅーー!!!!」
ブーイングが物騒です。
まあ、この世で一番恐い人ばかりの集まりですからね。
「ひぃぃぃーー!! カメラー! カメラーー!! 姫神守護ちゃんを撮れー!! そしてスクリーン、カメラの映像をーー映せーー!!」
「何を言ってやーがる!!」
「そんなことでだまされるかーー!!」
「そうだそうだ!! だまされるかーー!!」
「だま……、……」
「……、……、……」
「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!!!!」
巨大スクリーンの映像が切り替わり、マモリ様の姿を写します。
観客席から大歓声があがりました。
「天使かーー!!」
「デェスちゃんよりはるかに可愛いぞーー!!!!」
「なんちゅー可愛さだーー!!」
「可愛すぎるぅーーーー!!!!」
どうやら、マモリ様の可愛さで観客全員が、まいってしまったようですね。
でも、その子、自分で男の中の男を自称する、正真正銘の男ですからー。
ユウキに騙されて「女装は男にしか出来ません。男の中の男だからこそ出来るのが女装なのです」と騙されて女装をしている。可哀想な男の中の男なのです。
「おいおい、おめーさんが俺の相手だと? 本気で言っているのか?」
コングが少しブスッとした表情で、マモリ様を見おろして言いました。
「はい。宜しくお願いします」
マモリ様は深々とお辞儀をしました。
ふふっ、可愛い以外のなにものでもありません。