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0084 デェスの命乞い

デェスと団長は集団から抜けると、じらすようにゆっくり歩き、間合いを詰めていきます。

侵略軍もガンネスファミリーも、固唾を飲んで静かに見守ります。


「ぬおおぉぉぉぉーーーーー!!!!」


「おおーーとっ!! 侵略軍の団長が気合いと共に体をねじり、力を貯めたーー!! デェスちゃんは、動きを止めると美しい微笑をその顔に浮かばせて自然体だーー。いつでもうってこいと余裕のかまえだーー!!」


マーシーが静寂を破って吠えました。

デェスは、既に勝ちを確信していますね。

悪い癖です。相手の力量が分からないときは、慎重に行かないと。

ドンという音と共に地響きがしました。

団長が一歩足を踏み出すと、道路が足の形に少しへこみました。


「うおおおおおおおおおぉぉぉぉーーーーーーーーっと!!!!! これは、すごい攻撃だーー!! うなりを上げてデェスちゃんを襲います!!」


パンと破裂音のような乾いた音が響き渡ります。

団長の拳を、デェスが両手の平を前に出し、踏ん張りながら受けました。

デェスの顔から微笑が消えて驚きの表情になっています。

デエスの踏ん張る後ろの足が、道路を削ります。


「おおーーとっ!! 台風の様な風が巻き起こります。これは、現実なのでしょうかーー! それとも幻覚なのでしょうかー!! かつて多くの戦いを見てきた私ですが、パンチでこのような風が起るのを見た事がありません。まるで幻覚を見ているようです。この光景をすごいと思った方は、マーシーの幻覚チャンネル、いいねとチャンネル登録をよろしくお願いします。そして、巻き起こった風が下から上に吹き上がります。デェスちゃんのパンツが丸出しです。そう言えば、二人の超絶美少女もスカートです」


マーシーが、僕とユウキの方を映そうとしました。


「マーシーさん、僕とユウキの姿を映すのだけは、許されない絶対禁止行為ですよ」


僕は、普通の調子で笑顔をうかべて言いました。

それに、僕とユウキのスカートは、風ごときでは微動だにしません。

ユウキのパンツも僕がマモリます。


「バカヤロー!!!! マーシー!! 殺されてーのか!! マモリ様の姿を全世界に配信なんかして見ろ、てめーの人生は今日でおしめーだ!!」


ガンネスが僕の方をむこうとしているマーシーさんに言いました。


「ひっ!」


マーシーさんは小さく悲鳴をあげました。

カメラをデェスと団長の方に戻しながら、自分の顔だけはガンネスと僕の方を交互に見ています。


「ぉぉっと! マモリ様の顔はとても可愛い笑顔ですが、それが余計に凍えるような恐ろしさだーー!! これはまるで、一人南極観測隊だーー!!」


「ふふふ、俺の攻撃をよけねーで受けるとは恐れ入ったぜ。だが、これは小手調べだ! あんたは本気を出すにふさわしいと認めよう!! いくぞ!!」


団長が、再び攻撃をしようと構えます。


「ちょ、ちょっと待って欲しいデェス」


それを見て、両手を前に出してデェスが止めました。


「なにっ!! この期に及んで命乞いかーー!!」


「そ、そうデェーース。マモリさまぁーー」


デェスが情けない顔で僕を見ました。


「ふふ、大丈夫です。死なせません! 思う存分やって下さい」


もし、死にそうになっても、僕が治癒をする事を伝えました。


「マモリっていうのかあいつ、綺麗な顔をしているなあ。おめーのご主人様かなにかか? しょうがねー、おめーを殺したらかわいがってやるか」


団長は僕を見てニタニタ笑いました。

全身に鳥肌が立ちます。

デェスの顔に殺気のようなものが浮かび上がります。


「さっさとかかってくるデェス」


「なにっ!! てめー!! ぶっ殺してやる!」


「おおーーとっ!! 団長の攻撃がはじまったーー!! さっきとは打って変わって素早い攻撃だーー。だが、デェスちゃんもさっきとは打って変わってその攻撃をかわしていく。しかし、デェスちゃんの表情には余裕があまりなさそうだ。真剣な表情でかわしています!! こ、これはいけません。私の目では追うことが出来なくなってきましたー!!」


デェスと団長の動きは、どんどん加速します。


「もう、無理デェース!!」


ゴッという短い音がしました。


「うおおおーーとっ!! こっ、これは、あっけない幕切れだーー!! 横たわる体の頭の所から大量に血が流れ出しまぁーーす。良く見ると頭が変形していまぁーーす。たいへんなことになりましたーー!!」


「わあああぁぁぁーーーーーーーーっ!!!!!」


歓声が起ります。


「やっ、やってしまったデェーース!! まあまあ強いし怒らせるから手加減を間違えたデェス。だから命乞いしてあげたデェース! マモリさまー!!」


デェスが目に涙を浮かべて、悲しそうな表情で僕の方に走ってきます。


「うふふ、デェス。団長はそのままでいいですよ。ガンネス! みんなはチンコ玉を持っていますか?」


「へい!」


「では、ガンネスファミリーに愚かにも戦いを挑んだ、侵略者共をかわいがってあげて下さい」


団長の強さは、デェスに本気を出させるほどには強かったようですね。


「ふふぁはははー! 聞いたかヤローども、我らが守護神様のお許しがでたぞーー!! 思う存分暴れてこいっ!!」


「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーー!!!!!」


ガンネスファミリーから元気のいい雄叫びが上がります。

ガンネスファミリーは、あっという間に侵略軍を立てなくなるほど痛めつけました。


「マーシーさん、ここから先は配信禁止です」


あっけにとられて、口をポカンとあけたまま時間が止まっているマーシーさんに、僕は言いました。

マーシーさんはしきりにうなずき、配信を終わってくれたようです。


「おい!! マーシー!! 少しでもここからの事がネットで流れたら、ガンネスファミリーがてめーをぜってー許さんからな! 憶えておけ!!」


マーシーさんは首が千切れそうなほどうなずいています。

これなら、大丈夫でしょう。

僕は、侵略者達を全員地獄送りにしました。


「ガンネス! 都内の拠点は捨てましょう。幸魂市にもどって、侵略者と対峙しましょう」


「へい!!」


「あ、あのーー……マモリ様」


「はい、なんですか? マーシーさん」


モジモジしているマーシーさんに、僕は優しく返事をしました。


「私も、ガンネスファミリーに同行してもよろしいですか」


「ふふふ、でも、ガンネスファミリーでは、薬は扱っていませんよ」


「くふっ、私は歳をとって、薬を必要としなくなりました。もうずっとやっていません。ギャグで言っているだけです」


「そうですか。島津ヒサシさん、マーシーさんの面倒を見てもらってもよろしいですか?」


「お任せください。渡世人の作法をきっちりたたき込んでやりますよ」


「ふふ、御願いします。デェス、ユウキ、学園にもどりましょうか」


「はい」


再び僕達は、学園に戻りました。

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